魔法科高校の劣等生の魔法でISキャラ+etcをおちょくる話
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第二百四十五話
作業の途中で束とクロエは上に上がり、地下には一夏だけが残された。
「ん━━━━━━━ッ! ふぅ」
伸びをして、背もたれにぐでっともたれ掛かる。
「あがろ…」
浮遊し、スーっと部屋を出ていく。
エレベーターに乗り地上へ。
リビングに入るとソファーに座った束が人差し指を口に当て、静かにとジェスチャー。
クラリッサが奥を指差す。
そちらに視線を向けた後、一夏がクスッと笑った。
巨狼と大狐のお腹のもふもふに埋もれるようにして円香、ラウラ、クロエが眠っていたからだ。
束の対面に座っていた千冬が一夏に手招きして、膝の上に座らせた。
そして一夏の顎の下を擽る。
「お疲れ様、いっ君。……………聞いてないね」
「ふにゅ…うにゃぁ~ん」
一夏は猫のように千冬の首もとに頭を擦り付ける。
千冬はそれを見て嬉しそうに一夏を撫でる。
「一夏、話があるのだが…」
「ふにゅ?」
「クロエをどうするかだ」
「どうって?」
「ここで世話をするのか、それともシュヴァルツェアハーゼで面倒をみるかだ」
「本人に聞けばいいじゃん」
それだけ言言うと、一夏は猫化した。
「みゃぉ~ん…」
そんな事どうでもいいから甘えさせろと言わんばかりに千冬に甘えだす。
「……ま、それもそうか」
夏の西日の眩しさで箒が目を覚ました。
のそり、と狐の首を上げキョロキョロと辺りを見渡す。
まず自分とめいぷるのもふもふに埋もれながら寝息をたてる円香、ラウラ、クロエが目に入る。
次に目に入ったのは手足の無い一夏を愛しそうに抱いてソファに腰掛ける千冬。
千冬と目が合う。
千冬は少し照れるように笑って返した。
尻尾でラウラの頬をくすぐると、煩わしそうに顔を背ける。
魔法ともふもふ尻尾でラウラをめいぷるに押し付けると箒が立ち上がった。
その巨体をゆっくりと進ませ、後ろから回って千冬が座るソファの隣に頭をのせた。
「きゅぅ~ん……」
「お前も撫でて欲しいのか?」
「きゅぅん」
千冬が一夏を抱えていたのと反対の手でわしゃわしゃと箒の頭を撫でる。
「変わらんな。お前も」
「うきゅぅ…」
「いや、いい。お前はお前のままでいろ」
「きゅぅ」
周囲を山々に囲まれた直江津とはいえ、夏の日は長い。
まだ明るい窓辺のカーペットの上。
めいぷるのもふもふのお腹で寝ている三人を一夏が揺する。
「円香、ラウラ、クロエ。起きて。晩御飯食べるよ」
「んっ………おにーちゃん……」
体を起こした円香が大きな欠伸をした。
ふにゅぅ、と気の抜けるような声の後、辺りを見渡す。
「円香。ご飯」
「ん…」
円香がテーブルの方に行く。
残った二人の肩を一夏が揺する。
「む……兄様」
「…………お早うございます。お兄様」
「おはよう。晩御飯できてるから食べるよ」
一夏が二人をテーブルに座らせた。
一夏、クロエ、束、千冬、ラウラ、クラリッサ、箒、円香の八人で座る。
真四角のテーブルの一辺に二人が座り、賑やかな食事が始まる。
「兄様のリゾット美味しいぞ」
「ん? ありがと。ちなみにこれクラリスが分量ミスって炊いたご飯を食べれるようにしたやつだよ」
ラウラの若干冷たい視線がクラリッサに刺さる。
「ふふっ…クラリッサ。だからお前もやっておけと言っただろう?」
千冬がからかうようにクラリッサを咎める。
千冬がラウラに料理を教えている間、後ろからニヤニヤ眺めているだけだったツケが回ってきたのだ。
「いや…その…クロエちゃんいたしこっちの方がいいかなぁって」
なおこれは事実である。
分量は間違っていたが……。
「うまく返したな我が副官」
「私がどうかしたのですかラウラ?」
「ん? いや。大丈夫だぞクロエ」
そこで箒が玩具を見つけたと言わんばかりに口を開いた。
「まぁ、一夏が"血療"したのならその心配は無用かもしれないがな」
「うん。私も起きたその日の夕飯ふつうにお兄ちゃんとたべたしね」
「?」
クラリッサはある程度の事情を伝えられていたのでクロエの状況を把握している。
さっき目覚めたばかりということも。その体が今まで一度も動かなかったということも。
「一夏の…吸血鬼の血はいわばエリクシールだ。量にもよるが、飲めばどんな病も傷も癒え、呪いを跳ね返す。
更に肉体を強制的に賦活化する。今クロエが動けているのはそのお陰だ」
「………それって栄養ドリンクとか薬物みたいに後でヤバい反動がくるんじゃ…」
「ヤバいぞ。物理的な副作用が一切無いが本質は闇の力だからな。
感情の起伏によっては怪異……と言っても通じないか…えっと……闇落ち?しかねない」
「おい箒、そんな中二チックな言い方をするな」
「事実だろう? ユートピア」
箒がからかうように一夏の名を呼んだ。
「はぁ…。だから一応クロエは肉体的には俺達と同じ事ができる。
とは言え今日初めて体を動かしたんだ。色々助けてやらないといけないのも事実だ」
「私は大丈夫ですよ」
「いいから、お前はおとなしく世話されとけ」
食後、一夏がクロエを風呂に入れる事になった。
ついでに気功を教えるためだ。
クロエの気功を廻し、体を洗う。
「……………………」
「おい。俺の下半身を凝視するな」
「束お姉さまが、男は女の裸を見ると反応する物だと」
「それは人間の話。俺には関係ないの。ほら、髪洗ってやるから。前向け」
「はい。お兄様」
一夏がクロエの髪を洗ってやり、湯船に浸かる。
湯船に黒と銀の髪が広がる。
その中で、クロエが一夏の肩に触れた。
「…………………………」
「気になるのか?」
一夏の肩の肉と、サイコシャードを人工被膜で覆った義手の間には僅かながら隙間がある。
「はい。多少」
「ISの実験で手足がな。元に戻らない物だから切除した」
「そうですか」
義手が浮いている近くの肌は他と変わらず吸い付くような白い肌だ。
「一度、全ての義手を外していただけませんか?」
「かまわないよ」
倒れないよう飛行魔法で体を水中に固定した。
サイコミュによる感応操作と硬化魔法による義手の固定を解除。
魔法で動かされた義肢がざばっとお湯から出て、浴槽の隣に置かれた。
「こんな感じさ」
クロエの目に四肢の無い体が映る。
「その手足は、再生しないのですか?」
「手足のほとんどが封印されていたような物でね。
それを壊せなかったから、仕方なくこうしてるんだ。
幸い、手足の情報までは失われなかったから、サイコシャードにサイオン体を重ねて動かせてるよ」
一夏の右肩が仄かに光る。
その光は透明な管の中を広がるように伸び、やがて一夏の腕を形作った。
「この腕は、俺の肉体に重なっていたはずのサイオン体の腕…要するに魂の腕だ」
光る腕が、クロエの頬に触れた。
「不思議な、感触ですね」
「触られていないのに触られている感覚があるだろうね」
サァッ…と腕が消えていく。
「お兄様」
クロエが一夏を後ろを向かせて抱き寄せた。
「クロエ?」
「お兄様は、自分が不自由な体だから私を助けたのですか?」
「俺の手足が義肢なのは関係ない。仮に俺が五体満足でも助けたよ」
「では何故?」
「お前が妹だからだよ。同じデザインベイビーだったから。だから助けた」
「私以外の妹達は?」
「ラウラは………どうだろう。助けたと言えるんだろうか」
「あの子は、嬉しそうにしています」
「そう、だね」
「他の子はどうなのですか?」
「お前と、ラウラと、円香。それ以外はこれ以上どうしようもない。
心がないんだよ。だから彼女達は何も望まない。望めない。
だから俺達にできるのは、これ以上彼女ら……いや、俺達みたいなのが産み出されないように施設とデータを破壊すること。
彼女らが何かしらに利用されないよう保護すること」
「そうですか……」
「ここの地下に全てのローレライシリーズとメシアイミテーションシリーズを安置している。彼女らをどうこうする気はない。彼女らの肉体が置いて死ぬまで、カプセルから出す気はないよ。絶対に」
「お兄様が老いても、ですか?」
「俺は老いない。だからここで、あるいはどこか別の場所で彼女らを守り続けるよ」
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