黒魔術師松本沙耶香 糸師篇
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第十七章
「世界一の魔都での暮らしをね」
「この東京を魔都と言われるとは」
「事実よ、東京は多くの結界が張られた世界で最も神仏の力が備わっている街だけれど」
「それと共にですか」
「あらゆる魔が集っている街でもあるのよ」
「二つの顔があるのですね」
「そうよ、そしてそうした街だからこそ」
紗耶香は蝦蛄を注文してから言った、見れば自分が食べたいものをその都度注文しまず何を食べるかというこだわりはない。
「魔人も多いのよ」
「魔人ですか」
「そう、人の姿をいているけれど力と心は人のそれではなくなっている」
「そうした存在が魔人ですか」
「そうよ、その魔人がいるから」
だからだというのだ。
「それでね」
「この度の事件の犯人は」
「魔人よ、糸に人の気配があったわ」
これまで戦っていた者達が使い操っていたそれにはとだ、紗耶香は話した。
「何度も戦っていてようやくわかったのは迂闊だったけれど」
「よくおわかりですね」
「土蜘蛛や女郎蜘蛛、蜘蛛の妖怪なら糸に蜘蛛の匂いがあるのよ」
「蜘蛛の」
「そう、妖怪となった蜘蛛のね」
「そうなのですか」
「ええ、その匂いがしないで」
それでというのだ。
「人の気配がね」
「しましたか」
「糸でもそれぞれ違うわ、だから」
「今度こそはですか」
「その糸の主を見付けだし」
「直接ですか」
「仕留めるわ、近いうちに朗報をお話出来るわ」
紗耶香は自分の前に来た蝦蛄を手に取った、そうしてそれを口に入れて味を楽しみつつ男に微笑んで述べた。
「楽しみに待っていてくれるかしら」
「近いうちにですか」
「ええ、次に会う時にはね」
「そうですか、それでは」
「ええ、待っていてね」
男にこう言ってだった、紗耶香は寿司と酒を楽しみ。
男と話してその話が終わると店が終わったところで出てだった。
この日は自分の部屋、都内のある場所に存在している豪奢な中に入り休んだ。そうしてまた原宿に向かったが。
この日は休日で原宿はお洒落な少年少女達で満ちていた、その中に中学生程の小柄でまだあどけないが黒髪とミニスカート姿がとても可愛らしい少女がいた、その少女を見て。
紗耶香はそっと彼女のところに来て横から囁いた。
「今一人かしら」
「はい、今日はお友達と約束したんですが」
少女は紗耶香に問われるまま答えた、声も実に可愛らしい。見れば黒いその目は大きく琥珀の輝きを放っている。
「その娘が風邪を引いて」
「貴女一人なのね」
「はい」
「そうなのね、では二人になりましょう」
紗耶香は少女に微笑んでこう言った。
「暫く」
「二人ですか」
「ええ、貴女は幾つかしら」
少女に年齢も尋ねた。
「話したくないならいいけれど」
「十三です」
少女は紗耶香に素直に自分の年齢を話した。
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