戦国異伝供書
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第七十五話 逐一その九
「それを見ますと」
「やはりです」
「用心は必要です」
「実際に」
「そのことは事実であるからな」
それ故にというのだ。
「一向宗への備えが必要なのもまた事実である」
「殿のお考えは否定出来ませぬな」
「近江のことよりも一向宗というお考えは」
「それ自体は間違いではありませぬな」
「やはり」
「左様、しかし一向宗をどうにしかしようと思えば」
それならばというと。
「もうここはな」
「ここは?」
「ここはといいますと」
「加賀を攻めてな」
一向宗の北陸での総本山でありまさに一国全てが彼等のものとなってしまっているこの国をというのだ。
「一向宗を全て降すしかない」
「加賀をですか」
「あの国一国をですか」
「それは無理ですな」
「当家では」
「うむ、それをしよと思えば」
それこそとだ、宗滴は己の家臣達に答えた。
「越前一国ではかなり難しい」
「やはりそうですな」
「そうしようと思えば」
「相当に難しいですな」
「かなり時がかかりな」
そうしてというのだ。
「得られるものもな」
「少ないですな」
「左様ですな」
「どうしても」
「だからな」
それでというのだ。
「わしとしてもじゃ」
「それは言われませぬな」
「加賀一国を降すことは」
「そのことは」
「そして治めるにしてもな」
その加賀をというのだ。
「難しい、降すことだけではない」
「ではですな」
「一向宗については」
「このままですか」
「若し来れば戦う」
「そうしていくしかありませぬか」
「残念ながらな、厄介であるが消せぬ」
朝倉家ではというのだ。
「それではな」
「このまま警戒しておく」
「近江のことは気になりますが」
「それでも」
「この度の備えも近江だけを見てのことではない」
浅井家と六角家のそれをというのだ。
「それだけでなくな」
「一向宗ですな」
「やはりあの者達ですな」
「あの者達も見て」
「そのうえでのことですな」
「そうじゃ、今あの者達は越後を見ていても」
その一向宗の者達がというのだ。
「それでもじゃ」
「若し、ですな」
「こちらに来れば」
「その時は」
「近江の方に少しの兵を置き」
そのうえでというのだ。
「わしは加賀の方に向かい」
「一向宗と戦われますな」
「そして勝たれますな」
「そうお考えですな」
「そうじゃ、そして勝つ」
一向宗、彼等にというのだ。
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