一緒にいてくれたので
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第三章
「やっぱり」
「ああ、売ろうな」
「私達のお家があるし」
「家具も始末して」
「そしてね」
「キャリーはうちに来てもらう」
大輔はあらためて猫の話をした。
「そうしてもらう」
「それじゃあね」
妻も頷いてだった、そうして。
キャリーは二人の家に来た、見ればキャリーもかなり歳だった。
「十三年生きてるからな」
「やっぱりね」
「ああ、かなり歳だな」
「そうよね」
「もうそれは仕方ないな」
大輔はキャリーが家に来て彼の年齢をあらためて思って妻に話した。
「親父、お袋と一緒にな」
「キャリーも歳を取ったのね」
「ああ、けれどな」
それでもとだ、大輔は妻に確かな声で言った。
「キャリーはずっと親父とお袋の傍にいてくれたんだ」
「最後までね」
「そして二人を笑顔にさせてくれたんだ」
「お義父さんもお義母さんもいつも笑顔だったわね」
「キャリーを見てな、そうしてくれたから」
「それならね」
「今度は僕達が一緒にいよう」
こう妻に言うのだった。
「キャリーの傍に」
「そうするべきよね」
「親父とお袋の人生の最後を明るくしてくれたんだ」
「なら今度は私達がキャリーを明るくしてあげないとね」
「そうだよ、じゃあ」
「キャリーの最後の時まで」
「一緒にいよう」
こう言ってだった、家族でキャリーと一緒に住む様になった。キャリーは大輔達と一緒に住む様になったが。
家族全員に懐いていた、それで大輔は彼にブラッシングをしながら尋ねた。
「大輔、幸せか?」
「ナア」
喉を鳴らしながらの返事だった。大輔はその返事を聞いて目を細めさせた。
「幸せならいいな、最後まで一緒だからな」
「ニャア」
キャリーはまた鳴いて応えた、そのうえで大輔と共にいた。それは今の彼の言葉への明るい返事なのは明かだった。それで大輔は笑顔でキャリーへのブラッシングを続けたのだった。その時までそうしようと思いつつ。
一緒にいてくれたので 完
2020・3・23
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