年上でも
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第一章
年上でも
池上可奈は母からその話を聞いて最初は眉を顰めさせた、そしてその後で首を傾げさせながら母に問い返した。
「お母さん今何て言ったの?」
「だからお祖母ちゃん、私のお母さんがね」
「妊娠したの」
「そうなの、三ヶ月らしいわ」
「いや、お祖母ちゃん五十五歳じゃない」
カナはその年齢を言った。
「そうじゃない」
「そうだけれどね」
「妊娠したの」
「有り得ないことじゃないでしょ」
「いや、有り得ないでしょ」
母にすぐに言い返した。
「五十代で妊娠して」
「出産とかっていうのね」
「高齢出産どころじゃないでしょ、というかよ」
可奈はさらに言った。
「お祖父ちゃんも六十歳で」
「還暦でね」
「もう定年なのに」
「それでもね」
「お祖母ちゃん妊娠してなの」
「生むってね」
その様にというのだ。
「言ってるから」
「そうなのね」
「信じられないみたいね、まだ」
「当たり前じゃない」
可奈は家族が食事を摂っているテーブルの自分の席に座っている、濃い眉に先が少し尖ったやや面長の顔で少し厚い唇とはっきりした目を持っている。長い黒髪は量が多く少し癖がある。背は百六十位で中学三年にしては胸が大きい。
今は上下共に緑のジャージだ、その服装で牛乳を飲みつつ言った。
「私十五歳でお母さんもね」
「三十五でね」
「お祖母ちゃん五十五なのに」
「それでね」
「お母さん三十五歳で弟か妹出来るのよ」
「ちょっとないっていうのね」
「そうよ、どうなのよ」
これはというのだ。
「想像も出来ないわよ」
「あんたはそう言うけれどね」
「有り得ることだっていうの」
「そうよ、むしろ五十五歳でまた赤ちゃん産むなんて」
母は娘に笑顔で言った。
「お祖母ちゃん立派よね」
「立派じゃないから。心配よ」
「高齢出産だからっていうのね」
「そうよ、それにお母さんの兄弟ってことは」
可奈はさらに言った。
「私にとってもね」
「そうよ、叔父さんかね」
「叔母さんよね」
「そうなるの」
「無茶苦茶不思議な気分よ」
可奈は牛乳を飲みつつこうも言った、大好きな牛乳だが今はどうもその味をよく味わえていない。
「それって」
「そう言うのね」
「だってお祖母ちゃんが五十過ぎで赤ちゃん産んで」
「その赤ちゃんが叔父さんや叔母さんだから」
「物凄く不思議よ。もう叔母さんはいるけれど」
「お母さんの妹のね」
「お父さんは三人兄弟の一番上で叔父さんは二人いるけれど」
それでもとだ、可奈はさらに言った。
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