曇天に哭く修羅
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第二部
賭けをしよう
前書き
_〆(。。)
五人がテーブルを囲む。
「事情を聞いても?」
《立華紫闇》が問う。
《エリザ・ネバーエンド》が答えた。
「愚妹がレックスとの婚約に反発して家出をしたから連れ戻そうとしているのよ」
「へーおめでとうレックス」
《イリアス・ヴァシレウス・グラディエ》は幼馴染みの《クリス・ネバーエンド》と《レックス・ディヴァイザー》の婚約を祝福。
「ありがとうイリアス」
レックスは顔を赤くした。
「政略結婚だけどレックスさんが相手なら別に良ーんじゃねーのかな?」
紫闇からすれば断るのは勿体無い。
引くほど美形でメチャクチャ強い上に性格も紳士で悪くなさそうだ。
「私にとっては嫌がらせよ」
そこまで嫌がられる理由が有るのか。
「確かにこいつは見た目も性格も良いし、家事万能で頭も良ければ運動だって出来る。スペックなら間違いなく完璧だわ」
イリアスは目を瞑って聞き流す。
彼はよく理解しているのだ。
レックスが嫌がられる理由を。
「でもこのレックス・ディヴァイザーはね。超が付く真性のマゾヒストなのよッ! こんな超絶ド変態と婚約するなんて絶対嫌に決まってんでしょうがッ!!」
紫闇は信じられなかった。
この完璧超人に思えるレックスが。
「ふふふふふふふふっ……! やはりクリスから浴びる罵声は素晴らしいですね! あぁぁぁぁ、いけないのにエクスタシィしてしまうぅぅーーー!!!」
(やべぇ。前言撤回だ。ド変態じゃねぇか。そりゃあ結婚したくないわな)
紫闇は同情してしまう。
「確かにレックスはマゾ豚の変態野郎。気持ち悪い男と言って差し支えないわ」
「エリザ。失礼ですよレックスに」
イリアスが咎める。
「その通り。私はクリス限定のマゾ。エリザでは気持ちよくなれません」
「黙りやがれこの畜生」
◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆
エリザはクリスに冷たい目を向ける。
「この婚約は家の為であると同時に貴女のため。それを受け入れないのは何故?」
レックスはエリザも認める優秀な人間。
【古神旧印】の七割が完成しており国内でも指折りの実力を有した【魔術師】
「一緒になって彼を支える。一人の女としてね。それがクリスの幸せなのに何故?」
更にエリザは続けた。
「世界中の魔術師、その頂点に立つ。そんな夢はさっさと諦めた方が良いわ」
紫闇は理解する。
クリスがエリザを敵視する理由を。
(第三者でも腹が立つわ)
直接言われるクリスは言うまでもない。
「ふっざけんな! 私はもうあんたに見下されてるだけの女じゃないわよッ!」
対するエリザは動じず。
「勘違いよ。真に得たものなんて有りはしない。いまのままである限り、貴女は私に遠く及ばないのだから」
紫闇もイリアスも覚えが有った。
人間をゴミのように見る目。
「能無しで誇りの無いクズ。それがクリス・ネバーエンドの本質。どうして我が一族に生まれてきたのかしらね」
自分のことで無いにも関わらず、紫闇は怒りが限界を超えそうだった。
「そこまでにしておけ」
紫闇が声の方を見るとイリアスは不快なことを隠さずエリザを見ていた。
「何故イリアスが味方を……惚れたの?」
「妹みたいな娘にそれは無い」
「ならば何故かしら?」
「それは立華君も同じだと思うぞ」
「へぇー二人ともクリスの側にね」
紫闇は不調だったとはいえ【夏期龍帝祭】で負ける一歩手前まで追い込まれた。
「クリスは俺が認めた好敵手だからな。そういう奴を馬鹿にされると腹に据えかねる」
闘技者として許容できない怒りを見せる紫闇の意見にエリザは何処吹く風。
「馬鹿にするのを止めない」
「と言ったら私がお仕置きかな」
イリアスはにこやかに告げた。
その言葉にレックスが反応。
凄まじいプレッシャーを放つ。
エリザ、クリス、紫闇の三人は体が沼に嵌まったように動けない。
流石にイリアスは平気だが。
「私がイギリスから亡命した時よりもまた強くなったねレックス。ならこうしないか?」
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
イリアスの提案。
先ず紫闇とクリスが選抜戦を勝ち抜く。
そして親善試合に出場。
シングルスでの団体戦なので二人はレックスかエリザと一対一で戦う。
紫闇達が勝てば婚姻は無し。
片方でも負ければ婚姻成立。
エリザは不満そう。
しかしレックスは納得している。
彼の顔は何処か悲哀が有った。
「シアン! あんたはレックスよ! 私は今回こそエリザをブッ壊す!」
「俺はあんたが気に入らない」
紫闇はレックスの心に諦念、あきらめしかないことが気に食わなかった。
「私もです。紫闇とは相性が悪い方ですよ」
「だからこそ戦わずに居られないんだろう」
イリアスの前でエリザとクリス、紫闇とレックスが火花を散らして室温を上げる。
後書き
_〆(。。
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