魔法科高校の劣等生の魔法でISキャラ+etcをおちょくる話
しおりを利用するにはログインしてください。会員登録がまだの場合はこちらから。
ページ下へ移動
第二百四十六話
『俺は老いない。だからここで、あるいはどこか別の場所で彼女らを守り続けるよ』
「老い……………か…………」
クロエに服を着せてやりリビングに向かわせ、一夏は地下へと向かった。
その一室の椅子でポツリと呟いた。
「俺は………老いない。箒は……俺より永く生きるかもしれない……でも……」
一夏の脳裏に親しい人達が浮かぶ。
「なぁ、奏」
『どうした。ユートピア」
一夏の陰から奏が顔を出す。
「吸血鬼が自殺する理由ってさぁ」
「単に生に飽いたってのが多いが、愛する者との死別も多い」
「そっかぁー」
スタっと陰から出てきた奏が一夏が座る椅子の後ろに立つ。
「こえーのか?」
「ああ。怖い」
一夏が手を前に突きだして、何かを捻るように動かした。
ガゴン…という音がして正面の壁が割れる。
出てきたのは鏡。
否、ガラス。
その向こう側の部屋の灯りが灯り、カプセルが照らされる。
「彼女らの話をしたんだ」
「ああ、聞いていた」
「それで咄嗟に出た言葉が俺の心を締め付けた。自分の口から出た言葉が」
「考えないようにしていたものな」
「そうだね……。束さんは……なんとかしそうな気がするな。
でも、姉さんや円香。エレン、リムは…」
「死ぬだろうな。お前より早く。確実に」
「うん……」
一夏の膝の上に光が集まり、ずしりと重さが発生した。
「ますたー」
量子展開した有機素体に憑依した橙が一夏に背を預ける。
「橙」
「おちつこ? 今考えても意味ないよ」
「わかってる。わかってるけど…」
一夏がウィンドウを開く。
「クローン、義体、テロメア修復、吸血鬼化、コールドスリープ………。
『人間を』生き長らえさせる方法はいくらでもある。
問題は先送りでもかまわない」
「でも、それを考え、実行しようとする自分に嫌気がさしてもいる。でしょ?」
「かなわないなぁ。お前には」
「ますたーがこの世界に生まれ落ちて、一番長い付き合いだもん」
一夏が膝の上の橙を撫でる。
橙も一夏の胸元に頭を擦り付けて応える。
「………『箒と束さんのために』なんて責任転嫁までも思い付いてしまう」
「いつになくネガティブだね」
「なんでだろうな。いつもならここまで考え込まないんだが」
「そりゃぁお前がネガティブな考えに向かった時は誰かが止めてたからな」
「ああ、そうか…」
「ますたーは自分が思ってるより、周りに支えられてるんだよ?」
「わかってるさ…そんな事。でもね」
「私たちはそんなに頼りないか? 一夏?」
一夏の背後、開け放たれた扉の向こうから声がした。
「私はな、お前と生きていたいぞ。例えどんな手を使っても」
椅子が回る。
「姉さん……」
扉の向こうに居たのは千冬だった。
「俺のコアを通してアリスに繋げた。後は姉弟で話し合え。お前に死なれちゃ血が飲めなくなる』
奏は影に消え、橙は有機素体を収納した。
無機質な部屋に一夏と千冬だけが残る。
「一夏。悩むな」
「なにをさ」
「何もかもだ。いいじゃないか私たちの体を弄ろうと」
「それは……それは俺達が一番やっちゃいけない事でしょ?」
一夏が後ろのカプセルを指す。
「いいや。違うぞ」
千冬は一夏が座っている椅子の所まで行くと、一夏を抱き上げた。
「私は、お前が居るから今まで生きてきた。父さんと母さんが居なくなっても。
唯一残されたお前が居るから。
私はお前の為なら命を賭せる。お前の為に命を使うならば死んでもいい。
だから、お前の為なら何を以てしても生きていける」
それを言うと、千冬は一夏を抱いたまま椅子に腰かけた。
クルリと椅子を回してカプセルの方を向く。
「彼女らを作った研究者と、お前は違う」
「同じさ。私利私欲のために」
「違う」
「どこが」
「全てがだ。お前が私を生かそうとするのは寂しいからだ。
お前が今悩んでいるのは優しいからだ。奴らは彼女らを造った事に何も感じていないだろう」
一夏が何かを言おうとした瞬間、千冬が一夏の口をふさいだ。
唇で。
「実はな、私もお前と同じ事を考えていたんだ。
明日にでも、束に相談する積もりだった。寿命を伸ばす方法は無いかとな」
「…………………いつか人の世界で生きられなくなるよ?」
「その時は山奥でお前を愛でて暮らすさ」
「だから、何も問題はない。私はお前と生き続けるよ。それが例え永遠でも」
ページ上へ戻る