占い師の林檎
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第一章
占い師の林檎
かつてアブー=マーシャルという占い師がいた。
中央アジアのバルフで生まれそうしてカリフに仕えた。
そこではマーシャル以外にももう一人かなりの占い師がいた、二人共占星術を使い外れることはなかった。
それでだ、ある日カリフは二人にこう言った。
「そなた達に頼みがある」
「占いですね」
「それのことですね」
「そうだ、今わしは何を考えているか」
それをというのだ、見ればマーシャルは白い服とターバンを身にまとい黒い髭が顔の下半分を覆っている、もう一人はウマム=マラームと名乗っていたが彼は黒い服とターバンを身にまとい口髭は長く顎鬚は下顎だけにあり胸まである。二人共彫が深くきりっとした顔立ちである。だがマーシャルの目は青でマラームの目は青だった。
その二人にだ、カリフは問うたのだ。
「当ててくれるか」
「それでは」
二人は同時に頷いた、そしてだった。
共に占いをはじめた、その後で二人でカリフに言った。
「カリフのお考えは胎児ですね」
「腹の中にいる赤子のことですね」
「私の占いではそう出ましたが」
「私もです」
マーシャルもマラームも言うのだった。
「それも人ではない」
「占いではそう出ました」
「牛ですね」
「あの家畜のことですね」
「見事だ、二人共当てるとはな」
カリフは二人の返事に満面の笑みで応えた。
「流石と言っておこう、わしは今実際にだ」
「王宮の牛ですね」
「王宮で使われている」
「あの牛のことですね」
「今度子が生まれる」
「あの牛がどの様な子を産むか」
それがというのだ。
「わしは気になっているがそれも占えるか」
「わかりました」
「それではです」
二人はカリフの言葉に応えた、そして再び占いをはじめてだった。
まずはマラームがカリフに言った。
「黒で尾に白いぶちがあります」
「そうした牛か」
「はい、今度生まれる牛は」
「そなたの占いはわかった、ではだ」
カリフはマラームの占いを聞いた、それで今度はだった。
マーシャルに顔を向けてだった、彼に問うた。
「そなたの占いはどう出た」
「黒で」
「そなたの占いでもそう出たか」
「そして額に白い星があります」
こうカリフに話した。
「そう出ました」
「そうか、では間もなく産まれる」
カリフはマーシャルの占いも聞いて述べた。
「その時にわかるな、色が黒なのは同じだが」
「それでもですね」
「どういった模様か」
「尾に白いぶちがあるか額に白い星があるか」
マラームの占いのこともマーシャルの占いのことも言う。
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