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おっちょこちょいのかよちゃん

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44 教会のピアノ

 
前書き
《前回》
 花火大会の終わり、かよ子は杉山と大野、そして彼らの家族と出会い、最高の花火大会だったと実感する。そして終業式を迎え、夏休みが始まった!!

 今回からはアニメ「ちびまる子ちゃん」2期238話「夏休みの思い出」をアレンジしたエピソードとなります。作者の別作品「とある3年4組の卑怯者」で主人公を務めた藤木が登場します。 

 
 三河口は叔母に車で静岡駅まで送られた。
「それじゃ、行ってまいります」
「ありにも宜しくね」
「はい」
 三河口は叔母と別れ、新幹線の東京方面のホームに向かった。そして東京行きの新幹線に乗車した。
(札幌か・・・。遠いよな・・・)
 本来ならば、飛行機の方が速いのだが、休み期間という事もあり、運賃が安めの列車と船で行くことにした。三河口は新幹線に乗車中、何らかの感触を覚えた。しかし、日本赤軍や異世界の敵の時とは異なる、また別の感触だった。かよ子やさりが近くにいる時のように。その時、反対方向の新幹線とすれ違っていた事に気付いた。
(何だろう、反対側の列車に乗っていた誰かに感じたのか・・・?)

 そして静岡駅。一人の少女が両親と共に新幹線から降車した。
「ここが静岡ね」
 りえは静岡市内の空気を吸った。東京は少し違う。空気は東京よりは綺麗だった。
「さ、りえ、乗り換えるよ」
「うん」
 りえは清水に行くために静岡と清水を往来する列車に乗り換えた。

 かよ子はこの日はとし子の家でアイスクリームを御馳走になっていた。
「美味しいねえ!」
「うん、喜んでくれて嬉しいわ。ありがとう」
 とし子の母は感謝した。食べ終わると話をする。
「ところで、とし子ちゃんは休みはどこか行くの?」
「う〜ん、東京のおばあちゃんちかな・・・?かよちゃんは?」
「そっか、私は今は予定ないんだよね。何かあるかな・・・?宿題するだけかな?」
 かよ子は三河口が札幌へ行った事や、三河口の従姉のさりが名古屋に住んでいる事から札幌や名古屋へ行ってみたいとは思った。
「まあ、どこかへ行きたいね・・・」
 かよ子は適当に誤魔化し、帰る事にした。そして、宿題の「夏休みの友」の続きをやりながら、自由研究をどうしようか考えた。

 りえは清水に到着した。そして祖母に会った。
「おばあちゃん、久しぶり」
「りえ、久しぶりね」
 りえはまず持ってきた学校の宿題をやった。翌日は父の知り合いの教会のシスターと会い、ピアノを借りる予定だった。

 三河口は青森行きの急行列車に乗った。その列車で一晩かけて青森へ行き、そこで津軽海峡の連絡船に乗船して、また北海道内の列車に乗る。だか、三河口は新幹線の車内で起きた感触は何だったのか、気になっていた。

 翌日、りえは教会のシスターと出会った。
「こんにちは」
「こんにちは。貴女が安藤りえちゃんね。お父さんから話は聞いてるわ。是非ともこのピアノを使っていいからね」
「はい、ありがとうございます」
 りえは早速ピアノの椅子に座り、練習を始めた。

 藤木茂。かよ子のクラスメイトで困った事があると適当に誤魔化したり、ウソを付いたり、すぐ逃げ出す為、クラスメイトから「卑怯」と呼ばれている男子である。また、彼は恋する男子でもあり、クラスメイトの笹山かず子に恋していた。だが、夏休みはその笹山に会えず、彼にとっては非常に憂鬱な夏休みであった。早く学校が始まって欲しいと思っていた。
 彼が教会を通りかかっている時、ピアノの音が聞こえた。
(ピアノの音だ・・・。誰かが弾いてるのかな?)
 その時、ピアノの音が途中で止まった。
(急に消えた・・・?幽霊か何かなのか!?)
 藤木は恐ろしくなった。
「ひい〜!」
 藤木は走って逃げ出した。逃げる途中、大野と杉山に出会った。
「よお藤木、どうしたんだ?」
「あ、大野君、杉山君!聞いてくれよ!教会に幽霊が出たんだ!!」
「幽霊!?お前、何言ってんだ?」
 大野はバカバカしく笑った。
「そうだな、マジでありえねえぜ」
 杉山も笑う。
「ほ、本当だよ!!教会からピアノが弾いてると思ったら急に止まったんだ!」
 その時、まる子とたまえも現れた。
「あれえ〜、アンタたち、どうしたのお〜?」
「ああ、さくら、穂波。藤木がよお、幽霊が出たって怖がってんだよ!」
「ええ、幽霊!?」
 まる子は驚くと、ぞっとした。
「まるちゃん、そんなのある訳ないよ・・・」
 冷静なたまえは突っ込む。
「藤木、何か勘違いしてるんじゃないの?教会のシスターが弾いてたんじゃないの?」
「ち、違うよ、本当に途中で止まったんだ!」
「まあ、俺達で突き止めようぜ!」
「そうだな!」
「明日の10時に教会の前で集合だ!」
「おう!」
 皆は約束した。
(嫌だよお・・・)
 藤木は弱音を吐いた。

 三河口が札幌市内の駅に到着したのは夕方だった。
「やっと札幌か・・・」
「健ちゃん」
 三河口を名前で呼ぶ声がした。羽柴家の次女で従姉のありである。
「ありちゃん」
「遠くて疲れたでしょ、送ってあげるよ」
 ありは車を出していた。
「はい、ありがとうございます」
 三河口はありの出した車でに乗った。さりの姉だが、さりとはまたどこか違う所がある。
札幌(ここ)は清水と違って涼しいでしょ?」
「はい、確かにあまり汗かいてませんね」
「札幌って夏を過ごすには快適よ。まー、冬は雪が沢山積もって寒くて大変だけどね」
「はい。俺は寒いの苦手ですから。ところで旦那さんは?」
「ああ、仕事終わりにして帰るとこだと思うよ。そういえば、悠ちゃんも私も何か変な感触するようになったんだよねー」
「ああ、俺もです」
 話の続きをしている途中、ありが今住んでる家に到着した。
「まあ、長旅だったし、ゆっくりしていって!」
「はい」

 かよ子はこの日も宿題を朝のうちに済ませてしまおうと思っていた。「夏休みの友」と呼ばれる漢字と計算のドリル部分は3分の2は終わらせた。その時、急に声が聞こえた。
「貴女がまき子さんの娘、山田かよ子さんですね」
「え!?」
 かよ子は振り向くと、天女のような女性がいた。
「私は御穂津姫。その杖を貴女のお母さんに渡した者です」
「御穂津姫・・・!」
 かよ子はその名を母から聞いた事があった。
「それで私に何か用なの?」
「はい、今この日本(くに)が攻めを受けているとご存知ですね?」
「攻め・・・?」
 かよ子はすぐに理解した。今、日本が異世界の敵や日本赤軍に攻められているという事を。
「そ、それで?」
「それで私は今、感じたのです。東京という所でしたね。そこから貴女と共闘できるかもしれない方が今清水(こちら)にいらっしゃっているのです」
「その人って?」
「年は山田かよ子さんと同じで、その人は杯を持っています。貴女の杖と同じ、平和を司る世界からの杯です」
(杯・・・。そういえば長山君も似たような事言ってた・・・!!)
 かよ子は思いついた。その杯の持ち主と知り合って今後連絡を取れるようにしておけば日本を守り抜く事ができるのではないか、と。
「その人はどこにいるの!?」
「只今、教会におります」

 杉山は大野、まる子、たまえ、藤木と共に教会の前にいた。
「や、やっぱりよそうよ」
 藤木は恐れを持ちながら言った。
「お前、今更怖じ気づくなよ」
「そうだよお、最初に言い出したのは藤木だよ〜」
「僕は別に探検しようとは思ってないよ」
「だってお前見たんだろ?」
「うん・・・」
「藤木の勘違いじゃないの?」
 たまえは疑った。
「勘違いじゃないよ、本当に見たんだ。ここでピアノの音が急に消えたんだ・・・!」
「もしかして教会のシスターがピアノ弾いてただけなんじゃない?」
「でもシスターだったとしても消えるのはおかしいぜ」
「って事は・・・。やっぱり幽霊〜!?」
「お前男の癖に往生際が悪いぞ」
 大野が藤木を(たしな)めた。
「俺なんてもし幽霊がいたら握手してもらうぜ」
「杉山君は幽霊を見た事ないからそんな事言えるんだ」
「じゃあ、藤木が見たのは一体なんだったんだろうね?」
「だからその正体を突き止める為に今日、こうして集まったんだろ?」
 杉山がまる子に確認した。
「あ〜、そうだった。今からドキドキしてきたよお〜」
「兎に角、ピアノの音が聞こえるまで待ってようぜ」
 大野がそう言った途端、ピアノの音が聞こえた。
「よし、行ってみるか」
 杉山が乗り出す。皆は行く。だが、藤木は引き返そうとした。
「ぼ、僕、ちょっと用事が・・・!」
「ちょっと藤木!一人で逃げるなんて卑怯だよ!」
 藤木は自分の異名である卑怯と言われて止まった。
「わ、分かったよ、行くよ・・・」
「俺達はこの謎を証明するという義務があるんだ」
 皆は教会の中に入った。ピアノの音は講堂から聴こえた。
「誰が入る?」
 まる子が聞く。
「す、杉山君が行きなよ!幽霊と握手したいって言ってたじゃないか!」
 藤木が提案した。
「お、俺!?分かったよ・・・」
 杉山はどきりとしたが、深呼吸をして戸を開けた。その時、向こうに何者かがピアノを弾いていた。
「で、出たーーー!!幽霊だあーーーーー!!」
 杉山は驚き叫ぶ。
「うわあーーー!!」
「キャーーー!!」
 皆も絶叫した。 
 

 
後書き
次回は・・・
「東京から来た少女」
 安藤りえと出会った杉山達。大野達は早速りえと仲良くなるが、杉山はなぜかりえが気に食わず、口喧嘩する。そしてかよ子は御穂津姫の話を聞き、東京から来た少女に会いに行こうとするが・・・。 
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