テイルズオブザワールド レディアントマイソロジー3 ―そして、僕の伝説―
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第二十五話
「――アアアァアアァアーッ!!」
「――散れっ!!」
――ヴォルトの叫びと同時にミラの声が上がり、全員がその場を下がると、先程までいた場所に雷撃が落ちる。
雷撃が落ちた場所を確認すると、その威力の為か地面が削れ、雷撃が直に落ちたであろう位置から未だ、バチバチと音を立て小さな電撃が走っていた。
「――オイオイ、精霊ってのはこんなに気性が荒いもんなのかよ?」
「ううん、違う。……多分、暴走か何かだと思う」
苦笑を浮かべながらそうぼやきつつ武器である大剣と銃を構えるアルヴィンに、ヴォルトの様子を確認しながら拳を構えるジュードがそう答える。
まさか、あの赤い煙が何なのか情報が少ないのにそこまで絞り込むなんて……ジュードって頭良いのかな…?
「とにかく……今は彼女を倒すしかない。皆……行こうっ!」
僕の声に皆が頷くと、それぞれが武器を構え、僕、ジュード、ヴォイト、アルヴィンがヴォルトに向け走り出し、ミラとロッタが詠唱を開始する。
「ハァアァァァッ!双牙斬ッ!!」
「うおらぁっ!虎牙破斬ッ!!」
先に僕とヴォイトがヴォルトに向けて、斬り下ろしから斬り上げの『双牙斬』、斬り上げから斬り下ろしの『虎牙破斬』を放つ。
「――アアアァアアァッ!!」
「くっ!?あぁっ!!」
「ん…だとぉっ!?」
――だが、それはヴォルトの周りに張られた紫色の球体状の膜に防がると、同時にヴォルトの周りから電撃が出され僕とヴォイトは弾き飛ばされる。
「それなら……優等生っ!!」
「分かったよ、アルヴィンっ!!」
「「魔神連牙斬ッ!!」」
僕とヴォイトが弾かれたのを見てアルヴィンとジュードが目を合わせ合図をすると、二人が斬撃と拳撃を同時に放つ。
「――アァァァァッ!!」
「…マジかよッ!?」
「うわぁっ!?」
二人が放ったソレをヴォルトは確認すると、自分の球体状の膜を利用し、高速回転を始め、ソレを避けると同時にそのまま二人に向け電撃を放ちながら走り出し、二人はなんとか避ける。
「なら……これでどう?――レイッ!!」
「大地よ――ロックトライッ!!」
「―――ッ!!?」
ロッタとミラがヴォルトの動きと僕達の位置に合わせ、ヴォルトに向け上空から数本の光の柱と、地面から数本の土の槍を出現させる。ヴォルトはそれに対応出来なかったのか直撃する。
「――…しゃぁっ!!これなら……っ!」
「…っ!待って、ヴォイト……まだだっ!!」
「――……『ライトニング・シェル』」
ロッタとミラの魔法で僅かに膜が割れたのを見てヴォイトが再び攻撃を始めようとするが、僕がヴォイトを止めると同時に、ヴォルトの呟きと共に再び膜が再構築された。
「くそ…笑えねぇっつーのっ!!」
「――アアアァァァァッ!!」
「ッ!!皆、急いで奴の周りから離れろっ!!」
再構築されたヴォルトの膜に、アルヴィンが思わず舌打ちと共に言葉を出すも、ヴォルトのより一層高い叫びに、ミラがそう言うと、ヴォルトが上空へと飛び上がる。
「……ロッタッ!!回復の準備をっ!!」
「え、ええっ!!」
「――来るぞっ!!」
「――アアアァアアァアーッ!!」
ヴォルトの行動が分かり、僕はロッタの前に盾になるように立ち、ロッタに指示して退かせると、ミラの声に皆が防御に入る。上空へと上がっていたヴォルトは急速で落ち、そのヴォルトが落ちた位置から無数の雷撃が放たれた。
「ぐ…っ……うぅっ!」
「ちぃっ……コイツは…痺れるぜ…っ!」
「皆ッ!――回復の光よ、集え!リザレクションッ!!」
ヴォルトから放たれた雷撃をなんとか皆防ぎきったが、やはりそれなりにダメージはもらってしまった。退いていたロッタが駆けつけ、皆の周りに回復陣を張り、ダメージを回復させてくれる。
「…なんとか防ぎきれたか…。礼を言う、ロッタ」
「どういたしまして…って言いたいけど、アレの攻撃に気付けたのはアナタのおかげだから此方こそ礼を言うわ。……それにしても――」
ミラの言葉に苦笑を浮かべてそうロッタは返しながら視線を前方のヴォルトに向ける。それに合わせ僕もヴォルトを見ると、ヴォルトは此方を睨むように見て待ち構えていた。
「……ったく。流石精霊様ってか。…この人数で俺達が劣勢だからな」
「あの膜をなんとか出来りゃいいんだが……再構築が早ぇからな…」
「……それなら再構築が間に合わない程に攻撃すれば――」
「……どういう事、ジュード?」
アルヴィンとヴォイトの言葉に、ジュードは少し考えるような仕草をするとそう言葉を出し、僕はそれを問い掛けた。
ジュードは皆を見て小さく頷くと手早く説明を始める。
「――至ってシンプルな事だよ。再構築が早いなら、膜を壊す強力な攻撃を連続で出して、再構築のスピードを上回ればいい。ただそれだけだよ」
「成る程、ね……。でもあの膜、それなりに堅いし…ミラとロッタの魔法だけじゃ足りないんじゃ…」
「「――なら、俺の出番だな」」
ジュードの説明を聞いて僕は納得するも、そう言葉を続け掛けると、ヴォイトとアルヴィンが名乗りを上げた。
「ヴォイト……それにアルヴィン…」
「力技なら俺に任せろ。これでも、とっておきの隠し玉があるんだぜ?」
「俺も同じく、てな。先方はミラとロッタ、中堅に俺とヴォイト……締めはお前等に任せるぜ」
そう言ってニッと笑うヴォイトとアルヴィンに、僕とジュードはミラとロッタを見るも、女子二人も賛成らしく頷いた。
僕とジュードは顔を見合わせお互いに再確認したように頷くと再びヴォルトに向け構え直した。
――さぁ、行こうっ!!
「いくぞ、ロッタっ!!」
「任せなさい、ミラっ!!」
「「光の雨よ、ジャッジメントっ!!」」
「―――ッ!!?『ライトニング・シェル』」
戦闘再開を告げるかの如く、ミラとロッタの両者の魔力を合わせ声と共に『レイ』とはまた違った無数の光の柱をヴォルトへと落とす!
ヴォルトは攻撃に当たり膜にヒビが入るも、再構築させる。
だが―――
「一気にいくぜっ!目ェかっぽじってよく見てな!おたくの最後の光景だっ!!――エクスペンダブルプライドッ!!」
アルヴィンが上空に飛び上がり、再構築されたばかりの膜に銃を連射しヒビを入れそのまま上空で大剣を構えると、自分の周りに炎を纏い、ヴォルトの膜に特攻する!
再構築されたばかりの膜に再びヒビが入り、それは先程のジャッジメントの際のヒビよりも遥かに大きなものだった。
「――ッ!!!?ラ、『ライトニング・シェル』ッ!!」
「――まだまだいくぜぇっ!!うおらぁっ!!」
ヴォルトは若干焦りを見せ、再び膜を再構築させるも、それに合わせヴォイトは剣を力一杯投げると、それは勢いが入り膜に突き刺さる。そして――
「――うぉおぉオラオラオラオラオラオラオラオラァァァッ!!」
――膜に突き刺さったまま剣の柄部に拳の乱打を叩き込む!
そして剣は徐々に膜の奥へと入っていき、剣が突き刺さった箇所のヒビが大きくなる。
「――こいつでぇ…決まりだぁっ!剣打・粉砕ッ撃ィィィィッ!!」
「――――!!!!?」
――ヴォイトが最後、突き刺さったままの剣を掴み、そのまま力尽くで振り上げ跳ぶと、膜は音を立てて崩壊した。
膜が破壊された事に驚愕したヴォルトの不意をつき、僕とジュードは一気に距離を詰める!!
「行くよ、ジュードっ!!」
「うん、力はなるべくセーブして……!!」
「「双狼砲虎ッ!!」」
「――ァ、ァァァァッ!?」
膜が剥がれ、無防備となったヴォルトの小さな腹部に、二人の両掌から放たれた狼と虎の頭を模した波動が直撃する。
見た目が少女の為つい力のセーブはしてしまうが、直撃位置は腹部。精霊ながらもこれは効いたのか叫びと共に、ヴォルトは吹き飛んだ。
「――…ハァ……ハァ…これ以上はマジでキツいぞ」
「――…ハァ…だな。……もしこれで立ち上がったら…」
「……残念ながら、まだのようだ」
全員が流石にダメージを受けた上、大技の発動で限界が近く息切れをしながらそう言葉を漏らすも、ミラがヴォルトが吹き飛んだ方を見てそう告げた。
僕達が視線をそちらへ向けると――
「――ァ…ァァァァ…!」
――多少のダメージを見せながらも、周りに原因である赤い煙を纏わせながら立ち上がるヴォルトの姿があった。
「……オイオイ…まだやれるのかよ…」
「……衛司、ヴォイト……まさかだけど…アレってあの赤い煙が出ている以上、何度も立ち上がるんじゃないかしら…」
「…マジかよ!?おい、ブラザー…もしそうならあの赤い煙はメリアにしか消せねぇ…此処は皆の事も考えて一旦退いた方がいいんじゃねぇか…?」
ロッタが僕とヴォイトにしか聞こえないようにそう言うと、ヴォイトは小さく舌打ちし、僕にそう言ってきた。
確かに……僕もそれは考えたけど……。
「――ァ……アアアァアアァアーッ!!」
目前で叫ぶそれを見てその考えは止まる。僕達が此処で退けば、彼女…ヴォルトは赤い煙の呪縛に取り憑かれたままなのだ。だけど…退かなければ方法は何もない。
「……くそぅっ!!」
自分が何もできない不甲斐なさに思わず、木刀を強く握りしめた時だった。
――突然、木刀が光り出した。
「ッ!?……これは……」
「…?…どうしたの衛司…?」
僕の反応に、小さく首を傾げる皆。まさか…この光が見えていないんだろうか…?
これって一体……?……でも……――
「――いける気がする」
「…衛司…?…ッ!!オイ、衛司!!」
僕の言葉に皆が首を傾げたままだが、僕がゆっくりとヴォルトの方に向けて歩き出すとその表情が変わり出す。
皆が静止をするような声が聞こえるが、僕はそれを聞かず、ヴォルトに向け歩き続け……ヴォルトのほぼ真正面まで歩み寄った。
「――…ァ…アアアァーッ!!」
「……大丈夫……今、助けるっ!!」
未だ吠えるように声を出すヴォルト。僕はそれに向けゆっくりと木刀を振り上げ――ただ《助けたい》と感情を込めて――木刀をヴォルトに振り下ろした―。
―――――――――――――
「――ッ……あれ……此処は……?」
――目が覚めていく感覚に、ゆっくりと目を開くと知らない天井だった。
……あれ……?
「――…ぁ、目が覚めたみたいね」
「――おそようさん、ブラザー」
周りを見回すと、どうやら僕はベッドに寝ているらしく近くの椅子に腰掛けたロッタとヴォイトの姿があった。
…そうだ……っ!!
「僕は確かあの洞窟で……二人共、ジュード達は!?あの精霊は…!?」
「ちょっ、まずは落ち着きなさいバカッ!!」
勢いよくつい顔をそちらに近付けた僕に、ロッタは何故か顔を赤くしてロッドで頭を叩いてきた。うん、痛い。
ヴォイトはそのようにケラケラと笑ってた。
「まぁ、落ち着いたみてぇだな。とりあえず説明だが……まず皆無事だ、安心しろ」
「――…そっか、良かった。……それであの精霊は…?」
「……はっきり言うとよく分からないわ。…アンタがあの精霊に木刀を『精霊に当たらないように』振り下ろした後、いきなりアンタが倒れて……それでその精霊が少しアンタの事見てたけどいきなり消えたわ…。でも、赤い煙が消えてて正気に戻ってたわ」
「……そっか……」
ロッタの説明を聞いて僕は安心したように息を吐く。良かった……助けられたんだ。
「一応依頼の方は村長に上手く言っといたけど…アンタがぶっ倒れてたから一日村の宿屋の部屋借りる事になったんだけど――結局アンタ、あの赤い煙をどうやって消したのよ?」
「……自分でもよく分からないんだ。でも、木刀が光り出したて……それでなんか、行けるっ!って気がして…」
「…木刀が…?でも、俺達にはそれは見えなかったが……確かその木刀って世界樹から出来てんだったっけ……?」
ロッタの質問に思い出しながらそう返すと、ヴォイトはそう言いながら合わせて聞いてきたので、僕は頷いて応える。
「……世界樹って言うとディセンダー…そしてその木刀は世界樹から出来たもの……まさかディセンダーと同じ力がある、とか……?」
「……分からない。詳しくは世界樹のみぞ知る、てことかな…?」
――結局、深く分からず仕舞いで話は終了し、僕達は宿屋で休んだ翌日、ジュード達に挨拶と礼をしてバンエルティア号へと戻る事になった。
……ただ…やけになんかが自分の体の中にある感じと、アルヴィンがよくバンエルティア号が停船している場所を聞いてきたのが気になっている。
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