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戦国異伝供書

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第八十一話 朝倉合戦その八

「越後の上杉殿もじゃ」
「あの毘沙門天の生まれ変わりとまで言われる」
「神がかりの戦をされる人ですな」
「戦えば勝つこと以外ない」
「そうしたまさに毘沙門天の様な方ですな」
「あの方は毎晩こうしてご自身のお屋敷の縁側に出られてな」
 今の自分達の様にというのだ。
「酒を楽しまれているという」
「お酒も好きと聞いていますが」
「陣中でも欠かすことがないと」
「それではですか」
「今もですか」
「そうであられような、そして逆にな」
 元親はさらに話した。
「尾張の織田殿はな」
「近頃うつけの評判を消されている」
「その活躍を為されている方ですな」
「うつけ殿とは大きな間違いで」
「その実は、ですな」
「かなりの方だという、だからな」
 それでというのだ。
「わしはじゃ」
「織田殿については」
「常に言われておられる様に」
「素晴らしい方とですな」
「ここでも言われますな」
「うむ」
 まさにというのだ。
「そしてじゃ」
「そして?」
「そしてといいますと」
「まだ何かありますか」
「うむ、織田殿は実は酒はじゃ」
 これはというのだ。
「飲まれぬというの」
「そのこと以前聞きましたが」
「意外ですな」
「果物や菓子がお好きだとか」
「そして茶が」
「そうした方ですな」
「どうやら」
 弟達も述べた。
「あの御仁は」
「その実はですな」
「如何にも飲まれそうで」
「そうではありませんな」
「だからな」
 それでというのだ。
「わしはこのことも織田殿の面白いところと思っておる」
「酒を好まれそうで」
「実は下戸で」
「それで、ですな」
「その実は」
「うむ、果物や菓子を好まれるなぞ」
 酒を飲みつつ言うのだった。
「面白いわ、柿や西瓜もお好きらしいぞ」
「柿ですか」
「あれは確かによいですな」
「実に甘いです」
「我等も子供の頃から食べておりまするな」
「あと瓜もそうじゃ」
 これもというのだ。
「お好きという」
「街で歩きながら食されていたとか」
「それも奇矯な身なりで」
「だからうつけ殿とも呼ばれましたな」
「そうでありましたな」
「あれは傾いておられる様じゃ」
 子供の頃の信長、吉法師と呼ばれていた時のその振る舞いはというのだ。
「傾奇者なのじゃ」
「都で流行っているという」
「派手な身なりの者達ですな」
「織田殿は傾いておられた」
「実は左様でしたか」
「うむ、うつけとはとんでもないことであり」
 そしてというのだ。 
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