両手のハンマー
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第三章
「皆のこと、そして俺自身のこともかかっているからな」
「お前も仕事がなくなるからな」
「若しドリルがなくなったらな」
「それじゃあ困るからな」
「お前自身の為でもあるな」
「あと俺もまずくなるからな」
工夫長も工夫達の中にいた、それで言うのだった。
「実はな」
「あれっ、工夫長もですか?」
「工夫長も仕事なくなるんですか」
「そうなるんですか」
「ああ、実はそうなんだよ」
工夫長は工夫達に話した。
「何しろ俺も工夫だからな」
「だからですか」
「現場が暇になるとですか」
「工夫長もクビですか」
「そうなりますか」
「ああ、そうなるからな」
だからだというのだ。
「ジョンには頑張ってもらわないとな」
「若しここで仕事がなくなったら」
「本当に次の仕事探さないといけないですからね」
「今度はどの仕事か」
「考えないといけないですからね」
「下手したらフロンティアの僻地に行かされてな」
工夫長はここでこんなことも言った。
「開拓はいいにしてもな」
「インディアン共と殺し合いですね」
「拳銃持って」
「獣もいますし」
「ここより厄介ですよね」
「ここの仕事も危険だけれどな」
そうした仕事だ、それで彼等も言うのだ。
「インディアンや獣はもっとやばいからな」
「そうですよね」
「そう思いますと」
「ここの方がいいですからね」
「何とかしてです」
「ジョンに勝って欲しいですね」
フロンティアにはアフリカ系も行くことが出来た、彼等は確かに差別されていたがアメリカ人だからだ。アメリカ人とは何か、それはアメリカ以外の国にルーツを持つ人間が当てはまりインディアンはそうでなかったと考えられていた時代だったのだ。
だからここで工夫の中に多くいるアフリカ系の者達も言ったのだ。
「フロンティアに行ってもですよ」
「僻地なんかに行ったら」
「それならですね」
「ここにいる時よりも辛いですから」
「ここは何とか」
「ジョンに勝ってもらいましょう」
「俺も工夫でいたいさ」
これがジョンの言葉だった。
「ならな」
「ああ、勝てよ」
「ドリルにな」
「機械にな」
「そうさせてもらうな」
こう言って勝負に入った、ジョンは両手のハンマーを使って凄まじい勢いで掘り続ける、それは普段の彼以上だった。
だがドリルもだった。
人とは全く違うスピードとパワーで掘っていく、それで工夫達も言った。
「凄いな」
「ああ、とんでもないな」
「化けものみたいだ」
「これが機械の力か」
「人の力とは違う」
「全くの別ものだ」
「こんなものがあったらな」
それこそというのだ。
「俺達のことなんてな」
「もう必要なくなるな」
「俺達は所詮用済みか」
「機械の時代がはじまるってことか」
多くの工夫達がこう思った、だが。
ジョンはドリルに負けじとどんどん掘っていく、それは決してドリルに負けておらず。
凄まじい勢いで掘っていく、工夫達はその彼も見て言った。
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