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戦国異伝供書

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第七十五話 逐一その四

「あちらはどうか」
「はい、比叡山もです」
 遠藤が答えた。
「動きませぬ」
「左様か」
「どうも都での三好家、松永家の動きを警戒し」
「そちらを注視してか」
「近江のことはです」
「今は放っておいておるか」
「その様です、当家に肩入れする動きもありませぬが」
 それと共にというのだ。
「六角家にもです」
「肩入れせぬか」
「はい」
 こちらにもというのだ。
「左様です」
「そうか、ならよい」
「比叡山についても」
「両方に肩入れせねばな」
「それでよいですな」
「実は一向宗も比叡山もな」
 そのどちらもとだ、新九郎は遠藤そして他の家臣達に話した。
「こちらについて欲しいが」
「それでもですな」
「それが無理ならな」
「せめてですな」
「中立であればな」
 それでというのだ。
「よい」
「左様ですな」
「それでな」
「これで、ですな」 
 阿閉が言ってきた。
「当家は六角家とだけです」
「戦えばよい」
「そうした状況になりましたな」
「倍以上の敵と戦うならな」
「敵は他にはおらぬことですな」
「若しここで他に敵が出来れば」 
 そうなればというと。
「当家に勝ち目はない」
「その通りですな」
 宮部も難しい顔で述べた。
「そうなれば」
「我等はようやく一万一千じゃ」
 それだけの兵が集まったというのだ。
「しかしな」
「対する六角家は」
「今兵を集めておる」
 二万の軍勢からさらにというのだ。
「二万五千までな」
「集めておりますな」
「二倍を優に超える」
「幾ら武具を整えてな」
 そしてというのだ。
「そうしてな」
「兵糧や塩も充分に備え」
「領地の隅から隅まで見てな」
「敵のことをわかっても」
「これ以上敵が増えるとな」
 その六角家に加えてというのだ。
「勝てるものではない」
「全くですな」
「だからじゃ」
「一向宗と比叡山が敵にならない」
「このことは有り難い、ではな」
「これよりですな」
「そうじゃ、だからな」
 それでというのだ。
「このことをよしとしてな」
「そうしてそのうえで」
「六角家が来れば」
 その時はというのだ。
「戦うとするか」
「そうされますな」
「しかし」
 ここでだ、猿夜叉はこうも言った。 
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