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東方
【加筆修正】幻想郷がソ連に蹂躙される話③
前書き
ヒント:めーりんが名前だけでてるよ!
「最近、外からの妖怪が多いわね」
博麗霊夢は、縁側でお茶を飲みながら、のんびりとしていた。
脇がない巫女服というパンクなスタイル――つまりいつも通りだった。
「ああ、『拉致だ』とか『国に返せ』とか言う連中ばっかりだよな」
つぶやきに答えたのは、とんがり帽子をかぶったいかにもな白黒魔女、霧生魔理沙である。
ここ最近、幻想郷に入ってくる妖怪が急増していた。
外と内を隔てる博麗大結界の維持に関わる霊夢は、嫌な予感がしていた。
「外の国、えっと、なんだっけ」
「『ソビエト社会主義幻想共和国連邦』だってさ」
「そうそう。よくそんな舌をかみそうな名前を憶えているわね、魔理沙」
「里に行ったとき、外来人に聞いたんだ。なんでも、人妖が共存している珍しい国らしい」
「勝手に国民を浚って大丈夫なのかしら」
「だめだろ」
人間と妖怪が暮らす楽園。それが、幻想郷であり、霊夢は、「楽園の素敵な巫女」の役割を担っている。
すなわち、幻想郷を守ることが彼女の仕事といえた。
その幻想郷が危機に瀕しているような予感が、ずっとするのだ。
突然増えた外の妖怪。これが原因かもしれない。
「その通りですわ」
「うおっ、びっくりした。突然出てくるなよな」
「何の用かしら、紫」
突然、姿を現したのは、八雲紫。
幻想郷の創始者にして管理者であり、神出鬼没の隙間妖怪である。
「最近、外からの妖怪が急増しているのは、知っているわね。博麗大結界はどうなっているのかしら?」
「誤作動しているわね」
「……なぜそう思うのかしら?」
「勘よ」
にべもない答えに面をくらう紫だが、いつものこと、と流した。
それに、この巫女の勧はよく当たるのだ。
「そうね。この問題は、私の愛する幻想郷の存亡の危機なのよ」
「そんなヤバイ話なのか!?」
いきなり始まったスケールの大きい話に、魔理沙は驚く。
そんな彼女に、やんわりと紫が言う。
「迷い込んだソ連人は、記憶を消したうえで、私の手で帰しているわ。だから、いまはまだ大丈夫」
「でも、いつか気づかれる日がくる。でしょう?」
「霊夢の言う通り。ソ連にバレたら――」
ごくりと唾を飲んで、魔理沙が問いかける。
「――バレたら?」
「幻想郷は滅亡するわ」
◆
「お嬢様。これが調査結果です」
拉致問題に関する会議が開かれた。
パチュリーの報告者をレミリアに渡すのは、十六夜咲夜だった。
国防人民委員――国防省長官のようなもの――のトップである。つまり、軍部の頂点であり、莫大な権力を握っている。
どれほどレミリアが咲夜を信頼しているのか、端的に示していると言えよう。
十六夜咲夜は時を操る程度の能力を持っており、その力を恐れた両親に捨てられた孤児だった。
彼女を救い上げたのは、レミリアであり当初はメイドとして働くようになった。
やがて、その忠勤ぶりが評価されついには、ソ連の幹部にまでなったのである。
彼女のサクセスストーリーは、ソ連国内でも人気がありちょっとした英雄扱いである。
当人は、レミリアのメイドであることを誇りに思っており、いまだに常にメイド服を着ている変わり者でもあった。
「『幻想郷』ねえ。噂には聞いていたけれど」
「妹様も噂程度には知っているようね。ただの極東の辺鄙な異界。やっと尻尾をつかんだわ。たまたま拉致の瞬間が監視カメラに映っていたお蔭ね」
「さすがは同志パチェ。いい仕事をしてくれる」
魔法省長官のパチュリー・ノーレッジが、誇らしげに言う。
レミリアの褒め言葉に、ありがとう、とまんざらでもなさそうである。
パチュリーは、レミリアとフランドールが旅を始めた当初からのつきあいであり、大親友である。
それゆえ、レミリアが謎の拉致事件に心を痛めているのを察しており、早く解決しなければ、と意気込んでいた。
「KGBでは、潜在的な敵対勢力として幻想郷を監視しておりました。情報は全て筒抜けです。というよりも、すでにゾルゲが潜入しております」
「ゾルゲがですか! さすがは妹様です!」
「確かに手回しがいいわね」
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