年上でも
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第三章
祖母のお腹は日増しに大きくなっていき可奈が高校に入学してから暫くしてだった。無事に元気な女の子が生まれた。
その娘を見てだ、可奈は不思議な顔になって言った。
「この娘がなのね」
「ええ、あんたの叔母さんよ」
母は可奈に笑顔で話した。祖母の出産祝いで病院に来た時のことだ。
「この娘がね」
「波奈ちゃんよね」
「そうよ、覚えておいてね」
「ええ、何か顔はね」
その『叔母』の顔を見た、まだ皺くちゃであるが。
「私達の顔ね」
「お祖母ちゃんの顔ね」
「私達皆お祖母ちゃん似だからね」
「そうよ、皆ね」
これは母の今は真ん中になる妹もだ。
「お祖母ちゃんの顔でね」
「この娘いえ叔母さんもなのね」
「そうよ、いやしかしお母さんよく産んだわね」
母は自分の母も褒めた、まだ保育器の中にいる自分の妹を見ながら話した。
「頑張ったわね」
「そうよね、本当に五十六歳でね」
「よくやったわ」
「妊娠したのが五十五歳で」
「産んだのが五十六歳でね」
「本当に高齢出産よ、それでね」
母は娘にさらに言った。
「この娘可愛がってあげてね」
「波奈叔母さんをなのね」
「叔母さんでも」
血縁上そうなることは事実でもというのだ。
「それでもお姉さんなんだから」
「年齢はずっと上なのよね」
「あんたは高校生でね」
「この娘は赤ちゃんで」
「年齢のことは何があっても変わらないから」
それでというのだ。
「宜しくね」
「それじゃあね」
二人でだ、こうした話をしてだった。
可奈は姪とはいえ年上の親戚として波奈の面倒を見た、波奈はすくすくと成長していき可奈が高校を卒業して大学生になった時には。
しっかりと喋って元気に遊ぶ様になっていた、それで休みの日はよく彼女を連れて外で遊んでもいたが。
よくだ、可奈は人にこう尋ねられた。
「妹さんですか?」
「違います」
「娘さんですか?」
「違います」
いつもこう答えた、そしてこうも答えた。
「叔母です」
「えっ、叔母って」
「ですから叔母です」
こう答えるのだった。
「この娘は」
「叔母さんって」
「ですから母の妹で」
それでというのだ。
「私の叔母さんなんです」
「そうなんですか」
「叔母さんですか」
「歳が離れていて」
いつもこのことも話した。
「というか私の方が年上ですが」
「それでもなんですね」
「叔母さんなんですね」
「血縁上では」
「そうなんです、お姉ちゃんって言われてますけれど」
それでもというのだ。
「叔母さんなんです」
「そうは見えないですが」
「この娘が叔母さんで」
「貴女が姪御さんですね」
「そうなるんですね」
「そういうことです」
これが可奈のいつもの返事だった、だが波奈の方は可奈をいつもお姉ちゃんと呼んでいた。それも笑顔でだった。
「私お姉ちゃん大好きよ」
「そうなのね」
「うん、けれどお姉ちゃんじゃないのよね」
「波奈ちゃんのお姉ちゃんはお母さんだから」
可奈から見てというのだ。
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