おっちょこちょいのかよちゃん
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32 雨天の日曜日
前書き
《前回》
三河口の従姉の羽柴さりが清水へ帰省しに来た。かよ子の家族はその夜、羽柴家で名古屋の名物を御馳走になる。そして遠く離れた場所では二人の男が日本へと向かっていた!!
今回からは1974年に清水市を襲った「七夕豪雨」を元ネタとしています。
三河口は入浴を済ませた後、テレビを見ているさりに呼ばれた。(ちなみにさりは既に風呂を済ませていた)
「あ、健ちゃん、このドラマ見ようよ、私いつも楽しみに見てるんだ」
「はい、では」
二人はドラマを見た。このドラマはもちろんさりのみならず、彼女の母の奈美子もいつも見ていた。ドラマはやがてコマーシャルに入った。三河口は従姉に質問する。
「ところでさりちゃん」
「え?」
「今はどんな仕事をしているんですか?」
「ああ、商店でアルバイトよ。でも結構充実してるよ」
「はい、ところで、名古屋でも何か変な現象が起きているのではないでしょうか?」
「ああ、あるわね。ある時、商店街を歩いた時、街の人が急にバタバタ倒れちゃった事があるの」
さりは否定しなかった。
「それで、どうなったんですか?」
「その後、驚いたけど、私も急に意識を失って倒れたわ。起きたらいつの間にか夜になってた・・・」
三河口はその話を聞いて体が震えた。彼女にあの事を伝えようかと・・・。だが、コマーシャルが終わり、ドラマが再開された。
「あ、始まった」
さりと三河口はドラマが終わるまで見続けていた。
翌日、かよ子はいつもより寝坊してしまった。慌てて顔を洗い、着替える。外は雨だった。
「雨か・・・。外で遊べないな・・・」
かよ子は隣の家の娘と遊ぶ約束をしていたのだが、外が雨では何もできない。だが、そんな時、インターホンが鳴った。
「おはようございます」
だが、さりは現れた。
「かよ子、さりちゃんよ」
「あ、お姉ちゃん!」
「今日は雨で残念よね。私の家に来なよ~」
「うん、ありがとう!」
かよ子はさりにつれられて隣の羽柴家へと移った。しかし、何をして遊ぶのか。
「しかし、三人で何をしますか?」
三河口が聞く。
「そうね、私の部屋に人生ゲームが入ってるからそれで遊ぼうか」
「でも、三人じゃ足りない気がしますが」
「そうだ、私、友達呼ぶよ」
かよ子はまる子やたまえでも電話で呼ぼうかと考えていた。とりあえずまる子とたまえは来てくれた。
「お~い、かよちゃ~ん」
「まるちゃん、たまちゃん!ごめんね、雨の中なのに」
「いいよ、いいよお~。でも今日は隣の家なんだね」
「うん、お隣の家のお姉さんが名古屋から帰ってきてるんだ」
「そっかあ~」
かよ子は二人を家に入れた。かよ子はさりと三河口を紹介する。
「この人が隣の家のお姉ちゃんとその従弟のお兄ちゃんだよ。お姉ちゃん、お兄ちゃん、友達のまるちゃんとたまちゃんだよ」
「羽柴さりです。宜しくね」
「そのさりの従弟で居候している三河口だよ」
その時、三河口はまる子を見ると、ただの小学生でない事に気付いた。彼女を見ただけで普通の人とは異なる感じがしたのだ。それはかよ子に対しても同様である。
(この子は、さくらももこ・・・。あの時、大野けんいちや杉山さとし、富田太郎と共に秘密基地を造り、更には北勢田の家の向かいに住む長山治を狙いに来たオリガと丸岡に対して奮闘していた・・・。そして『炎の石』を所持している・・・)
だが、三河口は今はその事については置いておくことにした。
「で、何するのお~?」
「人生ゲームだよ」
こうして皆は人生ゲームをして楽しんだ。ゲームの結果は、たまえが一位で所持金も最多だった。二位さり、三位はまる子、四位かよ子、五位が三河口だった。
「雨、止みそうにないね」
「うん」
「いいよ、いいよ、皆にご馳走するわよ」
さりはそう言って母と共に台所へと向かった。
「はて」
三河口は話を続ける。
「ええと、まるちゃんだったね」
「はい?」
まる子は呼ばれてびくっとした。
「君は確か森の石松から『力の石』を貰っていたね」
「ど、どうしてそんな事しってるのお!?」
まる子は驚いた。そしてかよ子は三河口が一体これから何をするのか胸騒ぎがした。
「そりゃあ、俺も最近続くこの世の異変が気になってるんだ。かよちゃんも持ってる不思議な杖も異世界のもので、元々はかよちゃんのお母さんが持っていたんだ。俺のおばさん、つまりあのお姉さんのお母さんも異世界からの道具を子供の頃に貰っていてそれで戦後の食糧不足の中を生き抜く事ができたという訳なんだよ」
「そうだったんだ・・・」
「まるちゃんもかよちゃんもそんな凄い物を持ってるの!?でも、どうして!?」
たまえは驚いて気になった。
「それは、この日本は今、ある組織に狙われているんだ。その為に異世界と繋げて異世界の人間と協力してこの日本を無理やり変えようとしている。それに対抗する為だよ」
「まるちゃん達がそんな危険な戦いに・・・」
たまえは心配した。
「たまちゃん、確かに君の親友のまるちゃんやおっちょこちょいを気にしているかよちゃんがとても心配なのは分かるよ。でも、二人には対抗できる能力があるからこそ選ばれたんじゃないかと思うんだ」
(お兄ちゃん・・・)
かよ子はこの高校生がそんな事を言うとは思いもしなかった。でもその分、三河口は自分の事を信頼してくれているのからこそ今のようなことが言えるのだと改めて気づいた。
「そうだよね、頑張って敵をぶっ叩こう~、ね、かよちゃん!」
「う、うん・・・」
かよ子はまる子の呑気な言い方に閉口しながらも今の町を守り続けたいと考えていた。
昼食は名古屋のきし麵だった。これもさりの土産だという。
「いただきまーす!」
きし麵はとても薄っぺらだったが、とても美味しかった。
「これも美味しいね!」
「うん、名古屋は美味しいものがいっぱいだよ」
「昨日はね、味噌カツにひつまぶしや手羽先も食べたんだよ」
かよ子は昨日の夕食を説明した。
「いいねえ、アタシも名古屋行ってみたいよお~」
「是非来てみなよ」
「でもウチのお父さんもお母さんもいっつもダメって言うんだ、お金がないって」
「そっかあ」
「さりちゃん、連れて行ってあげたらいかがでしょうか?」
「いいかもね。私のお金も貯まればね」
皆は昼食を満喫した。やがて、まる子とたまえは帰っていった。
「私も帰らないと・・・」
「そうだね、明日学校だもんね」
奈美子はそう言うと、さりに呼び掛ける。
「さり、ついでにかよちゃんを隣に送っていきな」
「うん」
かよ子は隣家にも拘わらずさりに送られる形で家に帰った。
「かよちゃん」
「え?」
「異世界の敵と戦った事があるって?」
「う・・・」
かよ子はさりに勘づかれて動揺した。
「そ、そうなんだ。でも、お母さんから貰った杖があるんだ。それで何とか勝ってきたんだけど、それに私の好きな男子まで巻き込んじゃったんだ・・・」
「そうか、大丈夫だよ。その男子はどんな子なの?」
「正義感が強いんだ。それに困った時にはいつも助けてくれるよ・・・」
「そうなんだ。その男子の為にも頑張んなきゃね。じゃあね」
「う、うん、さようなら・・・」
かよ子は自分の家に入った。そして自分の好きな男子の事を思い出す。
(杉山君・・・。私、絶対に負けないよ・・・!!おっちょこちょいしても異世界の悪い人にもその人達を送り込んだ組織の人にも・・・!!)
二人の男は日本へと向かう。
「そういえばこの清水では雨が降り続ける予定だな」
「そうそう」
「ならその雨の力を強めよう。俺にとってはいい事になるだろう、いや、絶対にそうなるのだからな!!」
「それで奴らを見つけて静粛させるって根端かい、兄貴?」
「ああ、洪水騒ぎになればきっと奴らも動き出すだろうし、その方が見つけるのに容易い。天よ、我に仕事を与えよ!!」
後書き
次回は・・・
「夜中の大豪雨」
時が経つにつれ、激しくなりゆく雨。そして町内の避難勧告が発令される。雨を不安に思う杉山、隣町に住むすみ子。そしてかよ子の家族も高台の公民館へ移動を始めたその時、彼女が目にしたものは・・・。
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