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戦国異伝供書

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第七十九話 初陣その十

「励むとしよう」
「さすればそれがしも」
 親貞も供をした、そうしてだった。
 元親は彼だけでなく弥七郎達も入れて鍛錬を続けた、そうして時が来るのを待っていたがその様な中でだった。
 国親は重臣達に言った。
「どうも近頃身体がな」
「優れぬのですか」
「そうなのですか」
「そして日に日にな」
 国親はさらに言った。
「そうなっておる気がする」
「左様ですか」
「では薬を」
「優れた医者を呼びます」
「よい、どうもこれはじゃ」
 身体の具合が悪くなってきている、このことはというのだ。
「天命じゃ、どうやらわしの寿命はな」
「これで、ですか」
「終わりだと言われますか」
「その様に」
「だから医者も薬もよい、ただな」
 国親は家臣達の動きを止めて言うのだった。
「一つ頼みがある」
「頼み、ですか」
「一体何でしょうか」
「そのお願いとは」
「弥三郎の初陣じゃ」
 言うのは嫡男である彼のことであった。
「時が来た、まさかわしが死んでから初陣とはせぬな」
「はい、それは」
「それがし達もそれはと思っていました」
「時が来ればと」
「その様に」
「そうじゃな、そしてその時はな」
 まさにというのだ。
「今じゃ、だからな」
「それで、ですか」
「若殿の初陣を」
「これより」
「用意をせよ、そして」
 国親は重臣達にその言葉を続けた。
「弥三郎を見るのじゃ」
「その時の若殿を」
「殿はいつも言っておられますが」
「その場での若殿のお働きをですか」
「我等はこの目で」
「見るのじゃ、さすればわかる」
 その時にというのだ。
「弥三郎の器がな」
「四国すら手に入れられる方」
「そのことをですか」
「我等は、ですか」
「必ず見る、そしてな」
 そのうえでというのだ。
「その弥三郎殿を割裂けてもらいたい」
「それでは」
「殿の申し出とあらば断わってあなりませぬ」
「断じて」
「我等は長曾我部家の臣ですから」
「そう言ってくれるならな」
 ならばだというのだ。
「よいな」
「はい、それでは」
「是非です」
「若殿の初陣の用意をします」
「そしてです」
「若殿のお働き見せて頂きます」
「是非共」
 家臣達も応えた、そしてだった。
 すぐに元親の初陣の用意が為された、そしてだった。
 このことは国親から元親にも直接告げられた、国親はこの時に言った。
「よいか、その時はな」
「はい、それがしはですな」
「大将としてな」
 軍のそれでというのだ。
「戦え、お主ならな」
「問題なくですか」
「うむ」
 まさにというのだ。 
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