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パウチの砦

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第五章

「人に憑いて裸にさせて躍らせたりするのよ」
「それは悪い奴等ね」
「服を作ることは得意でもね」
「そうした悪いことをするのね」
「だからコロボックル達とも」
「仲が悪くて」
「それでね」
 そのせいでというのだ。
「どうやらね」
「ああして戦争もしてるのね」
「そうみたいよ、それであの辺りはね」
 理恵は奈津美にさらに話した。
「層雲峡のね」
「変わった形の岩が一杯あるところは」
「昔からそのパウチの砦だってね」
「言われているの」
「そう、だからね」
「あそこにパウチがいたので」
「それで戦っていたのよ」
 コロボックルの軍勢と、というのだ。
「そうしていたのよ」
「成程ね」
「いや、私も知らなかったわ」
「北海道の小人ってコロボックルだけじゃなかったのね」
「そのパウチもいて」
 それでというのだ。
「そのパウチが悪い小人とか」
「知らなかったのね」
「北海道、アイヌのお話も色々あるわね」
「そのコロボックルとかヒグマとかね」
「そうしたお話が知られているけれど」
「それだけじゃないのね」
「そうね、私も北海道生まれだったけれど詳しくなかったし」
 理恵はこのことを今痛感していた、それで言うのだった。
「あらためてね」
「勉強しなおすっていうのね」
「そうするわ」
「そう言われたら私も」
 奈津美は理恵のその言葉を聞いて話した。
「山梨生まれで高校卒業までそっちだったけれど」
「山梨のことをっていうのね」
「あまり知らないかもだからだ」
 それでというのだ。
「山梨のこと学びなおすわ」
「そうするのね」
「山梨って葡萄に金山に」
 ここでこの人の名前が出た。
「武田信玄さん」
「山梨ってその人よね」
「絶対に出て来るけれど」
 山梨といえばというのだ。
「一度ね」
「学びなおすのね」
「そうするわ」
「じゃあお互いにね」
「故郷のことをね」
「学んでいきましょう」
 こうしたことを話してだ、そしてだった。
 二人は北海道のことを話していった、それは二人にとっては実に新鮮なものであった。アイヌの様々な伝承のことは。知っている様で全く知らなかったことであったからこそ。


パウチの砦   完


              2019・10・13 
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