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黒魔術師松本沙耶香 糸師篇

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第十八章

「今は」
「そう、じゃあ知ってもいい頃ね」
「いい頃といいますと」
「まずは二人で街を歩きましょう」
 そうして楽しもうというのだ、見れば女性としてはかなりの長身の紗耶香と比べて少女は三十センチは低い、まるで歳の離れた姉妹の様だ。 
 だがその妹の様な可愛らしい少女に紗耶香は妖しく微笑んで話した。
「そしてとっておきの楽しみを二人で楽しみましょう」
「二人で」
「そうしましょう、では行きましょう」
 こう言ってだった、紗耶香は少女を連れて原宿の様々なパフォーマンスや催しを見て店を巡った。そうして。
 昼下がりにホテルに入り少女と『楽しんだ』、その後で紗耶香は少女に同じベッドの中で語った。二人共ベッドの中で一糸もまとわず紗耶香は半身を起こして煙草を吸っている。
「素敵だったわ」
「あの、私」
「はじめてだったわね」
「はい、そのはじめてが女の人だったなんて」
「女の人のはじめては私だったのよ」
 紗耶香は煙草を吸いつつ少女に話した。
「男の人はね」
「また別ですか」
「そうよ、人はどちらも楽しんでいいのよ」
「男の人だけでなく」
「女の人もね、そして私はね」
 自分の隣でうつ伏せに寝て白い肩を見せたうえでまだ余韻の中にいる少女に話した。
「そうしているわ」
「女の人も男の人もですか」
「そうよ、いつもね」
「そうなんですか」
「今もそうだったし、それでだけれど」
 煙草からは青い煙が出ている、その煙を見つつさらに言った。
「もうこれで満足かしら。私はまだよ」
「では」
「ええ、もう一度ね。この煙草を吸い終わったらね」
 その時にというのだ。
「また楽しみましょう、今度は貴女が上になるといいわ」
「私がですか」
「その時のことも教えてあげるわ。こうしたことは長くじっくりと楽しむものだから」
「もう一度ですね」
「もっと言えば何度でもよ。楽しめる限りね」
 紗耶香は自分に顔を向けてきた少女にその切れ長の黒い目を向けて妖艶に笑って述べた。
「だからもう一度と言ったけれど」
「何度もですか」
「楽しみましょう、いいわね」
「それじゃあ」
「ええ、もっとね」
 こう言ってだ、そしてだった。
 紗耶香は再び少女と宴を楽しんだ、そうしてそのうえでだった。
 夕刻には少女と別れそれから夜の原宿を歩いた、若者の街は夜になると昼に比べて人が明らかに減っていた。
 だが一人夜の原宿を歩く紗耶香の後ろから声がした、年老いているが高くそれでいて格と余裕がある声だった。
「全く、あの娘は私がです」
「目をつけていたわね」
 紗耶香は声に振り返ることなく応えた。 
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