曇天に哭く修羅
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第二部
予兆
前書き
一人増えるだけでやり辛くなるなあ。
_〆(。。)
【魔術師】が有する生命力や回復力は常人だと考えられないほど高く治りも早い。
現代医学も加われば尚更。
「普通は全治数ヶ月らしいが」
《立華紫闇》は四日で病院を出た。
【夏期龍帝祭】の決勝戦から四日。
そう。あの試合からそれだけ。
まだそれだけしか経っていない。
紫闇は準優勝という結果を出した後、色々あって家族に絶縁状を叩き付けるに至った。
今の彼は《橘花 翔》と同じ【魔神】候補。
「だからって病院来んなよ」
軍の人達によると紫闇には生活のサポートが入るらしいが金でも飯でも異性でも叶う限りを用意してくれるのはやり過ぎだと思う。
まあ紫闇は家を出てしまった身なので住む所だけは手配してもらっているが、これくらいは許されるのではないだろうか。
「焔やレイアさんも居るし、黒鋼の屋敷に行こうかって案も有ったんだけど、俺の修業だけでも負担かけてるしなあ。特にレイアさんは事情を知ったら心配するだろうし」
紫闇は家を出たことを秘密にする。
そこに連絡が来た。
【龍帝学園】の生徒会長から。
「あ、立華くん? 生徒会長の《島崎向子》だよー。頼み事したいんだけど」
何でも紫闇が住む部屋の隣の部屋に住まわせてほしい人物が居るとのこと。
「ちなみに橘花翔よりも強いよ」
挑戦する許可を得たのだが会ってみた紫闇はあまりに予想外の人物だったのでそんな気持ちは何処かへ消え去ってしまう。
(橘花より強いってそりゃそうでしょ)
夜の繁華街を歩く紫闇は隣で歩いている長身の男を見上げて身を固くする。
《イリアス・ヴァシレウス・グラディエ》
英国から亡命してきた【魔術師】
向こうの国内に限定してだが歴史上最強の実力を持った最高の経歴を誇る魔神。
最低の経歴も持っている。
七層有る【無明都市】の一層を解放した英国初の魔神でありながら、自国の【古代旧神/エルダーワン】と軍隊を相手に単独で引き分けるような化け物と戦うのは無理だ。
(明らかに焔より強いよな……)
戦るなら最低でも今は亡き、純粋な強さの象徴とまで言われた【鉄拳の女帝】
出来るなら先代の【史上最強】
それくらいの実力は欲しい。
何せイリアスは自国全ての戦力を相手に一人の死者も出さず、魔術師を含めた殆どの人間を無傷で、古代旧神を除く総勢の戦意を喪失させ心を折ってしまう程の差を見せ付けたのだ。
もし最初から殺す気だったなら……。
紫闇はゾッとした。
◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆
街を歩く紫闇とイリアス。
目前では二人の男による諍い。
「迷惑じゃなければなあ」
「好きにしろと言いたいけど」
二人は学生魔術師のようで体が白銀の魔晄防壁によって覆われる。
そして互いの【魔晄外装】を出した。
「不味いですねイリアスさん。みんな避難したり罪を犯した魔術師を捕まえる【狩人/ハンター】に通報したりしてますけど」
「建造物が只じゃ済まない」
紫闇達は二人を止めようとする。
「止しなさい。迷惑です」
一同が声の方を見た。
そこにはイリアスのような貴公子。
闇色のスーツに包まれた体はモデル形無し。
身長は180センチ前後。
腰まで伸びた金髪が特徴的だ。
夜でも判る碧眼も印象に残る。
美女のように整った凄まじい美形。
そんな青年から掛けられた言葉と柔和な笑顔が気にくわなかったのか争っていた二人が喧嘩相手よりも優先して突っ込んでいく。
紫闇は青年を助ける為に外装を出そうとするがイリアスに制止されてしまった。
「心配ない。何とでもなる」
どういうことか聞きたかった紫闇だが、取り敢えず見守ることに。
青年は白銀の防壁に包まれた。
どうやら魔術師らしい。
その行動は紫闇を驚かす。
向かって来る二人を躱すと外装を出すこと無く、首筋に手刀を入れて失神させたから。
「相変わらずか」
イリアスは青年を知っているらしい。
「こうなると解ってたんですね」
青年は去っていった。
「龍帝学園の『白狂戦鬼』だけではなく貴方まで居るとはねイリアス。近い内にまた会うことになりますよ」
後書き
_〆(。。)
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