受けた傷の分だけ
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第二章
「そうしてあげよう」
「そうね、それがいいわね」
「この子にとってとてもいいことです」
獣医は家族の話を聞いて笑顔で言った。
「ではこの子をお願いします」
「わかりました」
彩の母が応えてだった。
二人は猫を暫く病院で預かってもらってしっかりとした休養を摂ってもらった、その間に父にも事情を話してだった。
猫の体力が戻ると引き取った、そうして猫との生活をはじめたが。
彩は猫が家に来るとすぐに母に言った。
「猫ちゃん雄だったわね」
「ええ、そうよ」
母はすぐに答えた。
「この子はね」
「そうね、けれど女の子みたいな名前になるけれど」
それでもとだ、彩は母に話した。
「この子の名前ミリーにしよう」
「本当に女の子みたいな名前ね」
母もその名前を聞いて言った。
「どうしてその名前にするの?」
「この子家族になるのよね」
家に入ってすぐに隅に隠れたその猫を見て言った。
「そうよね」
「ええ、これからね」
「英語で家族はファミリーっていうから」
「あっ、ファミリーからね」
「ミリー。どう?」
「いい名前ね、じゃあね」
「うん、この子はこれからミリーね」
彩は笑顔で言った、そのうえで猫と共の暮らしをはじめたが。
ミリーはずっと家の隅に隠れていた、彩達の姿を見るとすぐに隠れてガタガタと震えているのだ。しかも獣医が言った障害のせいで動きが悪い。
彩はそのミリーを見て悲しい顔で言った。
「ミリー私達が怖いの?」
「そうみたいね」
母もミリーを見て言った、今はカーテンの裏に隠れている。
「どうも」
「怖がることないのに」
「この子目と脚が悪いでしょ」
「人にやられたのよね」
「獣医さんが言われてたわね、そうしたことをされたから」
「だからなのね」
「私達も怖がってるの、けれどね」
それでもとだ、母は娘に話した。
「私達はそんなことしないで」
「私そんなこと絶対にしないわ」
「お母さんもお父さんもよ。家族がそうしていけば」
それでとだ、母は娘に優しい声で話した。
「ミリーもね」
「私達を怖がらなくなるの」
「そうよ、ご飯とお水をあげていって」
そしてというのだ。
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