ヘタリア大帝国
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TURN34 開戦と共にその十四
「結構責任転嫁するタイプだよ、あれは」
「だろうな。となるとな」
「シャルロットさんしかいねえな」
「あの娘に出てもらうかい?」
「降伏文書にサインするだけだけれどな」
「嫌な役目だよ、自分の国の降伏文書に国家元首としてサインするのは」
ビルメは何処かシャルロットに同情して述べた。
「あたしがやってくれって言われてもね」
「嫌だよな」
「あんた今まで負けまくってるからわかるね」
またしてもだ。ビルメはフランスにずけずけと言いにくいことを言ってみせた。
「負けた側で講和のテーブルに着いてサインするのは」
「ああ。何度も何度もイギリスなりドイツなりオーストリアに負けてきたさ」
フランスはここではうんざりとなった顔でビルメに答える。
「いちいち数えきれない位にな」
「スペインにも負けてるね」
「前の戦争じゃ勝ったにしろ殴られまくったさ」
ドイツにだ。フランスはやられっぱなしだったのだ。
「だから知ってるさ。その屈辱はな」
「それをあの娘に背負わさせないといけないんだよ」
「辛いな。俺がサインするか、それなら」
「そうするかい?」
「まあ考えておくさ。俺はもう慣れてるからな」
嫌でも慣れていた。それだけ過去に負けてきたということでもある。
「戦争やって負けた方がずっと多いのは伊達じゃねえぜ」
「それ自分で言って楽しいかい?」
「楽しい筈ないだろ」
フランスはまたうんざりとした感じの顔になってビルメに答える。暗い顔で目が白くなっている。
「いつも自信満々で向かってボロ負けしてるんだぞ」
「ボナパルトの旦那も最後は負けたしね」
「あの時はいけると思ったんだがな」
「まあとにかく経験にはなってるね」
「ああ、降伏のサインならできるさ」
フランスは確かな顔に戻ってビルメに答えた。
「じゃあその時はな」
「ないことを祈るけれどね」
こうした話を二人でしていた。そこにだ。
シャルロットが来てだ。こう二人に言ってきたのだ。
「あの、ビルメさん」
「何だい?」
「よければですか」
やはり世間知らずで穏やかな感じでだ。シャルロットは言う。
「これから読書でもしませんか?」
「読書?」
「はい、詩の朗読なぞを」
彼女をそれに誘ってきたのだ。
「祖国殿や他の方々と共に」
「詩ねえ」
ビルメはシャルロットのその誘いにまずは首を傾げさせた。
だが彼女の目を見て悪意なぞ全くないことを見てだ。こう言ったのだった。
「別にいいけれどね」
「いいんですね」
「ああ。けれど詩ね」
「はい、オフランスの詩です」
「あたしでいいならいいよ」
詩なぞ読んだこともないがだ。誘いが来ればだった。
特に断る理由もないのでだ。ビルメは受けることにした。しかしだ。
何気にフランスを見てだ。目で尋ねた。フランスもだ。
目でここはシャルロットさんと一緒に読んでくれと言われてだ。それで頷くのだった。
それからシャルロットにあらためて言ったのである。
「で、どういった人の詩だい?」
「ランボーです」
「映画の主人公じゃないよね」
「そうした映画もあるのですか」
「ガメリカ映画だけれどね」
「ガメリカ映画は暴力的で野蛮とのことですので」
シャルロットは少し困った顔になってビルメに話す。
「爺やに見せてもらってないのですが」
「そうなのかい」
「はい。それでそのランボーの詩ですが」
「何処で読むんだい?」
「今日はお天気がいいので外でどうでしょうか」
「わかったよ。じゃあ祖国さんやセーシェルさんも呼んでね」
「読みましょう」
邪気のない笑顔で応えたシャルロットだった。そうして。
ビルメはシャルロットの詩の朗読に同席して彼女も読むことになった。その朗読の場に向かう途中にだ。
共にいるフランスにだ。そっと囁いたのだった。
「やっぱりね。どうもね」
「世間知らずだっていうんだな」
「天然っていうか。ちょっとね」
「まあやることはやってくれてるからな」
「あんたのフォローもあってだね」
「目を瞑るところは瞑ってくれよ」
「悪気も偏見もないからそうするけれどね」
ビルメが言うとだ。フランスも言う。
「それで頼むな」
「ああ、そうするよ」
二人はそんな話をした。オフランスは今は穏やかだがそれでも話すことは話していた。やはり彼等も今の大きな戦争の中に存在しているのだ。
TURN34 完
2012・6・17
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