ようこそ、我ら怪異の住む学園へ
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其の弐 蛇を宿した女
第十二話 助けるために
旧校舎二階の廊下。そこには、一人の女生徒に扮した元宮が居る。
普段通り歩いていって———背後からの気配に気付く。
背後から這い寄るは上半身が人間、下半身が大蛇の形をした怪異———
「———っ、鬼神様‼︎」
その牙で元宮の頭を砕く寸前。
元宮は大きく息を吸いこみ、力の限りで叫んだ。
「よくやった、元宮少年‼︎」
そして、空き教室に潜んでいた四番目が、大きく刀を振りかぶりながら飛び出し、怪異の体を真っ二つにした。
———だが、確かに上半身と別れたはずの下半身が、四番目の体を横に吹っ飛ばす。そして、思い切り壁に激突した。
「ぐ……っ!」
「鬼神様‼︎」
「構うな! 願いを果たしたいのであれば奴との対話を目指せ‼︎ さっさとしないとそいつは殺すぞ‼︎‼︎」
壁を蹴り、もう一度蛇女に斬りかかる四番目。
四番目は刀を、蛇女は眷属の蛇の怪異達を使い、目にも留まらぬ速さでの攻防戦を繰り広げる。
……元宮がそれに圧巻されている間にも、段々蛇女の方が押されていく。そこで、ようやく彼は我に帰る。
「あの、蛇女さん! どうか、僕の話を聞いてください‼︎
僕は貴方を殺したくないんです、助けたいんです‼︎ だから、どうか僕の話、を……」
その一瞬、元宮は自分の目を疑った。
視界いっぱいに、大きく口を開けた大蛇の顔があったのだ。
そして、死ぬと直感して、その場に立ち尽くした。
———え、僕は……死ぬのか? いや、でも死ぬのは悲しくない……寧ろ望んでいたことなのに、なんで……
……なんで、今更になって死にたくないなんて思うんだ?
刹那、元宮の体に衝撃が走り、目の前で赤い血飛沫が舞った。
「———言っただろ。君を殺すのは、この私だ」
きらりと刀に光が反射して、妖美に光る。
幽霊なはずなのに体が透けているわけでもなく、宙に浮いているわけでもない彼女に。
吹っ飛ばされた時に落ちた帽子を回収し、力が抜けて座り込んでしまった本宮に手を伸ばす彼女に。
元宮は、ただ理由もなく見惚れていた。
「大丈夫だったか、少年」
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