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第二章
「実は政は不得手だな」
「そうだな」
「実は宰相のジャアファル殿の手腕だ」
「カリフの政自体はよくない」
「あれでは確かな補佐役がいないとな」
そのジャアファルの様なというのだ。
「しくじる」
「その時が狙い目だが」
「国自体に勢いがある」
アッバース朝そのものにというのだ。
「運がいい、あのカリフは」
「これでは迂闊に手が出せない」
例え彼の政治が実は悪くともというのだ。
「暫くはな」
「では彼が悪政を敷く時を待つか」
「そうするか」
こう話してだ、ウマイヤ朝は彼の政治力のことを話していた。
とかくハールーン=アル=ラシードというカリフは問題が多かった、それは多くの者がわかっていた。だが。
彼の処刑に眉を顰めさせるバグダートの民達はこうも言った。
「いや、今日もお元気そうだ」
「真面目に信仰を果たされておられる」
「そして国のことを考えて下さる」
「またビザンツと戦うらしいな」
ビザンツ帝国と、というのだ。
「ご自身が兵を率いられて」
「実に勇敢な方だ」
「敵が誰であろうと恐れられぬ」
「勇気のある方だ」
「国を真剣に思われ」
「そして真面目だ」
「なら勝ってもらいたい」
次の戦もというのだ。
「是非共な」
「立派なカリフ様だよ」
「全くだ」
バグダートの者達はこう話してカリフを慕っていた、立派なカリフであると。そしてそれは彼等だけでなく。
彼の暮らしを見た唐の商人達は彼の贅沢については過ぎると思いつつもこうも話した。
「文化をよく見ておられるな」
「バグダートの街並みは見事だ」
「街自体が芸術だ」
「宮殿だけではない」
ただ贅沢を楽しんでいるだけではないというのだ。
「イスラムは像を崇めないが」
「その為絵もあまり描かれないが」
「しかし街並みは見事だ」
「よく整えている」
「そして詩人も保護している」
「これはという詩人を多く用いている」
「彼等のよい詩人への褒美も弾んでいる」
こうも言うのだった。
「ただの贅沢好きではない」
「より大きい」
「己の欲のみでないカリフだ」
「そのことは間違いない」
「ならな」
「全体的に見ていいカリフだな」
「そう言えるな」
こうしたことを話してだ、そのうえでだった。
彼等もハールーンを認めた、そしてだった。
バグダートで気持ちよく商売をしていった、そして敵であるウマイヤ朝の者達もだった。
コーランの教えからは決して外れず動く彼にはこう言った。
「真面目なムスリムではある」
「如何に短気で実は治めることは不得手でも」
「イスラムの教えから外れることはない」
「決してな」
「そのことは認めるしかない」
「我々にしても」
「どうもな」
こう言ってそのことを認めてだった。
イベリア半島から攻めようにもこう言うばかりだった。
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