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戦国異伝供書

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第八十話 鬼若子その七

「一気に仕上げるものじゃな」
「だからですか」
「それでじゃ」
 まずはというのだ。
「攻めるぞ」
「わかり申した」
「では皆の者出自じゃ」
「さすれば」
 誰も反対しなかった、こうして元親は国親の葬儀を終えるとすぐに出陣した、このことを受けてだった。
 本山家も慌てて戦の用意をする、だが国親が死んだことは彼等も聞いていてそれで家の中で戦の用意をしながらあれこれと話した。
「信じられぬ」
「まことのことか」
「もう来たというのか」
「何と速い」
「やがて来ると思っていたが」
「しかしだ」
「もう来るとは」
 こう口々に言うのだった。
「まだ長曾我部殿の喪は開けておらぬぞ」
「葬儀が終わっただけじゃ」
「それを終えてすぐにか」
「すぐに来たというのか」
「何と型破りな」
「幾ら戦国の世とはいえ」
「信じられぬ」
 兵士達だけでなく本山家の将帥達も口々に言う。
「この度の長曾我部家の主殿はそうした御仁か」
「すぐに攻めて来られる御仁か」
「如何なる時も」
「機を逃さぬか」
「そうした御仁か」
「姫若子と言われたが」
 元親のこの仇名の話も出た。
「全く違うな」
「その様じゃ」
「一気に来られるとは鬼か」
「鬼の様に強い御仁か」
「そうなのか」
「長曾我部殿は」
 彼等は口々にだった、元親を恐れる言葉を出した。そうしてそのうえでこれからのことを考えていったが。
 戦いになることに信じられぬという思いと元親への恐れで心が満ちていてだった、どうしても戦う気持ちになれなかったが。
 彼等の前に長曾我部家の紫の軍勢が出て来た、その彼等を見てだった。彼等はその戦意をさらに失った。
 その状況を見てだった、元親は話した。
「敵は戦う気にない」
「左様ですな」
「敵は戦う気がありませぬ」
「見てもわかる通りに士気がありませぬ」
「全くです」
 それこそとだ、家臣達も口々に話した。浦戸のその城を見て。
「我等が来て戸惑っております」
「まさかもう来るとは思わず」
「そしてですな」
「戦う用意は出来ておらず」
「そしてですな」
「士気もほぼありませぬ」
「あの様な城は攻めるまでもない」
 元親は極めて冷静に述べた。
「わかるな」
「ではここは」
 親貞が言ってきた。
「使者を送り」
「うむ、誰の命も取らぬからな」
「城を明け渡せとですな」
「告げる」
「そうされますか」
「それでよい、士気が落ち戦う気がない軍勢はじゃ」
 それこそというのだ。
「戦うまでもない」
「では、ですな」
「愛車を送って」
「そうして降ればよい」
「その様にされますか」
「左様、では使者を送る」
 元親はこう言ってだった、実際に城に使者を送った。すると城の者達は皆助かると聞いて誰もが使者の言葉に頷き。 
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