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魔法少女リリカルなのはANSUR~CrossfirE~

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Ep??未来へ繋がる危機~Unknown~

 
前書き
先に出来上がっている次章のプロローグを、Ep2へと回しました。
話数の??は、前話と今話の間に“なのは撃墜事件”を投入するからです。
何話かかるか判らないので、??にしています。
次作の完結編を優先するため、新規投稿はいったん中断します。 

 
†††Sideなのは†††

私とシャルちゃんとフェイトちゃんとはやてちゃんの4人は今、ある世界での任務に赴いています。

『じゃ改めて今日の任務の説明ね。その世界・第162観測指定世界にある遺跡発掘先を2つ回って、発見されたロストロギアを確保するのが今回、みんなに任された仕事ね。最寄の基地で詳しい場所を聴いて、ロストロギアを受け取ってアースラへ帰艦、本局まで護送!』

アースラのエイミィさんから今日の任務の説明を聞いた私は「平和な任務ですねぇ」って素直に思ったことを口にした。

『あはは、でもモノがロストロギアだから油断は禁物だよ~!』

『そういうことだ。平和だからと言って油断はするなよ、なのは。フェイト達も十分に気を付けてくれ。頼んだぞ』

「「「「了解!」」」」

クロノ君とエイミィさんに窘められて反省。そうだよね。油断がもっとも危ないことは私がよく知っている。

「それにしても、ホンマに良かったんシャルちゃん? せっかくの休日やのに、私らの任務に付き合ってもらって・・・」

「全然オーケー♪ アースラで待ってるのも退屈だし、久々にみんなと飛べるんだから最高の休日の過ごし方だよ!」

はやてちゃんにそう尋ねられたシャルちゃんがニコニコ笑顔で答える。シャルちゃんの所属はミッドチルダの地上部隊だ。だから私たちと同じ任務に就くことはほとんどない。今回の任務も、本当はシャルちゃんが参加する必要はないんだけど、シャルちゃんがそれで良いって言うならその厚意に甘えることにしよう。私としても一緒に飛べて気分は最高潮だしね。

「にしても、こうしてシャルと一緒に飛ぶのって結構久しぶりだよね」

「ん? あぁそうかも。もう2年くらい一緒じゃないよね確か」

「もうそんなになるんか?」

「みんな見事に所属している部署がバラバラだもんね。シャルちゃんとは本当に久しぶりだよ。でもルシル君とはたまに飛ぶよ」

空戦最速にして最強って噂のルシル君。一緒の任務に就くと、その噂の真相が良く解かったりする。本当に強いんだよね、ルシル君。私はもう足元にも及ばないかも。私たちはそんな近況報告をしながら飛んで、目的の定置観測基地へと到着。早速基地へと入ると・・・

「遠路お疲れ様です! 本局管理補佐官、グリフィス・ロウランです!」
 
「シャリオ・フィニーノ通信士です!」

グリフィス補佐官とシャリオ通信士の2人がお出迎え。2人ともまだあどけなさが残る子たちだ。なんか初々しくて可愛いかも。

「ご休憩の準備をしてありますので、こちらへどうぞ」

グリフィス補佐官が基地内へ案内しようとしてくれたけど、「あ、平気だよ。すぐに出るから」と断る。気遣いには感謝だけど、私たちならこの程度の飛行はなんでもない。

「私らこれくらいの飛行じゃ疲れたりせえへんよ。グリフィス君は知ってるやろ?」

(ん? 何でグリフィス君は知ってるの?)

フェイトちゃんも、私と同じような不思議そうな顔をしている。シャルちゃんが首を傾げながら「もしかして、君ってレティ提督の・・・ご子息?」そう質問する。そういえばさっき、グリフィス・ロウラン、って自己紹介してくれた。

「あ、はい、そうです。フライハイト一尉」

「「あーっ! 似てる!」」

フェイトちゃんと声が重なる。よく見ると、本当にレティ提督とそっくりだ。気付かなかったことにビックリだよ。

「はじめまして! 高町なのは二尉、フェイト・テスタロッサ・ハラオウン執務官! 母からみなさんのお話しをよく聴いています! お会い出来て光栄です!」

「フィニーノ通信士とは初めてだよね・・・?」

「はい! でも私、みなさんのことはよ~く知ってます! 本局次元航行部隊のエリート魔導師、フェイト・テスタロッサ・ハラオウン執務官! いくつもの事件を解決に導いた地上部隊の切り札、八神はやて特別捜査官! 陸上警備隊において最強と名高い陸戦魔導師にして騎士、シャルロッテ・フライハイト一等陸尉! 武装隊のトップ、航空戦技教導隊所属の不屈のエース、高町なのは二等空尉!」

私たちってそんな風に言われてるんだ。エースだとかエリートだとか、全然知らなかったな~。というか、シャリオ通信士のテンションがすごく高くて、どう応じて良いのか判らなくてちょっと困るかな。

「陸海空の若手トップエースの皆さんとお会い出来るなんて光栄です~~~!」

「あはは・・・。ありがとう・・・」

「リインフォースさんのことも聞いてますよー。とっても優秀なデバイスだって」

「ありがとうございますぅ♪」

リインフォースさんの後継機として生まれたユニゾンデバイスのリインフォースⅡ。リインフォースさんに次ぐはやてちゃんの大事なパートナーだ。私たちは“リイン”という愛称で呼んでる。

「はやてちゃん、褒められました♪」

「そうやな、私も鼻が高いわ♪」

シャリオ通信士に優秀だと褒められてリインと、その生みの親のはやてちゃんはすごく嬉しそう。
それから少しばかり幼馴染の話とかして、私たちは観測基地から飛び立った。

†††Sideなのは⇒ルシリオン†††

『ユーノ、ルシル。そちらのデータはどうだ?』

アースラのクロノから俺とユーノへ通信が入った。俺たちが無限書庫にて調査しているのは“レリック”と名づけられた秘匿級のロストロギアだ。

「もう解析を進めてる。なのは達が戻る頃には資料が出揃うよ。でもやっぱりルシルが居るか居ないかで結構変わってくるよ。すぐに欲しい情報が集まってくれる」

『そうなのか? ユーノだけで十分な気がするが。なぁルシル?』

「んん? あぁそうだな。ユーノは優秀過ぎるからな。俺はあまり必要ないかもしれない」

好き勝手言ってくれるクロノだが、ユーノが優秀なのは確かだ。俺が居なくても大した問題はないというのも事実だ。司書という資格を有してはいるが、本来の所属は本局航空武装隊遊撃班。都合よくレンタル出来る単なる遊撃戦力で、まぁそれなりに重宝されている。基本は武装隊の仕事で時間を取られ、司書としての仕事はあまり出来ていない所為で、ユーノの調査スピードにはまったく敵わない。

「はは、そんなことはないよ。ルシルの知識にはいつも助けられてる」

「そう言ってもらえると嬉しいよ、ユーノ」

持つべきものはやはり男友達だ。女友達は付き合いが大変だ。これまでの契約で出会って来た少女たちとの思い出を振り返り少しうんざりしていると、「はいよ。ルシル、ユーノ」とアルフが俺たちの元へと何冊もの書物を抱えて運んできた。

「ありがとう、アルフ」

「それにしても・・・その子供姿が完全に定着してしまったな」

アルフが胸いっぱいに抱えている書物を受け取って、小さな子供の姿になっている彼女の頭を撫でる。

「まあね。フェイトの魔力を食わない状態を追求していったらこーなっちゃってな。あたしはフェイトを守る使い魔だけど、フェイトはもう十分強くなっちゃったし。それにもう独りじゃないしさ。ずっと側に居て守るばっかりがただ1つの守り方じゃないからな」

初めて会った頃に比べて本当に成長したな、アルフは。そういった考えが出来るまでになったこの子は、本当に良いフェイトの守護者だ。

「家のことやるのも案外楽しいしさ。それに、来年にはクロノとエイミィも結婚する予定だし、子供とか生まれたら、もっと忙しくなるしね~♪」

「へぇそうか、クロノとエイミィが結婚・・・って」

「「結婚!?」」

『ア~ル~フ~。その話はまだヒミツだって言ったのに・・・』

アルフから漏洩したクロノとエイミィの結婚という情報に驚愕した。だがそれは喜ばしいことだから、祝福しないといけないな。モニターに映るエイミィの顔がハッキリと判るほどに赤くなった。それはテレか、もしくはアルフが勝手に秘密を漏らしたことへの怒りからか。おそらく前者だろう。

「何にしてもおめでとう、クロノ、エイミィ」

「おめでとう。クロノもやっと決心したんだね」

『まぁ色々とな』

『・・・ありがとうユーノ君、ルシル君』

それにしても来年か。それまで俺とシャルは世界に残っていればいいんだが。友人の大切な日を参加せずに消えるのだけは遠慮願いたいな。

『そ、それはそうと! ユーノ君とルシル君はどうなってんの? なのはちゃんやフェイトちゃんとは何もないわけ?』

無理矢理に話を変えたなエイミィ。恥ずかしがる必要はないと思うんだけどな。

「え~と、なのはは僕の恩人で大事な幼なじみです。友達ですけど、それだけですよ本当に」

なのはもそうだが、ユーノも全く自分の気持ちに気が付いていないらしい。いつ2人の感情が友情から恋愛感情になるかは判らないが、当分先のようだ。出来ればユーノとなのはの結婚式にも出席してみたい。士郎さんが認めるかどうかが判らないが・・・。

『ルシル君は? フェイトちゃんとは私たちが出会う前からの付き合いでしょ? 少しくらいはそういった感情はあるんじゃない?』

「・・・確かに、フェイトに対して特別な感情はある。いや――」

『おお!!』

『な、本当なのか、ルシル!?』

エイミィとクロノ、それだけじゃなくユーノやアルフまでが目を丸くして驚いている。俺は「最後まで聞いてくれ」と前置き。いま俺が抱いている思いを告白する。

「でもそれは、恋愛とかそういうのじゃない。何というか家族愛ってモノだ。あの頃は妹のようなフェイトとアルフに幸福を、という思いでいっぱいだった。しかし、もう俺の代わりにフェイト達を守ってくれるクロノたち家族がいる。だから今の俺には、フェイトへの特別な想いが“あった”というのが正しく合うと思う」

想いは切り捨てていかなければならない。どれだけ想おうが手にしようがない。俺は、人間じゃないんだ。

『それはつまり、フェイトちゃんとはこれ以上の進展はない、ってこと?』

「そう捉えてもらって構わないよ、エイミィ」

エイミィの問いに答えると、クロノとエイミィが盛大な溜息を吐いた。何やらコソコソと話しているようだが聞き取れない。

「ルシル。あたしはフェイトとルシルが一緒になってくれると嬉しい。あたしにとってはルシルも大切な家族だからさ」

アルフが少し悲しそうな顔で、俺にとっては嬉しいことを言ってきた。だが俺はそれに答えることが出来ず、ただアルフの頭を撫でることしか出来なかった。

†††Sideルシリオン⇒シャルロッテ†††

定置観測基地から発った私たちは、ロストロギアを受け取る予定になってり発掘地点へと向かっている。

『皆さんの速度なら、ポイントまではあと15分ほどで到着できる予定です。ロストロギアの受け取りと艦船の移動までは、わたしがナビゲートさせていただきます』

通信士シャーリーからのナビを受けて空を翔る。心地よい風を受けながら空を翔けていると、はやてが何を思ったのか「そういえば、管理局に入局して6年やなぁ」だとか言ってきた。思い出を語るのは歳をとった証拠だよ、はやて。とは口には出せない。妙なツッコミが返ってきて面倒なことになりそうだし。

「中学も今年で卒業だしね」

「卒業後はきっと今より忙しくなるかな」

思えば私も、ここまで案外長い時間を過ごしたなぁ、としみじみする。この次元世界に召喚されて7年も経過した。私にとっては初めての長期契約だ。だからこそ時々不安になる。どこまで私はみんなと過ごせるのか、って。

「私は長期の執務官任務も受けることになるし」

「私も教導隊の一員として、あちこち回ることになるね」

「私は卒業の少し前にミッドの地上にお引越しや。ミッド首都(クラナガン)の南側で、家族6人で暮らせる家を探し中や。決まったら、みんな遊びに来てなー」

「シャマル先生が探してくれているんだっけ?」

なのはが聞いた。本局の医務官として働くシャマルのことを、なのは達は先生と呼ぶようになった。シャマルも満更でもなさそうなんだよね。それに白衣姿も似合ってると思うし、正しく女医さんなんだよね。

「そやよ。けどあんま良い物件が無いって嘆いとってなぁ。ま、最悪の場合はセレスにお願いすることになりそうや」

「セレスさんに?」

「セレスってあの・・・?」

「そや♪ セレス・カローラ三佐や」

セレス・カローラ。ルシルとユーノの知り合いだった女性で、その出会いは“闇の書””にまで遡る。執務官でありながら三等空佐でもある、古代ベルカ式を扱えるスゴ腕の騎士。本局でたびたび会うことがあって、その時は局員の先輩として何度かご飯を御馳走してくれた。そんなセレスは結構なお嬢様で、ミッドに留まらず次元世界の主要世界の至る所に別荘を構えてるって話だ。で、ルシルにご執心。そのことでフェイトにちょっと苦手意識を与えてる。

「もしかして別荘を薦められた?」

「シャルちゃん正解♪ その別荘のある場所が海辺でな。立地条件も広さも私の希望に近いんや。もしシャマルが探すことが出来ひんかったら、セレスの別荘を買い取りたいんやけど・・・」

「「「やけど・・・?」」」

はやては「タダで譲ってくれるって言うてくれててな」って苦笑。なのとはフェイトがその話を聞いて「太っ腹だぁ~」セレスの金銭感覚に驚いた。そういう私もびっくり。別荘を丸ごとプレゼントって。さすがは管理局の運営に必要な資金の大半を出資してる大財閥のご令嬢。

「なんや悪い気がしてなぁ」

「貰っておけばいいじゃない。別になんの見返りとか要求されてないんでしょ?」

「まぁ、うん、そうやけど・・・。なんかなぁ~」

「どうしても気になるなら、お金とかじゃなくて何かお願いを聞くとか」

「あ、でもルシルは巻き込まないでね」

「「あはは♪」」

セレネのお願いの内容にルシルが含まれたとき用にフェイトが先制。はやては「了解や♪」ってフェイトに微笑みかけて、なのはも「そうだね~♪」笑顔になる。

「もし家が決まったら、みんな遊びに来てな。精一杯のお持て成しするから♪」

「「うん!」」

未来への約束を交わしたなのは達。今を生きるなのは達には未来がある。でも私にはもう戦いの永遠しかない。どうして私は、今を生きていないのだろう。どうして人間としてなのは達と出逢えなかったんだろう・・・。それが本当に辛くて。でもその思いを打ち明けるわけにもいかなくて。痛い。胸が、心が・・・こんなにも・・痛いよ・・・。

「シャルちゃん? どうしたの!? シャルちゃん!」

「なのは・・・? どうしたって何が?」

気が付けば、なのはやフェイト、はやて、リインが私の顔を見て戸惑っている。

「シャルさん、泣いてるですぅ・・・。どこか痛いですか・・・?」

「え?」

リインに言われてようやく気付いた。私はまた、己の心の弱さゆえに泣いていたのだ。

「な、何でもないよ、みんな。それより見えてきた。あそこが・・・ってちょっとあれ!」

目を擦って何でもないと告げ、みんなを見えてきた発掘地点に意識を集中させる。だけどそこで私たちを待っていたのは、黒煙を上げる遺跡だった。

「げ、現場確認。機械兵器らしき未確認体が多数出てます!」

リインの状況報告を聞いた私たちは、このメンツの中で一番階級が上なはやての指示によって、なのはが救助担当、はやてとリインは上空で指揮、私とフェイトは遊撃担当とバラけた。

「中継! こちら現場! 発掘地点を襲う不審機械を発見! 強制停止を開始します!」

『りょ、了解です! 本部に中継します!』

なのはとシャーリーのやり取りの最中、機械兵器より攻撃が放たれた。魔法じゃない光線攻撃。明らかに科学兵器で、管理局法に抵触してるね。でもあれしきの攻撃なら、なのはの防御は絶対に抜けない。案の定なのはのプロテクションに完全に妨げられた。

「フェイト!」

――氷牙凍羽刃(アイス・ツァプフェン・フリューゲル)――

「うん! プラズマランサー・・・ファイア!」

私がフェイトと放った氷の羽根と雷の槍が機械兵器に直撃、爆発四散させた。でもさらに同型の新手が6機と出現したのを確認。

『中継です! やはり未確認! 危険認定がされ破壊許可が出ました!』

「了解やっ! 発掘員の救護は私とリインとなのはちゃんで引き受ける! フェイトちゃんとシャルちゃんは思いっきりやったって!」

「「了解!」」

私とフェイトは、はやての指示に応えて機械兵器へと攻撃を再開しようとするんだけど、機械兵器より妙なフィールドエフェクトが発生した。

「まずは様子見ってことで。トロイメライ」

≪Leuchten Pfeil≫

“トロイメライ”を振るって、魔力矢ロイヒテン・プファイルを1発と放つ。それは機械兵器へと当たる直前で掻き消えた。アレは「無効化フィールド・・・」ってわけか。

≪ジャマーフィールドを検知しました≫

“バルディッシュ”からも報告を受ける。あー、やっぱりね。そんな気がしたよ。

「AMF――アンチ・マギリンク・フィールド。AAAランクの魔法防御を機械兵器が使うなんて・・・!」

フェイトも驚きを見せている。私は驚きよりかは「あらら。結構なポテンシャル持ってるんだ」呆れに近いものを感じた。機械兵器ごときが大層な能力を持っているものだ。生意気だよ。私は地面に降り立ち、“トロイメライ”を鞘に収めて対象を見据える。

『はわわッ AMFって言ったら魔法が通用しないってことですよ!? 魔力結合が消されちゃったら、攻撃が通らないですー!』

はやてとユニゾンしたリインから念話が送られてくる。でもその考えは少し甘いな~。

「リイン、ちゃんと覚えておいて。戦いの場で、“絶対”、なんてモノは決して存在しない。どれだけ強力な相手や魔法があったとしても――」

私は鞘に納まった“トロイメライ”を居合いの構えのまま・・・

――閃駆――

『ほえ? シャルさんが消えたです!?』

一足飛びで機械兵器に突っ込む。リインの少し間抜けな声が聞こえた。

(生前使っていた純粋な身体能力による超加速歩法、閃駆。さぁご覧あれ!)

名のとおり、閃光の如き速さで戦地を駆ける体術。フライハイト家の古文書に記されていたものを独学で会得した、私だけの力。魔力補助なしでも使えることから、結構重宝したものだ。それに魔力補助を使えば、風迅王が使っていた“神速”に匹敵するほどの速さを得られる。成長した肉体のおかげで、ようやく使えるようになったのだ。やっと本来の私に戻ってきたよ。

「1、2、3、4・・・」

“閃駆”で突っ込み、鞘から抜き放った“トロイメライ”で機械兵器群に一太刀ずつ入れていく。機械兵器群の間を通り抜け、静かに“トロイメライ”を鞘へと納める。その瞬間、機械兵器が全機音を立てて真っ二つとなり爆発炎上した。

「必ず何かしらの欠点がある、ということをね」

『す、すごいですーー! かっこいいですよ、シャルさん!』

「さすが陸戦最強と謳われるだけあるなぁ」

「にゃはは、もう人間業じゃないよね」

「そうだね。しかも純粋な体術って言うんだから、ちょっと呆れるかも」

リインの興奮とはやての言葉には嬉しく思うんだけど、なのはとフェイトの言葉には何も嬉しさが湧かないよ。ともあれ無事だった発掘員の人からロストロギアが入れられたケースをフェイトが受け取る。これでまずは1つ目の回収が終わったということだ。だけど、もう1ヵ所を任されていたシグナムから通信が来た。その内容は、発掘現場が跡形もなく吹き飛んでいたというものだった。

†††Sideシャルロッテ⇒ヴィータ†††

シグナムから応援要請を受けたあたしとシャマルは、先に現場に着いてたシグナムとザフィーラに合流したんだけど・・・。

「ひでえなこりゃ。見渡す限り焼け野原だぜ。・・・でも汚染物質の残留はない、っと。典型的な魔力爆発だな」

その惨状に気が滅入る。人が居なかっただけマシだけど。それにしてもこんな場所に居ると、あの日のことを思い出して嫌になる。

「どうかしたか? ヴィータ。顔色が優れんが・・・」

ザフィーラがすぐ側にまで来ていた。こんなに近付かれていたってのに気付かねぇなんて。少し気を散漫にし過ぎちまったな。

「別になんでもねぇよ。相変わらずこういう焼け跡とか好きになれねぇだけさ」

3年前のあの日、あたしがもう少ししっかりしていれば、アイツらがあんなことにならなかったのに。あの日の後悔の念は、未だにあたしの心から消えやしねぇ。

「何を怖い顔をしているんだ、ヴィータ。リインが見たら心配するぞ」

「うるせぇな、考え事してんだよ。つうか撫でんな」

シャマルとの話も終わったのか、いつの間にかシグナムとシャマルも側まで来ていた。それにも気付かなねぇなんて、さすがにまずいな。今はこっちのことだけを考えよう。アイツらは今、ちゃんと笑っていられてるんだからな。

「そういやさシグナム。一緒の任務って結構久しぶりなんだな」

「む? そうだな。我々みな、担当部署が離れてしまったからな。それがどうした」

何か話題が欲しくて咄嗟に口にしたけど、思えば見事にバラバラになったもんだ。

「いんや。でも結局は家に帰れば顔を合わせるし、あんま関係ねぇけどな」

「緊急任務がない限り休暇はみな揃うしな」

ま、それが良いことだとも思うけどな。そういう何気ない時間こそが幸せだって言うんだから。会話はそれっきり。ただ黙って辺りを見回していたところに、ザフィーラが森を見て何かを察知したのか、「む」って呻いた。

「森が動いた。座標を伝える。シャマル、調べてくれ」

「判ったわ。クラールヴィント、遠見の鏡」

シャマルが“クラールヴィント”を円にして作った一種のモニター魔法に、列を組んで進んでる数機のカプセル型の機械が映し出された。そんで中継と連絡を取って判ったのが、遠見の鏡に映ってる機械が、ロストロギアを受け取ったはやて達の居るもう1ヵ所の遺跡を目指してるってことだった。

「主はやてとテスタロッサ、それにフライハイトとなのは。この4人が揃ったとなると、機械兵器ごときに不覚をとることは万に一つもないだろうが・・・」

「運んでいる物がアレだものね。こっちで叩きましょう。ここの遺跡みたいにすべてを吹き飛ばすようなことにならないように」

「ああ。・・・観測基地。守護騎士から2名、シグナムとヴィータが迎え撃つ!」

いきなりあたしの名前を出して背中を叩いてきたシグナム。かなり強く叩きやがったのか涙が出るほどイテェ。

「つうか、あたしも出るってなに勝手に決めてんだよ」

「なんだ、ヴィータ。将の決定に不服があるのか?」

「・・・別にねぇけどさ」

文句はねぇよ。守るための戦いってんなら望むところだ。そういうわけで、あたしとシグナムははやて達と連絡を取って、機会兵器掃討へと向かうことになった。機械兵器の進路に先回りを終えたあたしとシグナムは、そろそろ現れるであろう機械兵器を待つ。

『特定の反応を追尾して、攻撃範囲に居るものを攻撃するのみのようです。ですが対航空戦能力は未確認です。お気を付けて!』

「了解した。・・・未確認(アンノウン)なのはいつものことだ。問題ない」

中継基地からの報告にシグナムが応える。未確認の機械兵器。これだけであの日のことをハッキリと思い出しちまう。3年前のあの雪の日の機械兵器(アレ)も未確認だった。全てがいつも通りで、笑って終われるはずの任務だったんだ。誰もが認める無敵のエース(なのは)がいつも通りに笑っていたから。笑っていたから、あたしと、たまたまあたしらの部隊に出向していたセインテストは、なのはの状態に気づかなかった。いや、気づかなかったじゃダメだったんだ。

・―・―・回想だ・―・―・

「ゲホッ、ど・・・どうしよう・・・どうし・・・ゴホゴホ・・・」

「・・・なの・・は? 君は・・・無事なのか?・・・」

あたしが気付いた時には全てが終わっていた。任務が終わっての帰還途中に奇襲を受けたなのはは、今までの無茶や無理の所為か、簡単に撃墜されちまった。それに一早く気付いたセインテストは、なのはに対する機械兵器の追撃を庇って、代わりに瀕死のダメージを受けた。

「どうしよう・・・ヴィータちゃん・・・! ルシル君・・・ルシル君が・・・!」

あのセインテストならまず起こりえない事態だった。けど、それはアイツが普通の状態であればこそ、と付いちまう。ああそうだ。なのはだけじゃなくセインテストも人知れず限界を超えちまってたんだ。あたしが現場へと着いた時、そこには機械兵器の残骸と倒れ付すセインテスト、そしてセインテストの隣で蹲って泣いている血だらけのなのはが居た。

「おい、うそだろ。・・・くっ、こちらヴィータ! 医療班! 早く、早く来てくれ・・・!」

あたしはセインテストの腹に開いた穴を両手で必死に押さえて、「止まれ!」出血を止めようとする。縦に細く開いた穴。それは何かの刃物らしきモノで貫かれたということだ。

「がはっ、大・・・丈夫だ。この・・・程度で死ぬ・・・ような・・・」

「馬鹿野郎っ、喋んな! お前死に掛けてんだぞ!」

「それより・・・なのはは?・・・なのはは・・・無事なの・・・か?」

「大丈夫だよ! ルシル君っ、私は大丈夫だから、だい・・・じょうぶ・・・だから!」

なのははセインテストに心配させないためか、必死に嗚咽を堪える。それを聞いたセインテストは意識を手放した。それから少し、ようやく医療班が到着して、セインテストを優先になのはの治療も始めた。

・―・―・回想終わりだ・―・―・

あの後、セインテストは意識が覚醒すると、アイツ自身の治癒魔法で重体だった自分を素早く治して、2週間で復帰した。その時は本気で驚いたな。マジで人間じゃねぇとか思ったもんだ。でもその代償なのかアイツの魔力値が大きく減って、魔導師ランクがCまで落ちちまった。

(あたしはもう、あんな思いはしたくねぇ)

だから、アイツらの邪魔をするようなヤツはすべて「まとめてブッ潰す!」んだ。

「往け!」

――シュワルベフリーゲン――

「はぁぁぁぁぁぁぁ!!」

――紫電一閃――

そうして、あたしら守護騎士の総力で機械兵器を無事に一掃完了。そんではやて達と合流、アースラへと帰艦した。

†††Sideヴィータ⇒フェイト†††

「ただいま戻りましたー♪」

任務も無事に終了して、帰るべき家とも言えるようなアースラへと帰艦した私たち。レクリエーションルームへ入ると、テーブルに並べられたものすごい数の料理に圧倒されてしまった。

「「「「「おかえり!」」」」」

呆然としていると、母さんやアルフにルシルにエイミィ、それにユーノから出迎えの挨拶を受けた。それを聞くだけで本当に嬉しくなる。抱き着いてきたアルフの頭を撫でながら、私は母さんとルシルの元へ、なのははユーノの元へ、エイミィははやて達の元へと向かう。

「お疲れ様です、母さん。ルシルも元気だった?」

「ええ、フェイトもお疲れ様」

「お疲れ、フェイト。ああ、体調の方なら問題はないよ」

ルシルとこうして直接会うのは一体いつ以来だろう。休暇が重なっても、やることがある、って言って度々どこかの世界に行っていた。エリオとキャロもルシルに逢いたいって言っているんだけどなぁ。また一緒に遊びに行きたいんだけど。今度の休暇、空けてくれると嬉しいな。

「俺のことより、今はゆっくりと食事を楽しんでくれ」

「え、うん・・・じゃあ、ルシル。またあとでね」

「ああ。またあとで」

私はルシルに言われるままになのは達の元へと向かった。するとシャルがルシルの側へとやって来て、かなり顔を近付けあってすごく真剣な顔で話している。けど2人は姉弟?なんだから、以前のようにすごく気になったりはしないんだけど。でもだからこそ、あんな真剣な顔で2人が話す内容が気になる。

「「おつかれ~♪」」

「ひゃっ?」

私がルシルとシャルに気を取られていると、なのはとはやてが私の頬に冷たいコップを押し当ててきた。さすがにそれには驚いてしまって、変な声を出してしまった。

「もう、何するの? なのは、はやて」

少し怒り気味に言うと2人は笑いながら謝ってきた。そうしたら私も何だか可笑しくなって笑ってしまった。

「どないしたんフェイトちゃん?」

「何かぼうっとしてたけど」

「え? ううん、何でもないよ」

2人が心配してくれるけど、大したことじゃないないから気にしないように言っておいた。 
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