剣製と冬の少女、異世界へ跳ぶ
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072話 文化祭編・開催3日目(07) 学園祭の終わり・超の旅立ち
前書き
春はあげぽよ(更新します)
最後の魔法の打ち合いでからくもネギは超に勝利した。
それを見届けていた士郎は、
(なんとかなってよかったな…。傷ついた超もネギ君がなんとかキャッチしたみたいだからな)
そんな時に空へと打ちあがる特大の光が伸びていったのを見て、
「まさか、間に合わなかったのか!?」
それはまさしく強制認識魔法の光であった。
今からではもう士郎のルールブレイカーを以てしても間に合わないであろう。
なにせ世界中とリンクしているものを士郎一人が解呪するには一人分の魔力ではとうてい割に合わないからだ。
「しかし……六ケ所の起点は一つは防衛できていたはず……」
そんな事を考えている間にもネギの魔力も底をついたらしく超を抱えながら落下していく。
(ええい! ぐだぐだと考えている暇があったらまずはネギ君と超を助けねば!)
それでなんとか飛ばす士郎であった。
しかし、そこで目にしたのは一台の空を飛ぶ屋台の姿が……。
「あれは……?」
見ればそこにはイリヤや裕奈達といったメンバー達が乗っているのを確認し、
《シロウ。もう心配はいらないわ。ネギの方は任せなさい。コノカもいることだしね》
《しかし……強制認識魔法が発動してしまったのだろう? そんなに平然としていて大丈夫なのか…?》
《そこらへんももう平気みたいよ。なんか、裏の方でチサメが頑張ってくれていたみたいでギリギリ防衛で来たっていう話だし……》
《長谷川が? しかし、どこでそんな情報を……》
《サツキに聞いたのよ。だからシロウはそこでゆっくりしていなさい》
そこでまさか五月の名前が出てくるとは思っていなかったために、士郎は面を食らうことになったが、それならば大丈夫なのだろうと思い、葉加瀬の傍へと寄っていった。
そして、ネット世界で戦いを繰り広げていた千雨と茶々丸といえば、茶々丸に超の過酷な未来での話を聞かされていた千雨であったが、
「超が思う夢の世界だかなんだか知らねーが、今この世界が私達の居場所で現実なんだよ! 私は私の現実を守る!! あんたらの好きにはさせねー!!」
そして勝利宣言ともいえるエンターキーを押した千雨であった。
地上では、猛威を揮っていたスクナもどきが次々と消滅していっていた。
それを葉加瀬は残念そうに見ながらも、
「葉加瀬。どういうことだ? 強制認識魔法が発動されたのだろう?」
「はい。でもー、超さんがネギ先生に負けた時点で私達はすでに負けていたんですよー」
『どーいうことだ!?』
そこに千雨のモニターが映り叫んでいた。
そしてそこに割り込むように茶々丸が顔を出しながら、
『超さんがネギ先生に負けた時点で強制認識魔法は別のプログラムに書き換えられる事が最初から決まっていました』
「その、書き換えられた内容は……?」
士郎が茶々丸に問いかける。
果たしてその内容を聞いた士郎は少々間抜けな表情になりながらも、
「なるほど……『今日一日せめて明日一日憎しみも悲しみもなく、世界が平和であるように』……か。本当にたいした子だな。超は……とんでもないロマンチストではないか」
「はいー。そこが超さんのいいところなんですよ。そこを甘いと断じますか? 士郎先生?」
「いや、実に潔くていいではないか。明日まではどこでも戦争や争いは起きない……それだけでどれだけの人が一時とはいえ助かる事か……」
それで士郎は今でも3-Aのみんなにもみくちゃにされている超を見ながら、本当に心から賞賛していた。
…………そして、地上では。
『さぁ!皆さん!!敵火星ロボ軍団も参加者のみなさんの労力もありあらかた壊滅!! 巨大なロボも同じく消滅しました!! さらに、ラスボスである超 鈴音がガチバトルで子供先生に敗れました。ということは……?』
あちらこちらで「ということは?」とオウム返しをしている生徒がいっぱいいた。
その変化は世界樹の頭上まで高昇っていった光が激しく世界中に飛び散る光景を目の当たりにしながらも、朝倉は万感の思いを込めながら宣言する。
『我々学園防衛魔法騎士団の完全勝利です!!!!』
その言葉によってそこらじゅうで歓喜の雄叫びを上げるものが後を絶えない。
「やったーーーー!!!!」
「今年は存分に楽しませてもらったぜ!!」
「最後も綺麗だな!! 最高の演出だな!!」
「子供先生ありがとー!!」
「エミヤーン!! よくぞ子供先生を守ったな!!」
と、もう狂喜乱舞者が後を絶えない状況で、それを一般客として見守っていた衛宮一家は、
「ねぇねぇお父様!! お兄ちゃん、かっこよかったね!!」
「ははは。そうだねイリヤ」
「俺もあんなカッコいい事いつかしてみたいぜ!」
「シロウには無理よー!」
「イリ姉、そりゃないよー!」
「フフフ……」
はしゃぐイリヤに、多少苦手意識はあるものの士郎の事を尊敬しだしている士郎。アイリは穏やかに笑みを浮かべて、切嗣はそんな三人を見ながらも心の中で、
(士郎…お疲れ様だったね。きっと、こんなイベントの裏では世界存亡の戦いを繰り広げていたんだろう? 関係者である僕から見たら普通にガチバトルだったからね…)
いつかまた会う事があったならねぎらいの言葉を贈ろうと思う切嗣であった。
◆◇―――――――――◇◆
学園祭最終イベントも無事に終了して、強制時間跳躍弾をくらった者たちが次々と姿を現し始めていて、
「まさか……そんな事になっていたとは…」
事のあらましを生き残っていた者たちに聞いていた負けてしまっていたガンドルフィーニや刀子などはネギ達の活躍で世界に魔法がバレる事を未然に防げたことを知り、非常に驚いていたという。
「では、士郎さんも御無事なのですね?」
「ああ。今もピンピンしているよ。士郎が死ぬという最悪の未来はなんとか回避できたみたいだ」
タカミチは笑みを浮かべながらもそう語る。
周りでは後夜祭が盛大に開かれていてあちこちで騒ぎまくっている生徒達がたくさんいた。
忘れがちだが、知らない場所でガチで戦闘していた楓と龍宮の二人も同時に転移してきたのか引き分けになった事で笑みを浮かべ合っていた。
…………だが、それとは別に二人が戦いで使用した武器各種が転移で次々と地面に刺さってきていて、それをまだゲームが終わっていないと勘違いした生徒達が喧嘩だ喧嘩!と勝手におっぱじめていたりするのは全くの余談である。
当然、タカミチが目を光らせながらデスメガネ降臨とばかりに成敗していたのもまったくの余談である。
一般人から見たらタカミチは等しくターミネーター的存在なのは間違いない事であった。
…………そんな騒ぎの中、ネギと士郎は超が立っている場所へと赴いていた。
「超さん…………行ってしまわれるんですか?」
「ああ。ネギ坊主。私の戦いは終わたネ。もうココには用はもうないヨ」
それでネギは少し押し黙った後に、
「一つ聞かせてください」
「ん…? なにカナ?」
「あの呪紋処理の事です」
それを聞いて超はやはりといった顔になり、「ああ…」と声を上げていた。
「あれは……超さんがやったものではないんですよね…?」
「…………」
超は無言。
だがそれだけでもう答えは出てしまっていた。
やはりと思うネギ。
士郎も同じ感想なのか納得といった感じで頷いていた。
「あれは正気の人がやったものとは思えません! あれは人の肉体と魂を食らってそれを代償に力を得る狂気の業です!いったい誰があなたにそんな事を!!」
ネギが叫ぶが、超は受け流すがごとく、未来の事は教えられないとはぐらかした。
それでネギがさらに叫ぶが、超がこう言う。
「誰かの過去を知ることによって誰かの事を理解できると思わぬコトだ。私を知りたければニュースなどを見るがいい。そこら中にそう言う話題はわんさかしていると思うネ」
「超さん……」
「そして私からの忠告だ」
「忠告……?」
「おそらくネギ坊主はこれが終わった後にきっとだがエミヤ先生の過去を見せられると思う」
それで士郎は反応を示す。
だが無言で超の言い分を聞いていた。
「それでエミヤ先生の過去を見てきっとネギ坊主は憤慨するであろう。それだけの過去をエミヤ先生は秘めているネ…」
「…………」
「だからといってエミヤ先生の事を完全に理解できたと思わぬコトだ。ネギ坊主の人生が辛かったようにエミヤ先生やイリヤさんにも辛い過去がある…。だれしも一つは二つは辛い過去を持ってるネ。そこのところだけは分かっておいてほしいヨ」
「…………わかりました。肝に銘じておきます」
「それならよし、ネ。さて、それでは私はもう退散するネ」
そう言って超は予備であろうカシオペアを出して、消えようとしていたが、起動する前にネギに押さえられていた。
それに驚く超だったが、ネギはさらに驚くことを言い出す。
「すべてだなんて嘘です。儚い夢だなんてそんなハズありません。だから……超さん。僕と一緒に『偉大なる魔法使い』を目指しませんか…?今は同じこの時代を生きる人間ととして……なにも帰ることなくこの時代で一緒に未来を変えていく事もできるはずです。
それを誰にも文句を言われる事なんてないんです」
「…………」
ネギの言い分を聞いて超は夢想する。
そんな事が出来たらさぞ楽しかろうか、と…。
だが、
「そんな未来もいいものカモしれぬ」
「それじゃ!」
「いや、帰るネ!」
「どうして!?」
それで聞いていた一同も思わずこけそうになっていた。
反対に士郎やイリヤ、ランサーは同意していた。
「なぁ坊主。引き留めたいと思う気持ちはわかるがな……所詮は違う世界の人間なんだぜ? いつかは消えなけりゃいけねぇ……そこに人間も、そして英霊である俺も違いはねぇ…」
「ランサーさん……」
「いついかなる時でも世界をどうにかするのはその世界で生きている人間だけの特権だ。そこによそものが口を出していいもんじゃねぇ。本来なら過去の亡霊である俺も手は貸してはやらねぇんだぜ?」
マスターの命令なら手を貸すのも吝かじゃねーがな、と付け足すランサー。
そんなランサーの言い分に感銘を受けたのか超が、
「さすが、英霊ともあれば言う事もおおいに頷けるネ。さすがヨ」
「まぁな。ま、そんなことよりアーチャーの野郎の件はどうなったんだ?」
「そこはエミヤ先生にでも聞くがよいヨ。きっと私の件の事も知っていると思うネ」
「そうかい」
それでランサーは引き下がった。
そこに士郎が引き継ぐように、
「超……本来なら俺はお前の事を許せないと思う。かの人の願いも込めて未来へと託されたエミヤをああも好きなように弄ってしまって……本来ならもっときつく罰を与えるところだ」
「そうは言うが、別段ナニモ言う事はないみたいネ?」
「まぁな。そこはネギ君が君を倒してくれたから、だからチャラにしてやってもいい。君の負けた後での理念も潔いものだったしな。だから後はネギ君達とお別れでもするがいいさ」
「感謝するネ…。さて、ネギ坊主、ここまで他の人に言われてもまだ決心はつかぬカ?」
そう超に問いただされたネギであったが、ネギは存外頑固なので傲慢だと言われても超の事をどうにかして引き留めたいと思う。
それに超は「やれやれ……」とかぶりを振って、
「仕方がない……。ここまでくれば後は私の最終兵器を使わないといけないネ」
「さ、最終兵器……?」
超の言い様に傍の方で聞いていた茶々丸と葉加瀬は「そんなものありましたっけ?」「さぁ…?」と首を傾げていた。
果たして超が出した最終兵器というべきものは、
「これネ!」
一冊の本を取り出した超が持っている本の題名はこう記されていた。
『超家家系図』
「私がネギ坊主の子孫という事は、当然ネギ坊主はだれかと結婚をして子をなしたという事……この本にはそのだれかの名前が記されている…さて、どう思うかネ? 皆の衆……」
「あ……」
「「「「「(究極兵器だーーーーーッ!?)」」」」」
それを聞いていた全員は思う事が完全に一致し、戦慄の感情を抱く。
それはもしかしたらこの場にいる誰かの名前も書かれているかもしれないという事になる。
その事実に、ネギパーティの面々は一気に暴走して我先にと燃やそう、見ようという意見で対立してガチンコを始めてしまっていた。
あやかやまき絵も参戦して泥沼の様相を呈していた。
「…………パーティ壊滅だな」
「そうね、シロウ……」
「最後までとんでもねぇ嬢ちゃんだな」
もう案外関係ないであろう士郎達はそんな争いを傍観者として見ていた。
そんな乱痴気騒ぎに巻き込まれたくはないものだからな。
そんな騒ぎをよそに、超はさらっと帰ろうとしていた。
「やっぱり、行ってしまうんですか…?」
「うむ。いや……存外楽しいお別れになたヨ。感謝するネ」
「でも、それじゃ超さんの今までしてきたことは!」
「無駄じゃないネ」
「えっ?」
「私の想いは無駄じゃなかった。託せるものにも託せたカラネ。私の想いはすでに達せられているヨ」
「それは、どういう……」
「計画は消えたが、それでもまだ私は生きている……ならば、私は私の戦場に戻ろう…。ネギ坊主、君はここで戦い抜け」
それでみんなからもらったものを空に浮かべながら、空へとフワッと浮かんでいく超。
五月や葉加瀬、茶々丸にも言葉を残して後は消えるのみであったが、
「超!!」
「エミヤ先生? なにカナ?」
「お前には俺の干将莫邪を託したな。なにかあればいつでも呼べ。ならば力になろう…」
「ッ! 分かたネ。その時が来たら呼ばせてもらおう!」
そして古菲に対して超は「いつかまた再戦しよう!」と言い、古菲も「いつか、必ず!」と返していた。
次第に光が超のもとへと集束していき、
「さらばだネギ坊主……また会おう!!」
「はい! 必ずまた会いましょう!!」
そしてついに超はこの世界から姿を消していったのであった。
…………その後、後夜祭も終わり、一同が片付けに入っている中で、それでもネギは超が消えた空をずっと眺めていたのであった……。
―――――こうして、波乱に満ちた学園祭は終了した……。
◆◇―――――――――◇◆
…………分身体が倒されたことを知った言峰は、だがそれでも愉悦の笑みを浮かべつつ、
「さて、それでは私も今度は魔法世界で活動でもしてみるか。そちらの方がより面白そうだからな……」
ククク……と笑いつつ姿を消したのであった。
後書き
はい。これにて学園祭編は終了となります。
干将莫邪についても、士郎のオリジナルアヴァロンverですので、ピンポイントでこの士郎を呼べると思いますね。
次回は少し間を置いて士郎の再度の記憶編に入りたいかなと…。
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