恋姫伝説 MARK OF THE FLOWERS
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第七十八話 呂布、晴れないのことその七
「所詮は見果てぬ夢なんだよ」
「そうだよな。俺達に自由なんて」
「もう絶対にないでやんすよ」
チャンもチョイもそれは同じだった。やはり肩を落としている。
「じゃあ諦めて」
「戦って働くでやんすよ」
「俺達って結局地獄にいるのと同じだよな」
「その通りだケ」
アースクェイクと幻庵も言う。
「あの二人と一緒になったばかりにな」
「修業と強制労働の日々だケ」
「では行こう」
「汗を流しに」
キムとジョンだけが機嫌がいい。こうしてだった。
彼等は先陣となり先に出陣した。二人以外にはだ。誰もが肩を落としての出陣だった。
そしてだ。呂布もだった。出陣に向かう。しかしだ。
呂布も晴れない調子だ。この彼女を見てだ。
陳宮がだ。こう彼女に言うのだった。
「あの、恋殿」
「何?」
「出陣となったのです」
「うん、なった」
「あの、それでは今から何か食べるのです」
「食べる?」
「はい、食べるのです」
呂布に笑顔を向けてだ。陳宮は言うのだった。
「御饅頭にしますか?」
「うん。それなら」
「御饅頭にするのです」
「うん、そうしよう」
恋は力ない調子で頷いて返した。
「今から」
「はいなのです」
「ねね」
呂布は陳宮の名前を呼んできた。
「それでだけれど」
「それで?」
「二人で食べる」
こう陳宮に言う。そしてそれだけではなくだ。
呂布はだ。彼女にこんなことも言った。
「できれば二人だけじゃなくて」
「他の人ともなのです?」
「月と。食べたい」
こう言うのだった。
「一緒に。食べたい」
「月様となのです?」
「そう。月は都に間違いなくいる」
呂布は茫洋とした感じで言うのだった。
「その証拠に詠は都を絶対に離れない」
「確かに。詠殿は月様を大事にされています」
「前から思っていた。だから離れない」
「そうなのです」
「そう。多分月が出て来ないのは」
「御身体が悪いのです?」
「多分悪くない」
それをだ。呂布は察したというのだ。
「これは恋の勘だけれど」
「悪くないのならどうして出てこられないのです?」
「閉じ込められているのかも知れない」
そうではないかというのだ。
「宮廷の奥深くに」
「宮廷の」
「だから出て来られない」
そうではないかというのである。
「ひょっとしたら」
「だとしたら誰がそんなことを」
「よくあることだけれど」
ここでまた言う呂布だった。
「死んだと思ってる奴が生きている」
「死んだと思っていても?」
「そう、実は生きている」
それを言う呂布だった。
「となると」
「まさか。あいつが」
「あいつ?」
「そう、あいつ」
こう言うのである。
「あいつが生きている」
「誰なのです、一体」
「張譲」
呂布はこの男の名前を出した。
「あいつが」
「そんな筈はないのです」
陳宮はだ。その名前を聞いてだ。
驚いた声をあげてだ。呂布に対して言うのだった。
「あいつは死んだのです。処刑されたのです」
「誰が処刑した」
そのことをだ。呂布は陳宮に問うた。
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