提督はBarにいる。
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艦娘とスイーツと提督と・EX5
~赤城:???~
「提督、オヤツの語源を知っていますか?」
「何だ赤城?藪から棒に」
「ですから、オヤツの語源ですよ。知ってますか?」
「あれだろ?江戸時代は朝晩の一日二食だった。それで八つ刻……今の午後2~4時の間に仕事の合間を縫って間食をしたって奴」
八つ刻に接頭語の『お』を付けて呼ぶようになったからおやつ……だったか?確か。
「流石は提督。博識ですね」
「そうでもねぇさ」
「ところで提督、江戸時代のおやつ時にはお餅や団子の様な和菓子だけでなく軽食も食べたそうですよ?」
「そうなのか?」
「えぇ、そうみたいです」
「成る程……だから俺達は今小麦粉を捏ね繰り回してんのか」
本日のチケット当選者は、赤城。リクエストは『うどん』だった。しかも自分で手打ちをしてみたいとの事で、オフの日に朝からわざわざ2人で小麦粉を捏ねていた。
「しかし……自分で作ってみたいとは拘ってるな」
「私、うどん好きなんですよ。だから、自分で作れたら良いなぁと思いまして」
「ふ~ん……そうか」
赤城のそういう話、そういえば初めて聞いたかも知れん。他の鎮守府の赤城に比べて、ウチのはあんまり食べ物への執着が無いからなぁ。とりあえず、手打ちうどんのレシピ及び打ち方をメモに纏めておいて欲しいとの事だったのでここに記しておく。
《家でも出来る!足踏みうどん》※分量:作りやすい量
〈材料〉
・薄力粉:300g※中力粉、薄力粉と強力粉を半々で混ぜた物でもOK!
・水:135~145cc
・塩:15g程(大さじ1杯弱)
・打ち粉(片栗粉か薄力粉):適量
〈道具〉
・ボウル
・ザル
・まな板
・麺棒
・ビニール袋
・大きめの鍋
(作り方)
1.混ぜる
ボウルに小麦粉をふるい入れて山の形に調えたら、てっぺんに指で窪みを作る。予め塩を溶かしておいた塩水を窪みに少しずつ加えていく。かき混ぜながら何回かに分けて水を加え、粉と水が満遍なく混ざるようにする。粉っぽさが無くなってそぼろ状になってくればOKだ。
「塩水は冷たい方が良いんですか?」
「気温が高い時期はそうだな。冬場は30℃位のぬるま湯までなら大丈夫だ」
2.生地を寝かせる(1回目)
粉がそぼろ状に纏まって来たら、ギュッと握って塊を作っていく。全体がある程度纏まったらジップロック等に入れ、30分程寝かせる。こうする事で、粉と水が馴染んで生地に粘りが出る。
「捏ねないんですか?」
「あぁ。手ではな」
3.足踏み
床に新聞紙等を敷き、そこにうどん生地の入ったビニール袋を置く。その上に布やゴザを被せ、それを足で踏んで延ばしていく。
「ふ、踏むんですか?本当に?」
「ビニール袋の上からだから大丈夫だ、安心しろ。別に足が汚いとかではないだろ?」
「そ、それはそうですが……」
「それにな、手で捏ねるよりも足で踏んだ方がコシが出る。実際、手打ちに拘ってる讃岐うどんの名店なんかだと未だに店主が足踏みでやってる所もあるぞ」
「で、では……えいっ!」
赤城が恐る恐る、うどん生地の上に乗り、少しずつ、リズム良く足踏みしていく。コツとしては踵を生地の中心に置くようにして、少しずつ回りながら全体に体重を掛けるように踏んでいく。50回も足踏みすれば生地はペチャンコになる。そうしたら袋の中でまた団子にして、再び足踏み。これを3~4回繰り返す。
「案外楽しいですねコレ♪」
「だろ?」
「でも、こんなちょっとの時間でいいんですか?」
時間にして5分程度。踏めば踏むほど美味しくなりそうなイメージがあるが、それは間違い。踏みすぎると今度はコシが強いを通り越して硬くなってしまう。踏む人の体重にも影響されるが、生地がペチャンコになったら一旦止めて折って再開というのを守っていればあんまり失敗しないぞ。足で踏むのに抵抗があるなら、まな板に打ち粉を振って捏ねてもいいしな。
4.生地を寝かせる(2回目)
足踏みが終わったら生地を団子状に整え、乾燥しないようにビニール袋を被せて寝かせる。寝かせる時間は気温によって変化するが、俺は夏場は1時間、冬場は2時間、春と秋は1時間半を目安にしている。休ませている間は赤城との会話を楽しむとしよう。
「しかし知らんかったな。赤城がうどん好きだなんて」
「あら、私がうどん好きになったの提督のせいなんですよ?」
「……は?俺のせい?」
「覚えてらっしゃらないんですね、あれはーー……」
~これより赤城の回想~
あれは、そう。沖ノ島攻略戦で加賀さんが轟沈して1週間程経った頃だったでしょうか?当時の私はロクに休息も摂らず、出撃と補給を繰り返す毎日でした。
「ダ、ダメですよ赤城さん!寝不足やら疲労やらでフラフラじゃないですか!」
私を引き留めようと明石さんが掴み掛かって来ます。
「いえ、大丈夫です。何としても加賀さんの仇を討たなくては……例え刺し違えてでも」
「とにかく!整備担当としてもメディカルスタッフとしても出撃は許可できません!補給もしませんからね!」
補給が出来ないのでは仕方ありません、今晩だけは休むとしましょう。とりあえず汗を流そうと、風呂に向かう道中に急な立ち眩みに襲われました。思えば、この一週間は寝ようとしても寝付けず、食事も喉を通らなかったので栄養ドリンクやカロリーバーのような必要最低限の物で済ませていました。そこで、廊下の窓ガラスに映る自分の顔を見て愕然としました。頬が痩けて、目の下には濃い隈が出来て、今にも死にそうな病人の様な顔。自分でもこれはいけないと思い、先に食事をしようとふらつきながら食堂へ向かいました。
「あら赤城さん、お疲れ様です」
食堂では、いつもの様に間宮さんが笑顔で迎えてくれました。
「あの……お食事、出来ますか?」
出そうとしているのに、出てくるのはか細い声。随分と弱っていたんだなと自覚した途端、お腹がギュルギュルと鳴りました。
「ちょっと待っててくださいね、今すぐ準備しますから♪」
そうして出てきたのは、1杯のうどん。具材もかまぼこにネギ、油揚げ、鶏肉に生卵と少し豪勢でした。まずは出汁を一口啜ると、いつものうどんのつゆとは味が違いました。間宮さんのうどんつゆは鰹節がベースですが、このつゆは煮干しの味がします。でも力強くて優しいその味は、私の中に染み渡っていくようでした。そこからはもう無我夢中で、一気に中身を平らげておつゆまで全て飲み干してしまいました。そして丼の下に、メモが挟まっていたのに気付きました。そこには、
『加賀の後を追う気か?アイツはそんな事を望んでねぇぞ』
と、少し乱暴な文字で書かれていました。その瞬間、私の目からは涙が溢れてきました。このうどんを誰が作ったのか、このメモを書いたのが誰なのか。そしてその人は、私以上に苦しんでいたのに。あぁ、私はどれ程馬鹿な真似をしていたのか……この1杯のうどんで、私は頭を殴られた様な衝撃を受けました。
「……間宮さん、お代わり貰えますか」
「大丈夫ですよ、沢山召し上がって下さい」
そうして私はしっかりと休息を取り、体調も戻った数日後に見事沖ノ島攻略を果たしました。
「……とまぁ、こんな事があったんですよ提督」
「ふ~ん、優しい奴もいたもんだ」
「ふふ、そうですね。最高の司令官だと私も思ってますよ?」
そう言いながらニヤニヤしつつこっちを見てくる赤城。別に俺が作ったと断定されてる訳じゃねぇのに……おかしいなぁ(すっとぼけ)?さて、冗談はさておきうどんの調理に戻るか。
5.生地を延ばす
寝かせた生地をまた足踏みして、2cm位の厚さになるまで踏む。生地の上下と生地を延ばす台の上に打ち粉を振り、生地の中央に麺棒を載せる。真ん中から奥に向かって生地を延ばし、180度回して反対側も延ばす。90度回して延ばし、また180度回して延ばして四つ角を作る。麺棒に生地を巻き付け、麺棒ごと押して引くを繰り返す。
「この時の力加減はどうすれば?」
「押す時は力を入れて、引く時は抜くようにするといいぞ」
ある程度延ばしたら180度生地を回し、全体的に生地を延ばしていく。最終的に3mm位の厚さになるまで延ばす。
6.折り畳んで切る
打ち台に打ち粉を振り、延ばした生地を幅10cm位になるように屏風折りにし、3mm幅で切っていく。
「コツは良く研いだ包丁を使う事。そうしないと生地がボロボロになって茹でた時にちぎれたりするからな」
7.茹でる
大きめの鍋にたっぷりのお湯を沸かし、切ったうどんをほぐしながら投入。茹で時間は8~13分。生地の状態によって変わるので、味見をしながら茹でよう。芯が無くなればOK。
「大きめの鍋って、どのくらいの鍋です?」
「生地の重さの15倍位の水が必要だって言われてるな。だからその辺を計算して鍋の大きさを決める」
8.洗う
茹で上がったうどんをザルにあげて、滑りを取りつつ流水で洗ってしめれば完成だ。
「釜揚げの場合は洗わなくても良いけどな」
さて、うどんは完成したので早速食べよう。今日は少し暑いので、ぶっかけにしてみた。うどんを丼に入れて、大根おろし、鰹節、揚げ玉、おろし生姜、ネギ、すだちを添えたら冷やしておいたつゆをたっぷりとかける。
「「いただきます」」
すだちを搾り、ズルズルと啜る。うん、娘のさっぱり感がいいね。
「どうだ赤城、美味いか?」
「はい、とっても。ただ……」
「ただ?」
「……つゆが、少ししょっぱいです」
そう言いながら赤城は、涙を流しながらうどんを啜っていた。
後書き
はぁ、漸く折り返しです。全く、人数倍にするとか誰が言い出したんだバカ野郎!←
まぁ、なるべく早く次をお届けできるように頑張りますm(_ _)m
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