戦国異伝供書
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第七十三話 元服前その四
「ですから」
「流石に殿を手にかけるなぞ」
「それはあってはならぬことです」
「人の道に反します」
「うむ、だからじゃ」
それでと言うのだった。
「わしもそれは絶対にせぬ、これまで言った通りな」
「ですな、戦国の世であろうとも」
「斎藤家の様なことがあってはなりませぬ」
「絶対に」
「何があろうとも」
「道三殿は因果応報というが」
それでもとだ、猿夜叉は斎藤家のこともここで話した。
「讒言を繰り返し家中で頭角を表し」
「土岐家の中で」
「そうなっていきましたな」
「暗殺も随分したとか」
「そして挙句はでしたな」
「ご主君の土岐殿を」
「その報いとしてな」
下剋上、それのというのだ。
「ご子息殿に背かれてな」
「ああなってしまいましたな」
「戦になり敗れ」
「無残な最期でしたな」
「実に」
「あれを見るとな」
どうしてもというのだ。
「自業自得かも知れぬが」
「それでもですな」
「道三殿ひいては斎藤家の様なことはですな」
「決してなってなりませぬな」
「何があっても」
「左様じゃ、それでじゃ」
だからだというのだった。
「わしは斎藤家の全てを逆の手本としてな」
「そしてですな」
「そのうえで、ですな」
「ことを進めていかれますな」
「これからも」
「そうしていく」
これからもというのだ。
「だから父上とのことも」
「そのことはですな」
「されませぬな」
「何があろうとも」
「そうじゃ、だが家督はな」
これはというのだ。
「やはり元服と共にな」
「継がれますか」
「その様にされますか」
「そこは」
「その様にですか」
「動きたい、その際にな」
家臣達を目で見回してだった、猿夜叉は家臣達に言った。
「力を貸してくれるか」
「喜んで」
「そうさせて頂きます」
「若殿の、そして浅井家の為に」
「我等は」
「頼むぞ、だが断じてじゃ」
猿夜叉は強い声で家臣達にこうも言った。
「父上を傷付けてはならぬ、そして家中で一滴の血もじゃ」
「流してはなりませぬな」
「そのこともですな」
「してはなりませぬな」
「そのことしかと頼んだ」
こう言ってだ、そしてだった。
猿夜叉は家臣達と今後についてさらに話し合うことになった、そしてだった。
そのうえで近江の領内も暇があれば見て回り兵達の鍛錬も進め朝倉家や斎藤家の状況も見極めた、するとだった。
その中で猿夜叉はまずは斎藤家について安心した。
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