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一緒にいてくれたので

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第一章

                一緒にいてくれたので
 石原大輔は家に帰って妻の千春に話した。
「親父はもうね」
「やっぱり」
「うん、癌が進んでいてね」
 一六七の長身ですらりとしたスタイルで黒髪を奇麗にブローにした妻に話す、微笑んでいる感じの口元とはっきりとした目それに白い肌は三十代後半になった今でも魅力的で背は一七五あっても髪の毛がすっかりなくなったが穏やかにしても冴えない外見の自分とは釣り合わないまでに奇麗だと思っている妻にそうした。
「親父もそう言ってるよ」
「そうなのね」
「それでお袋も」
 大輔は今度は自分の母のことも話した。
「歳だからね」
「お二人共なのね」
「仕方ないさ、もう二人共歳だから」
 それでとだ、大輔は妻に項垂れつつも言った。
「八十超えてるんだよ」
「お二人共」
「だったらもうね」
「仕方ないのね」
「それでだけれど」
 大輔はテーブルに向かい合って座っている妻にさらに話した。
「キャリーのことだけれど」
「お義父さんとお義母さんが可愛がってる子ね」
「そう、あの子をどうするか」
「引き取ればいいでしょ」
 千春は夫に即座に答えた。
「そうしたらね」
「そうしていいのかな」
「いいわよ、だってお義父さんとお義母さんがね」
「いなくなればか」
「あの子だけになるでしょ」
「あの家にな」
「だったらね」
「うちで引き取るか」
「そうしましょう」
 こう夫に提案した。
「そうしましょう」
「奥さんがそう言うなら」
 それならとだ、大輔は妻の言葉に微笑んで応えた。
「僕も嬉しいよ」
「あなたは引き取りたいって思ってたのね」
「もう十三年、二人がペットショップで買ってから一緒だったし」
「お義父さんとお義母さんの傍にいてくれたから」
「二人にとっては子供だったからな」
「血はつながっていなくても」
「そうだったからね」
 それだけにというのだ。
「あの子は」
「大事にしないとね」
「だったら」
「そうよね、じゃあね」
「二人がいなくなったら」
「うちで引き取ってね」
「うちで育てるか」
「そうしましょう」
 二人でこう話してだ、そしてだった。 
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