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戦国異伝供書

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第七十六話 美濃に進みその九

「後が怖いと承知じゃ」
「若し見捨てれば家臣に見捨てられる」
「いざという時にそうなる」
「そのことをご承知なので」
「それで、ですか」
「決してじゃ」
 六角義賢、彼はというのだ。
「川を渡った兵を見捨てることなくな」
「こちらに来ますか」
「援軍として」
「川を渡って」
「そうしてきますか」
「そうじゃ、ならばそこをじゃ」
 義賢が率いて来る六角家の主力もというのだ。
「叩くぞ」
「川を渡ったところを」
「そうしますか」
「そうじゃ、こちらから渡ると考えておったが」
 それをというのだ。
「しかしな」
「それは、ですか」
「こちらはですか」
「我等はですか」
「攻めますか」
「そうじゃ、勝つ」
 こう言ってだ、そしてだった。
 新九郎はまずは鉄砲を撃たせた、その間合いまでぎりぎりまで引き寄せてそのうえで撃った。すると。
 六角家の軍勢は思った以上の数の鉄砲の威力と音に止まった、それは一瞬だったがその一瞬の隙を衝き。
 全軍を攻めさせた、ここで弓矢を放ち長槍を繰り出すが。
 浅井家の槍は六角家のものより長く先に彼等を倒すことが出来た、弓矢の質もよく彼等より遠くから攻めることが出来。
「殿、いい具合です」
「こちらの矢と槍も利いております」
「敵を順調に倒しておりますぞ」
「無論こちらもやられていますが」
「敵の方が倍は多いです」
「うむ、よい感じじゃ」
 まさにとだ、新九郎も頷いた。
「ではな」
「このままですな」
「攻めていきますな」
「弓矢と槍で」
「そうしていきますな」
「そして頃合いを見てまた鉄砲をじゃ」 
 この武器をというのだ。
「再び使うぞ」
「敵が油断した時に」
「また鉄砲を使いますな」
「そして撃って倒して音で驚かせる」
「そうして攻めますな」
「そうする、よいな」
 こう言ってだ、そしてだった。
 新九郎はそのまま攻めさせ自らも槍を手にした。これには家臣達も言った。
「いざという時はですか」
「殿もですか」
「攻めに加わられますか」
「そうされますか」
「そしてじゃ」
 そのうえでというのだ。
「戦うぞ」
「先に言われましたが」
「そうされますか」
「そしてそのうえで、ですか」
「勝たれますか」
「わしも戦の場におるのじゃ」
 それならというのだ。
「いざという時は戦う」
「そうされますか」
「では我等も」
「我等も戦いまする」
「いざという時は」 
 重臣達も槍を持った、そして軍配の代わりに槍や刀を手にそのうえで采配を執った。そうしてだった。
 六角家の軍勢をさらに攻めていった、六角家の軍勢の先陣は押される一方だったがそれを見てだった。 
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