戦国異伝供書
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第七十五話 逐一その三
「少なくともです」
「この近江においてはじゃな」
「至って静かで」
それでというのだ。
「どちらにも一揆を起こすことはです」
「なくてか」
「そのことはです」
至ってというのだ。
「落ち着いて」
「そうしてか」
「いけばいいかと」
「そのこともわかった」
よくとだ、新九郎は赤尾に答えた。
「よいことじゃ」
「一向宗が大人しいことは」
「あの者達が動く、最悪六角家につけばな」
「当家としては」
「これ以上はないまでにな」
まさにというのだ。
「厄介なことになっておった」
「全くですな」
「一つ憂いが消えた」
一向宗の動きがそれであった、だがその彼等が大人しいならというのだ。
「有り難いことじゃ」
「ですな、そのことは」
「それでじゃが」
新九郎はさらに話した。
「この小谷城は最後の最後の守りじゃ」
「備えは、ですな」
「しておくが」
今度は磯野に答えた。
「しかしこの城に迫られる様なな」
「そうした戦はですか」
「せぬ、城での戦ではなく外での戦でな」
そこでというのだ。
「決着をつける様な」
「そうした戦で、ですか」
「それでじゃ」
まさにというのだ。
「戦ってな」
「決着をつけますか」
「この小谷城は堅城」
浅井家の本城であるこの城はというのだ、言うまでもなく新九郎が幼い頃から父と共に暮らしてきた居城でもある」
「そうおいそれとはな」
「攻め落とせませぬな」
「まずな、だがな」
「この城に籠らず」
「そしてじゃ」
外で戦いというのだ。
「勝つ」
「そうしたお考えですか」
「そうじゃ」
まさにというのだった。
「この城に籠るのはあくまで最後の最後じゃ」
「備えはしておいても」
「ここで戦うことは主にせぬ」
「領地深くには入らせぬ」
雨森が言ってきた。
「そうお考えですな」
「そういうことじゃ、民に迷惑はかけたくない」
例え戦になろうとも、というのだ。
「だからな」
「そうされますか」
「外で戦いそこで勝ってな」
「決めまするか」
「そうしたい」
これが猿夜叉の考えだった。
「何とかな」
「それに越したことはないですな」
「何といってもな」
そしてと言うのだった。
「民に迷惑はかけず」
「領国深くにも入らせない」
「そうする、それと比叡山は」
新九郎は近江の南西にあるこの天下を守護するとまで言われている寺の話もした。
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