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剣製と冬の少女、異世界へ跳ぶ

作者:炎の剣製
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066話 文化祭編・開催3日目(01) 対策会議

 
前書き
更新します。


ふと、暁の方でネギまで士郎が活躍する作品が少ないという話を受けまして、調べてみたらやっぱり結構個人サイト閉鎖系が多かったですね。


それより書いてて楽しいー!吸血鬼になったエミヤよりも捗り具合がパネェ!




――――追記。

足りない描写などを追加で書き起こしました。
これで繋がりは出来ていると思います。 

 
side 衛宮士郎


さて、どうするか。
今は誰にも使われていないという図書館にてネギ君は休ませている。
そのネギ君がなぜか魔力枯渇でぐったりとしていて今は横になっている。
姉さんとランサーもすでに呼んであるのでしばらくしたら来ることだろう。

「それで? みんなはどうしていきなり空の上になんていたんだ…? このかと刹那の叫びが仮契約(パクティオー)カード越しに響いてきたからなんとかすぐに駆け付ける事ができたが、もう少し遅かったら大けがどころではなかったんだぞ?」

それで全員は黙りこくってしまっていた。反省はしているようなので構わないが。
それとなぜか俺の姿を見るなり何度も悲痛そうな顔になるのは何故なのだろうな?
俺は別に彼女達を悲しませることなどした覚えはないのだがね。

「その、士郎さん……」
「なんだ、刹那?」
「私達のために怒ってくださるのはとてもありがたいのですが、今は急を要する事態が迫っていますので、先ほどまで私達が体験してきた事を説明させてもらえませんか…?」

どこかしおらしいそんな刹那の言葉にひとまず内容を聞こうとしたが、

「あ、せっちゃん。イリヤさんにも……」
「そうですね。大事な事です。士郎さん、イリヤさんは?」
「もうすぐ来る頃だろう。ならそれまで待っているとしようか。ネギ君もこの調子だしな…」

そう言いながらも俺はネギ君の頭を撫でてやる。
またなにやら無茶をしたみたいだしネカネさんに頼まれている手前、後でしっかりと叱ってやらないとな。
しばらくして、姉さんとランサーが図書館へと入ってきた。

「シロウ。どうしたの? さっきは急に駆けて行っちゃうし」
「そうだぜ。少しは説明してからいきやがれよ」

二人はそう愚痴を零していたが、ふと一同の姉さんを見る視線がとても、なんというか嬉しいものを見たような感じである。
先ほどからなんか調子が狂わされるな…。
ふと、このかが持っている剣に目を向ける。

「このか。その剣は…アゾット剣か?」
「は、はいな…」
「なぜこのかがその剣を…?」
「あう…そのぅ…」

このかが泣きそうな顔になりなにかを語ろうとしたが、そこで刹那が手で制して、

「お嬢様。その件は今は士郎さんには…」
「…………うん」

なにやらまた訳アリのようだな。
俺に内緒ごとか。
なぜか少し寂しい気持ちになるな。

「なにやら深い事情がありそうだな。分かった…俺に伝えたいことだけ教えてくれ」
「はいな…」
「それでは聞こうか。君たちに何があったのかを…」
「わかったっす。士郎の旦那、おれっちから説明しやすぜ」
「頼む、カモミール」






それからカモミールの説明を聞いていき、次第に事の重大さに真剣な思考にならざるえなくなってきた。
ネギ君達が超の策略によって飛ばされてしまったという一週間後の未来での出来事。
魔法が世界に完全にバレて魔法先生及び魔法生徒達は責任を取らされてオコジョの刑にされる、他にもあるがかなりひどい世界になり果てていたという。
それを全部聞き終えて、

「なるほど…………大変だったんだな、お前達。その世界でも俺は力にはなれなかったのだろう?」
「そ、そうですね…士郎さんも負けてしまったらしいですから」
「シロウも負けちゃったんだ…」
「ってことは俺も負けたのか?」

ひどく驚いている姉さんとランサー。
それとどこか言い淀む刹那。なにかまだ俺に対して隠し事があるようだな。
それにしても、超はやはり天才だったわけか。
一般人も巻き込んで手を出せない魔法使い達の行動を制限し、さらには時間跳躍弾を使って強制的に退場させるとは…。

「その、士郎さん……」
「なんだ、アスナ?」
「そのね……まだあってね」

どこか泣きそうな顔になっている。
見れば他の子達もだ。

「アスナ!! ダメや!!」
「このか!? で、でも!!」
「これだけはダメや! イリヤさんと約束したやろ!!」

未来の姉さんと…?
なにやら一番重大そうな事なんだろうな。
今はどうやら俺がいては邪魔だろうと感じた俺は、

「……わかった。少し外に出ていよう。姉さん、それにランサー、みんなの俺に話せない話を聞いてやってくれ」
「わかったわ、シロウ」

それで俺は一回席を立ったのであった。




◆◇―――――――――◇◆




side 衛宮イリヤ



さて、シロウも出ていったことだし、コノカ達の残りの話を聞かないとね。

「それでコノカ。それにみんな。シロウに話せないってことはなんなの…?」

そう聞いてみたのだけど、そこでコノカが涙を流しながら私に抱き着いてきた。
どうしたのかしら? こんなに涙を流して震えているなんて…。

「どうしたの…? 落ち着いてゆっくりと話してちょうだい」
「はいな…」

それでコノカ達の話を聞いていくうちに私は脳内が怒りに満ちていく錯覚を覚えてきた。
コトミネが生きていて、それだけならまだしも私の意識を乗っ取ってランサーに令呪で命令してシロウを殺させた、ですって…?

「悪い冗談ね…」
「ですが!」
「分かっているわ。みんなが嘘をついていない事は必死な顔を見ればわかるわ。それだけに腹立たしいのよ…。コトミネ、よもや私の大事なシロウを殺すだなんて…………フフフフ。どう料理してあげましょうか…?」
「奴を殺すなら任せな…あんときのツケをさらに倍にして殺してやるぜ…」
「フフフ……そうね、ランサー」

ランサーもいい感じにヒートアップしてきたみたい。
未来の自分事だとしても、犯してしまった過ちを心に刻んでいるのね。
そこに刹那がおずおずと私にあるコートを差し出してきた。
聞くとどうやら未来の私が、必ずコノカ達が戻ってくると予感していたらしく悪魔祓いのコートを作成していたらしい。見るからに私由来の呪詛が籠もっているのが分かるわ。
これは相当の憎しみでも込めないとできない所業だわ。さすが私ね。

それと、このかと刹那はシロウの魔力が込められているリンのネックレスと、『剣製の赤き丘の千剣』をアゾット剣に変化させて未来から持ってきたというのに消える気配のないシロウの形見を未来の私に託されたらしい…。
そう…未来のシロウの形見か。

「コノカ、それにセツナ……それを大事にしなさい。それはきっとあなた達を守ってくれるわ」
「はい…」
「はいな…」

まだ元気を取り戻せていないけど、いい返事ね。

「さて、それじゃ後の問題はやっぱり謎のエミヤの存在よね。コトミネに関してはあちらから勝手にやってくるでしょうけど、シロウと戦わせるわけにもいかないし…」
「それなら俺に戦わせろ、マスター。狂っているとはいえアイツと戦うなんざ俺の仕事だぜ?」
「そうね。任せたわランサー」
「おう」

さて、それじゃシロウの死はシロウには聞かせない方針でもって、シロウを中に戻ってくるように念話をした。




◆◇―――――――――◇◆



それから士郎が戻ってきたので一同はこれからの方針を話し合った。
夕映のアーティファクト『世界図絵』での裏も取れた話し合いが続いていく。
それで、まずはロボ軍団にスクナもどきの対処で六ケ所のどこかを死守して、その隙をついてどうにかして超を探し出して捕えるというカモの計画で話が進んでいくかと思われたときに、

「待ってカモ君……今の作戦はいいと思うけど、それだけじゃ足りないよ……」

ネギがなんとか体を起こしながらも、ネギなりに考えた作戦を一同に伝える。
それを聞いた全員はというと大きな叫びをあげながら、

「正気かよ兄貴!?」
「いいのいいの!? そんな面白い事をしちゃって!!」

それを聞いてハルナなどは涎を垂らすほどには壮大な計画をネギは提示した。

「ネギ君、君はそれでいいのか? 一般人をも巻き込むことになるんだぞ?」
「はい。でも、超さんを出し抜くにはこれくらいしないといけないとおもうんです。僕を軽蔑しますか? 士郎さん…」
「いや、君が導き出した結論なら学のない俺に比べればまともな部類だな。しかし、そうか……いっその事っというわけか。ある意味感心したぞ。ここまで成長していただなんてな。ネカネさんへの報告が楽しみだ」
「あれ…? 士郎さん、お姉ちゃんの事知っているんですか?」
「ああ。前に出張したときにな」

するとそれでどこかイリヤの顔が緊急時とは違った緊張感を滲みだしてきて、

「シロウ…? まさかネギの姉にまで手を出していないでしょうね…?」
「なんでさ? 手を出すって、そんな事をするわけないだろう?」
「そう…まぁ今はそれを信じてあげましょうか。いつかそのネカネって人に会いたいわね~。そうよね、コノカにセツナー?」
「はいな♪」
「お嬢様と同じですね…」
「コワッ……」


士郎は思わずたじろいでいた。
三人が出す気配がアクマのそれであったからだ。

「それじゃそういうことで皆さん、お願いします!」
「「「「「了解!」」」」

ネギの号令で一同は各自散会して各場所の説得へと向かっていった。





アスナと古菲の二人は3-Aの教室へと向かっていた。
目的は当然いいんちょ……雪広あやか、そして雪広コンチェルンのコンタクトを得るために。
だが、それでもアスナは気が進まなかった。
ただでさえ不俱戴天の敵とも言えるあやかに頭を下げにいかなければいけないという理由で悩んでいた。
しかし悩んでいても時間は進んでいて古菲は迷わずあやかがいるであろうお化け屋敷と化している教室内に入っていった。

「あ、ちょっとくーちゃん!」
「まぁまぁいくアルよ。いいんちょう、アスナが頼むごとがあるらしいネ!」
「あら、くーふぇさん。アスナさんがわたくしに頼み事……? なにか悪いものでも食べたんではなくて……?」
「ほらほら! やっぱこんな反応してくれやがって!!」
「アスナ。我慢するアルよ」
「うぐぐ……」

それでなんとか我慢したアスナはあやかに学園祭最終イベントの話を持ち掛けた。
それにはもちろんあやかは驚き、次には怒りを感じていた。
個人の頼みとはいえお金で物事を無理やりに動かす行為はあやかにとっては禁じ手といっても過言ではなかった。
それで当然二人はいい争いから殴り合いに発展するまでにはそう時間はかからなかった。
だが、そこで古菲の神の一手が下される。

「これもネギ坊主のたっての頼みアルが…」
「ッ!? くーふぇさん、なぜそれを早くいってくださらないの!? ネギ先生の頼みなのでしたらこの雪広あやか! 火の中水の中どこまでもお供致しますわ!」

一気に解決してしまったのでアスナはこうなることが分かっていただけに呆れるしかなかったのである。






そして、次にこのかと刹那とカモは学園長へと向かった。
学園長にこのかと刹那の未来で起きた事を語ると学園長は目をクワッ!と見開いて、

「なんと! そのような事が…ッ!」

それで一緒にいた刀子とともに話し合いをした結果、

「あいわかった。よく知らせてくれたの。後は儂らでなんとかするから二人は安心して学園祭を楽しんでくれ」
「それじゃ間に合わないんや! 士郎さんが未来で死んでもうたんよ!!?」
「なんじゃと!?」
「なんですって!?」

このかの心からの叫びに再度学園長と、そして親交がある刀子は驚愕の表情をした。
それでまだ落ち着いている刹那が未来での士郎の死亡する経緯などを説明していき、そこに畳みかけるようにカモが出てきて、

「よおよお! 学園長さんよ、それじゃまた負けちまうぜ? 後手後手になって負けちまったのが未来の結果なんだ! ならよー、もっとおおっぴらに事を運んでいこうぜ?」
「ふむ、聞こう……」
「ついてはこれを用意してもらいたいんでぃ!」

そう言ってカモは夕映の世界図絵からの情報で本国で死蔵されている武装各種をすぐに取り寄せてほしいと相談する。
学園長の手腕ならそれくらい可能だろ?とも言って。

「しかしのー……」
「なぁに、世界に魔法がバレるよりはいいだろう? おまけに大事な孫娘の将来の相手の命も守れる。まさに一石二鳥じゃねーか」
「も、もうカモ君! 恥ずかしいこと言わんで……ッ!!」

このかが照れから顔をゆでだこの様にしてカモをシェイクしていたが些細な事である。







…………しばらくして、『最終日学祭全体イベント』と銘打った『火星ロボ軍団 VS 学園防衛魔法騎士団』という内容のイベントを3-Aのメンバーが中心に学祭中に配っていった。
佐々木まき絵などは本国から取り寄せた魔法を放つ杖やバズーカなど各種のものを、あえて一般人の人たちに見せて宣伝していた。

「今から見本を見せます! カワイイとバカにするなかれ! いきますよ! 敵を射て(ヤクレートウル)!!」

瞬間、魔法の杖から光の光線が発射され、光のシャワーを降らせる。

……まき絵自身はまさか本物の魔法道具とは気づいていないだろう事もさらに踏まえている。






さらにアスナも朝倉を捕まえていた。

「朝倉! あんた、私達の苦労も知らないでのほほんとしていてー!?」
「まぁまぁ、アスナ。あたしはね……そうさね。誰の味方でもない、真実の奴隷ってことさ」
「なにが真実の奴隷よ! 下手したら世界に魔法がバレてネギも高畑先生もオコジョにされて、士郎さんなんか……えっぐ……」
「ちょ!? 士郎さんになにがあったのさ!? 泣き出すほど!!?」

それでアスナは事の内容を説明していくと、朝倉よりも一緒にいたさよの方がショックがでかかったらしく、

『朝倉さん! もうこんな悪事はやめましょう!!』
「さよちんもそう言うの!? あー、もう……せっかく大儲けできると思っていたのに……わかったよ! なにをすればいい!?」


こうして少し無理やり説得して味方につけた。




さらにはこのか達の説明によって判明した超の情報を魔法使い達に学園長が中心になって話していき、さらには魔法使い達の役割なども話していく。(ネギの考えだとは敢えて告げずに。明石教授などはネギの案だと薄々気づいていたようであるが……)


「さて、諸君。事は一刻を争う。全力でこの作戦に当たってくれい!」
『ハッ!!』







…………そうして、噂はだんだんと伝播していき、参加するという一般人の数が次々と増大していく中で、






士郎は赤原礼装のフル装備になって、いつか来るであろう時に備えてランサーとイリヤと並んでいた。

「シロウ。いいわね? 私に何かあっても気にせずに戦ってね? ランサーにあの謎のエミヤも任せるつもりだから」
「しかし、いいのかね? あれは俺が本来相手をしないといけない相手だろう?」
「まぁ、そう言うなや。俺に任せておけよ」
「なぜか妙に疎外感を感じるのは俺の気のせいか?」

それで士郎はやはり自身がいなかった時にこのか達になにかを聞いたのだろうと考えていた。
それとイリヤが来ている見覚えのないコートに目をやって、

「それと、そのコートはどうしたんだ、姉さん? それもなにやら魔力を感じるが、どちらかというと呪詛が込められているようだが…」
「シロウは気にしないの! シロウはおとなしくセツナ達を手伝ってあげなさい!」

ビシッ!とイリヤに指を向けられた士郎は「やれやれ」と思いながらも、「了解した」と返事をした。




そして、ついにその時が来たのだろう。
湖の方から次々と田中さんという名の機械兵士が現れたのは…。

「姉さん! では行ってくるぞ!」
「ええ!」

それで士郎は干将莫邪を構えながら疾駆していった。











別の場所では、


(ふふふ……なにやら騒がしいが、私の目的であるランサーの令呪ともどもあの衛宮士郎やイリヤスフィールも葬るとしようか…)

コトミネは静かに動き出した。
今から未来の情報を得たイリヤとランサーの手によって逆襲されるとも露知らずに…。









こうして、世界の命運をかけた一大決戦の火蓋は切って落とされたのであった。


 
 

 
後書き
士郎には未来で死んだ情報は明かしませんでした。イリヤの手でないとね。
次回からいろんな視点に飛び飛び描写が増えると思います。
 
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