戦国異伝供書
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第七十九話 初陣その五
「そうして領地自体を豊かにし」
「それを力にしてな」
「まずは土佐を手に入れます」
「そうせよ、ただ」
「一条家ですか」
「一条家は我等にとっては恩人じゃ」
「祖父殿を助けて下さった」
元親もこのことは知っている、兼序は岡豊城居城であるこの城を攻め落とされ家臣達と共に命からがらまだ幼かった国親を連れて一条家に身を寄せ一条家に助けられて再起した。このことを知っているのだ。
「それだけに」
「大恩がある」
「そうした家ですな」
「その家に対してどうするか」
「若し恩義に逆らえば」
その時はとだ、元親は述べた。
「それはよくありませぬな」
「天道に背くことになる」
「左様ですな」
「そこはな」
「それがしが、ですか」
「どうするかはな」
このことはというのだ。
「お主次第じゃ」
「そうなりますか」
「そこは考えよ」
「それでは」
元親はこのことについても父の言葉に頷いた、そうしてだった。
武芸にも学問にも励み相変わらず己を高めることに努力していった、そして。
弥五良も元服し吉良家の主となったうえで諱を親貞とした彼は共に槍の稽古をしてから兄に対して言った。
「兄上、その槍の腕ならです」
「戦の場に出てもか」
「はい、最早」
それこそというのだ。
「何の心配もありません」
「お主もそう言ってくれるな」
「事実なので」
「それで言うか」
「はい、馬もお見事で特に兵法が」
これがというのだ。
「それがしから何も申し上げることはありませぬ」
「ではな」
「はい、初陣の時は」
「思う存分活躍出来るか」
「それがしが思うに、ただ」
「戦はじゃな」
「何時何が起こるかわからないので」
だからだというのだ。
「そこはお気をつけ下さい」
「流れ矢にはじゃな」
「くれぐれも、それと土佐ではまだありませぬが」
ここで親貞はこの武器の話もした。
「鉄砲がありますが」
「噂には聞くな」
「阿波や讃岐を治めている三好家は結構持っているととか」
「そうじゃな」
「まああまりにも高いので」
「当家にはじゃな」
「土佐に入っても」
例えそうなってもというのだ。
「今ではとてもです」
「買えぬな」
「暫く当家には縁がないですな」
「それはそうじゃな」
「ですが」
それでもというのだ。
「鉄砲がよい武器であることは確かだとか」
「鉄砲の様に飛び道具でじゃな」
「しかも音が凄まじく」
鉄砲のそれがというのだ。
「その音で敵の軍勢を驚かせ」
「そして士気もじゃな」
「驚かせるので」
だからだというのだ。
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