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ドリトル先生の林檎園

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第十二幕その六

「僕のことは」
「深刻じゃないけれどね」
「それでもね」
「まあ何ていうかね」
「先生にとっていいことになるよ」
「頑張ったらね」
「そうなんだね、よくわからないけれど」
 もっと言えば全くわかっていません、先生だけは。
「明日はね」
「うん、日笠さんのところに行って」
「それでね」
「お土産渡して」
「そしてそのうえで」
「お話してね」
「そうしてね」
 皆で先生に言います、先生がわかっていないことはわかっていても。
 それで次の日実際にでした、先生は大学に行くとすぐにでした。
 動物の皆に急かされてお土産を持って動物園に行きました、そうしてそのうえで日笠さんとお会いしました。
 先生は挨拶の後で、でした。日笠さんに言いました。
「実は長野県に行っていまして」
「学会とフィールドワークですね」
「はい、それで昨日帰ってきまして」
 それでというのです。
「日笠さんにもお土産を買ってきました」
「私にですか?」
 先生にそう言われてです、日笠さんはお顔をぱっと明るくさせました。
 そうしてです、先生にこう言いました。
「嬉しいです」
「嬉しいですか」
「はい、とても」
 こう言うのでした。
「私の為に買ってくれるなんて」
「日笠さんはお友達ですから」
「お友達、ですか」
「はい、ですから」
 お友達と言われて日笠さんは微妙なお顔になりました、ですが先生はそのことには気付かずさらにお話しました。
「是非にと思いまして」
「それで、ですか」
「これを」
 長野県の観光土産の中で美味しい食べものや女の人向けのお土産を出しました。そうして日笠さんに言うのでした。
「どうぞ」
「有り難うございます、では」
「それではですね」
「美味しく食べさせてもらって」
 そしてというのです。
「アクセサリーは使わせてもらいます」
「そうさせてもらうと有り難いです」
「それでは、あと」
「あと?」
「今回のお礼に」
「お礼はいいです」
 謙虚な先生はこう返しました。
「僕は差し上げたいと思っただけですから」
「だからですか」
「はい、このことは」 
 特にというのでした。
「別に」
「いえ、そういう訳にはです」
「いかないですか」
「はい、ですから」
 日笠さんは先生に必死な感じでさらに言いました。
「今度ご馳走させてもらいたいですが」
「ご馳走といいますと」
「実は私最近毎日自炊していまして」
 それでというのです。
「お昼もお弁当を作っていまして」
「それで、ですか」
「先生に今度です」
「お弁当をですか」
「それをお礼にしたいですが」
「それは有り難いですね」
 先生は日笠さんの気持ちには気付いていませんが好意には気付いています、それで笑顔で応えました。 
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