| 携帯サイト  | 感想  | レビュー  | 縦書きで読む [PDF/明朝]版 / [PDF/ゴシック]版 | 全話表示 | 挿絵表示しない | 誤字脱字報告する | 誤字脱字報告一覧 | 

おっちょこちょいのかよちゃん

しおりを利用するにはログインしてください。会員登録がまだの場合はこちらから。 ページ下へ移動
 

42 剣を持つ者

 
前書き
《前回》
 かよ子達は隣の家に住むおばさんの娘・さりの送別会を行う。その後、三河口は夏休みに札幌に住むさりの姉・ありの所に行く事になる。そしてかよ子は猛勉強の末、期末テストを迎える!! 

 
 期末テストが終わり、かよ子達は肩の荷が降りた気分だった。
「ふう〜、やっと終わったねえ〜。アタシゃ全然解かんなかったよお〜」
「まるちゃん、普段勉強してないからじゃ・・・」
 たまえはまる子に突っ込んだ。
「だって疲れてるって言ってんのにお母さんったら、さっさと勉強しなさいって怒るんだよお〜、お陰でやる気なくなっちゃったよ」
 まる子のめちゃくちゃな言い訳にたまえもかよ子も何も言えなかった。そんな時、かよ子は大野と杉山の会話を聞く。
「なあ、大野、お前、日本平の花火大会、行かねえか?うちの姉ちゃんも友達と行くんだ」
「ああ、俺も丁度家族で行く事にしてたんだ」
「そりゃいいな」
(す、杉山君・・・。大野君と花火大会行くんだ、いいな、私も会えたらいいな・・・)
 かよ子は日本平の花火大会に期待を膨らませた。また、その会話は冬田も盗み聞きしていた。
(大野君、日本平の花火大会行くのねえ・・・。私も行ってみよう〜)
 冬田はその花火大会で自分の浴衣姿を見た大野に「お前、すげえ似合ってるぜ!」と言われて照れる所を妄想した。

 パレスチナの日本赤軍本部。房子はその場所にできた光と闇が混ざったような混沌とした穴にいた。
(私達はこのパレスチナで攻撃を仕掛けて、日本を変えるチャンスを待っていた・・・)
 この穴は異世界との出入り口となっている。その時、声が聞こえた。
「重信房子。また我が世界の者を使いに出して欲しいと?」
「はい、」
「だが、これまでに幾人の者が抹殺されておる。次こそ成功なるのか」
「はい、方針を変えます」
「そうか、では、こちらもそろそろ主戦力を投入する」
 声の主はそう言った後、二人の男が穴を通して現れた。
「私はアドルフ」
「そして私はべニートだ!」
「この二人は貴様らの世界から消えた後、我が世界でも相当の実力を持っている。簡単には消せまい」
「そうですね、ありがとうございます。では、まずは・・・」
 房子はアドルフとべニートにこれからの作戦を伝えた。

 三河口が通っている高校でも日本平の花火大会で話題が持ち切りだった。
「ねえねえ、奏子は三河口君と行くんでしょ?良かったね!」
 友達の瞳に言われて奏子は恥ずかしくなった。
「う、うん・・・」
「いいね、楽しみだね」
 さらに友達である本多夏美(ほんだなつみ)にまで羨ましがられた。
「うん・・・」

 テストの結果はかよ子はどの科目も何とかいい点だった。
「良かった、おっちょこちょいしなくて・・・」
 特に国語は82点と最高得点の記録を更新した。他の科目もなかなかの出来だった。かよ子はまる子にたまえ、とし子と一緒に帰ろうとしていた。
「ああ・・・」
「ま、まるちゃん、どうしたの?」
「テスト、全然出来なくてさあ~、お母さんにめちゃくちゃ怒られちゃうよお~」
 まる子をどう慰めていいのかわからないかよ子達であった。かよ子はその後、皆と別れて母にテストの答案を見せた。
「かよ子、頑張ったのね。お疲れ様」
「うん」
「浴衣を出してあげたわ」
 かよ子の母は娘の水色基調で赤や黄色、青など様々な色の水玉模様の浴衣を出し、かよ子に試着させた。
「うん、ありがとう!」
「これで、花火大会も楽しみね」
「うん!」

 日本赤軍の一員・丸岡は房子の命令でベニートを連れて広島市へと訪れていた。
「ここに俺達の計画を脅かす危険な道具があるという」
「ゲンバーク以上かね?この町はかつてその被害を受けた事があるハーズだ」
 べニートが聞く。
「ああ、その通りだ」
「では、出動しよう」
 二人は剣を持つ者を捜索し始めた。そしてくまなく探した所、一軒の民家を見つけた。
「すみません」
「はい、はい」
 少し年老いた女性が応対した。
「この家に『剣』ってありますか?」
「はあ?」
「とぼけても無駄だ!この家に終戦直後に不思議な剣を貰った者がいるって突き止めてんだ!」
 女性は震えた。丸岡はこの女性の反応から間違いはなかったと思った。
「な、何の事かしら?」
「これ以上シラを切るつもりならこちらから捜索する!」
 丸岡達は勝手にその家に上がりこんだ。
「ちょっと、困ります!しょ、正太!」
 女性は息子の名前を呼んだ。丸岡は正太という男の部屋に行き、遭遇した。
「お前か、剣を持つ者は!」
「な、何だ、お前らは!!」
「『剣』を貰いに来た者だ」
「渡すもんか!」
 正太は剣を取り出し、対抗する。正太は剣を一振りした。この剣は正太が原爆の攻撃から辛うじて生き延びた時、厳島神社の神から授かったものであり、その剣にはただ斬る以外にも竜巻や嵐を作り出したり、相手の攻撃を受け止めてそのまま反射させる事ができる。
「無駄だ。俺の矛盾術で何もできなくさせてやる」
 丸岡はその剣が今までできた事をできなくさせるようにした。言わば、その剣を使用しても能力を使用する事もただ斬る事もできないのである。
「お前はこれで終わりだ!」
 丸岡はピストルを出して発砲した。正太は剣で銃弾を撥ね返す能力を行使しようとしたが、丸岡の矛盾術でできず、七発、正太の頭や胸、腹に当たった。
「へへ、清水にいる少女(ガキ)の杖よりも容易く奪えたな」
「正太!ちょっと、アンタら、何しとるんじゃけん!?」
「おっと、この婆さんも静粛しておかないとな」
「私がヤールよ!」
 ベニートが呪文のように喋り出した。
「恐ろしき黄人(おうじん)よ、倒れろ!」
 ベニートの呪文で正太もその女性も急に燃焼した。
「これで終わりだ。フハハハハハ」
 ベニートと丸岡は剣を手にして家を出る。
「そしてこの家系も皆、消滅させとけ」
「おう、恐ろしき黄人のあの家系を消滅させよ!」
 ベニートが唱えた。その場では何も起きなかったが、その剣の持ち主の血縁関係に当たる親戚が急死したのは確かである。そして正太の家は一瞬で炎上した。丸岡は近隣の住民に気づかれぬように認識術で自信とベニートが見えないように設定した。
「剣は手にした・・・。これを本部に持ち帰れば計画は一つ達成だ」
 周辺の住民が火事で大慌てする中、丸岡は計画達成に喜んだ。

 その火事の様を、一人の女子高校生が遠くから見ていた。その女子も静岡県に住むとある男子と同様の異常な感触を覚えるのである。

 夕暮れになり、かよ子は両親と共に浴衣に着替えて日本平の付近へと向かった。
「おっとっと・・・」
「もう、ゆっくり歩きなさい、本当におっちょこちょいなんだから」
「う、うん」
 三人はバスを乗り継ぎ、日本平に到着した。現地は既に混雑しており、杉山達を探すのにはこれでは無理だとかよ子は感じた。そんな時、羽柴夫妻とも出会った。
「あら、こんばんは」
「ああ、どうも、こんばんは。あれ、健君は?」
 かよ子の父が聞く。
「学校の友達といますよ。どうやら誘われちゃってね、その誘った子も女子なんですよ」
「女子・・・、か・・・」
 かよ子は三河口を誘ったという女子の行動力に尊敬したくなった。自分にももう少し勇気があれば杉山を誘えたかもしれない、と思った。やがて、空は暗くなり、花火が打ち上がった。
「綺麗な花火ね」
「うん!」
(杉山君も今こうして大野君と花火見てるのかな・・・?)
 かよ子は好きな男子の事を考えた。

 そして違う場所では三河口は黄緑基調で木の葉柄の浴衣を纏った奏子と共に花火を見ていた。
「ここの花火は綺麗だね」
「うん!」
 奏子は三河口と一緒でとても嬉しかった。その時、一人の大仏のパーマの女子がうろちょろ歩いているのが見えた。桃色基調の浴衣を着ている。
(ん、あの子はかよちゃんの友達の冬田美鈴じゃないか。大野君でも探してんのか・・・?)
 三河口はとりあえず冬田は無視して花火の堪能を奏子と共に楽しんだ。

 冬田は人混みの中で好きな男子を探す。
(大野君、どこかしらあ・・・?)
 その時、冬田は途中である男子に声を掛けられた。
「あれ、冬田じゃないか!?どうしたんだい?」
 この声が大野だと冬田は嬉しかったのだが、呼んだのは長山だった。長山は妹の小春や両親と一緒だった。
「な、長山くうん・・・」
「どうして花火見ないで歩き回ってるんだい?」
「いや、そのお・・・」
「まあ、混雑してて危ないからここで一緒にいようよ」
「ええ、そうねえ・・・」
 冬田は結局長山の家族と一緒に花火を鑑賞する事になった。

 北勢田や濃藤も別の場所で花火を鑑賞していた。勿論二人だけでなく他の友達ともいた。
「それにしてもミカワは今楽しんでんのかな」
「まあ、そうじゃない。徳林さんの方が誘われたし、あいつも楽しみにしてたんだよね?」
 濃藤はに聞く。
「うん、きっとキスでもやってたりして」
 一同は吹きそうになった。

 大野と杉山はそれぞれの家族と共に花火を鑑賞する。
「最高の花火だな」
「ああ」
 杉山は今は物騒な日々とはいえ、こうした日常は失われて欲しくないと思うのだった。それについては大野も同意だった。
(『あいつ』もこの花火、見てんのかな・・・?)
 杉山はクラスメイトのおっちょこちょいな女子の事を考えていた。

 ブー太郎は妹のトミ子を高台の秘密基地へと連れて行っていた。
「お兄ちゃん、ここはどこだブー?」
「兄ちゃんが友達と造った秘密基地だブー。ここからでも花火が見えるブー」
 ここは日本平から離れているが、花火は見えた。
「うわあ、きれいだブー」
「それじゃ、基地に上がろうブー」
 兄妹は基地に上った。そこにはあの四人組もいた。
「おお、お前、ブー太郎でやんす!」
「あれ、お前達もいたのかブー!」
「ああ、日本平の方は人がいっぱいだからな。ここなら空いているし、特等席だと思ったんだ」
「確かにそうだな、ブー。今日は妹を連れてきたブー」
「トミ子って言いますブー。宜しくブー」
「宜しくね、トミ子ちゃん・・・」
 富田兄妹は「義元」の皆と花火を見るのだった。

 様々な色の花火が打ち上がる。かよ子達はその花火を楽しみながら時を過ごしていった。 
 

 
後書き
次回は・・・
「始まった夏休み」
 花火大会が終わり、かよ子は帰りに「あの男子」とばったり出会う。そして終業式、かよ子はまる子の大量の荷物を持って手伝いながら下校する。そしてパレスチナでは丸岡が奪取した異世界の剣が「あの世界」へ・・・。 
ページ上へ戻る
ツイートする
 

感想を書く

この話の感想を書きましょう!




 
 
全て感想を見る:感想一覧