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戦国異伝供書

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第七十三話 元服前その七

「それでもです」
「手を結ぶべきですか」
「はい、織田弾正殿の資質を思えば」
 うつけと言われる彼でもというのだ。
「間違いなくです」
「数年のうちに」
「それこそ何百万石の力を手に入れ」
 そしてというのだ。
「天下もです」
「手に入れられると」
「今でこそ今川家と斎藤家に挟まれていますが」
「その両家も」
「退け降し」
 そうしてというのだ。
「そこまでの御仁になりましょう」
「何百万石の力を持つ」
「尾張だけで六十万石です」
 織田家の領国のみでというのだ。
「そして伊勢に志摩、美濃とです」
「そうした国々も手に入れる」
「これだけで二百万石を超えます」
「天下で屈指の家ですな」
 二百万石となると、とだ。義景も言った。
「三好家が今天下第一ですが」
「その三好家にも勝ち」
「天下人となると」
「左様です」
「従曾祖父様のお言葉です」
 自分を幼い頃から支えてくれてあらゆることの師であった、それだけに義景は宗滴に全幅の信頼を置いていて彼の言葉は確実に信じる。
 だがそれでもだ、彼はその宗滴に話した。
「信じぬ筈がないですが」
「まさかともですか」
「その気持ちもあります」
 信長、彼についてというのだ。
「まさかです」
「天下人になるとは」
「思えませぬ」
「数年経てばわかります、ですが」
「ですがとは」
「その数年先でもです」
 つまり信長が天下人になってからもというのだ。
「遅くありませぬ」
「では」
「その時にです」
「織田家と手を結び」
「家を残しましょう」
「そうすべきですか」
「どのみち当家は天下を望んでいませぬ」
 越前一国、それだけで充分だというのだ。
「ならです」
「それでよいと」
「そう思いまする」
「格下の家でも」
「格下でもです」
 家としてそれでもというのだ。
「それは簡単にです」
「変わると」
「織田弾正殿が官位を得られれば」
 それでというのだ。
「変わりましょう」
「幕府や朝廷の役職や官位を得れば」
「織田家の今の格では確かに幕府の要職には就けませぬ」
 管領等のそれにはだ。
「また官位もです」
「そちらもですな」
「然程です、ですが」
 宗滴はさらに話した。
「平入道殿を見ますと」
「あの御仁ですか」
「白河院のご落胤だったという話もありますが」
 平清盛、彼にはだ。 
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