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戦国異伝供書

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第七十三話 元服前その八

「そもそも力があればこそ」
「太政大臣になった」
「そのことを見ますと」
「織田弾正殿でも」
「天下人になることが出来」
 力、それがあればだ。
「天下人になれば」
「幕府の役職や官位も」
「何とでもなりまする」
「だからですか」
「そうなってからでもです」
「織田家と手を結ぶべきですか」
「今後は。そして浅井家は」
 この家についてだ、宗滴はまた話した。
「やはりです」
「助けるべきですか」
「そうしましょう」
「左様ですか、しかし今は」
「一向一揆がですか」
「長尾家に向かっていても」
 今はそうでもというのだ。
「やはりです」
「油断出来ぬ」
「そしてそれがしは織田家が天下人になることも」
「ないとですか」
「やはり思えませぬので」
 心から信じる宗滴の言葉でもというのだ。
「ですから」
「それでは」
「ここは動くべきでないとです」
「殿はお考えですか」
「そう考えておりまする」
「そうですか、では」
「当家は兵を出さずこのままです」
 一向一揆に備えてというのだ。
「やっていきましょう」
「ですか」
「はい、そうしましょう」
「わかり申した」
 宗滴は肩を落とした、そのうえで義景の言葉に応えた。
「その様に」
「若し浅井家が滅びるなら」
「そうした風になれば」
「助けましょうぞ」
「その時になれば」
「逆にそうもならなければ」 
 さもなければというのだ。
「動かないでおきましょう」
「そうですか」
「こう言ってしまうと」
 義景は彼なりの読みも見せた。
「浅井家を助けることになりますが」
「浅井家は敗れる」
「数が違いまする」
「浅井家の兵は一万」
「六角の兵は普通に二万で」
 それにというのだ。
「さらにですな」
「銭がありますので」
 それ故にというのだ。
「あと五千はです」
「雇えますな」
「はい」
 まさにというのだ。
「それだけの数が」
「合わせて二万五千」
「浅井家はあと一千は使えますが」
 それでもというのだ。
「兵の数の違いがあり過ぎまして」
「敵わぬと」
「そうかと。浅井家が滅びますと」
 そうなった場合についてもだ、義景は話した。 
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