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鉞担いだ

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第一章

                鉞担いだ
 坂田金時は源頼光に仕える四天王の一人だ、その強さはあまりにも有名で鬼も普通に退治出来る程だ。 
 しかも気さくで鷹揚で明るい性格であり弱きを助け困っている者を放っておけない。特に子供達に優しい。
 そうした人物なので頼光とその家臣達の中で特に人気がある、だが子供達はその金時について言うことがあった。
「坂田様って刀使うよね」
「とても大きな刀をね」
「いつも刀使って」
「そして鬼も盗人もやっつけてるけれど」
「坂田様っていうと」
 子供達は言うのだった。
「鉞だよね」
「そうそう、鉞担いだね」
「坂田様の歌であるよね」
「子供の頃そうだったんだよね」
「坂田様は金太郎っていって」
「それで熊に乗ってね」
「いつもお相撲の稽古していたんだよね」
 都でも有名なこのことが話されるのだった。
「それで今みたいな強さを身に着けたっていうけれど」
「坂田様実際は鉞使わないね」
「刀がお得意で」
「弓矢も使われるらしいけれど」
 どちらも特に弓は武士の嗜みなので彼も使うのだ、ただし金時は力自慢でありどちらかというと相撲等力技が得意だ。
「それでもね」
「どうして鉞使われないのかな」
「坂田様っていうとそれのイメージあるけれど」
「刀や弓矢ばかりで」
「お相撲はわかるけれど」
 それでもというのだ。
「どうしてかな」
「鉞使われないのかな」
「折角だから使って欲しいのに」
「坂田様にはね」
 こんなことを話していた、そしてだ。
 このことは頼光の耳にも入っていた、それで金時本人に言うのだった。
「お主が鉞を使わぬことをな」
「都の子供達が噂していますか」
「うむ」
 その通りだというのだ。
「そうなっておる」
「そのことはそれがしも聞いています」
 坂田も知っているというのだ。
「子供達に直接言われることもありますし」
「やれやれ、子供は遠慮せんのう」
 頼光は金時のその言葉に笑って応えた。
「お主に直接聞くとは」
「ははは、子供はそうであってこそです」
「よいか」
「それがしはそう思っていますので」
「そうか、しかしな」
「はい、鉞のことはですな」
「やはり言われておる」
 実際にとだ、依光はまた金時に話した。
「その様にな」
「左様ですな」
「そしてその訳はな」
「はい、武士ですと」
 この立場だと、とだ。金時は頼光に答えた。
「やはりです」
「使うものはな」
「刀かです」
「弓矢であるな」
「その二つです」
「うむ、お主は武士じゃ」
 まさにとだ、頼光は答えた。
「紛れもなくな」
「はい、兵とも違います」
「そうであるからな」
「兵も刀や弓矢を違いますが」
「身分としてな」
「他の得物も使います」
 刀や弓矢以外のものもというのだ。 
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