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ヘタリア大帝国

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TURN30 左遷その十

「甘くないチョコレートなぞな」
「本当にレーティアは甘党よね」
「駄目か?それは」
「人の好みはそれぞれだからね」
 それでだとだ。グレシアはこう言った。
「まあそれでもね。太るってことはね」
「頭の中にいつも入れておかないといけないな」
「そういうことよ。太めアイドルになりたくないならね」
「私が太るとな」
 自分でもだ。レーティアはわかっていた。
 それでだ。こう言うのだった。
「どうも今一つ似合わないな」
「貴女は今が一番いいのよ」
「そうなのか」
「小柄で胸がなくて」
「いや、胸がないことはまずいのではないのか?」
「甘いわ!」
 急にだ。グレシアは強い声になった。
 そしてだ。こう言ったのだった。
「貴女は何もわかってないわね。胸はね」
「大きくないと駄目ではないのか?」
「巨乳には巨乳の、貧乳には貧乳の素晴しさがあるのよ」
「そうなのか」
「ええ、そうよ」
 グレシアは胸、その豊かな胸をぶるぶると振るわせながら胸を張って豪語する。少なくともその胸はレーティアのそれを圧倒している。
「じゃあ聞くけれど貴女は大柄な男の人しか好かれないと思うかしら」
「ドクツは比較的大柄だが」
 ドクツ陣の特徴の一つだ。
「しかしそうでもないだろう」
「そうね。小柄な人でもいいという娘はいるわね」
「私がマンシュタインと共に歩く」
 ドクツ軍人の中でもとりわけ大柄な彼の名前が出る。
「どう思う」
「大人と子供ね」
「私は背にはそれ程コンプレックスを持っていないが」
 胸とは違っていた。このことについては。
「しかしマンシュタインと共にいるとだ」
「背が違い過ぎるわね」
「困る。そういうことだな」
「そうよ。だから小柄な男の人がいいという人もいるのよ」
 そしてだというのだ。
「胸も同じよ」
「そうなるのだな」
「ええ、そうよ」
 また言うグレシアだった。
「わかったら。いいわね」
「胸が小さいこともか」
「貴女のチャームポイントと認識することよ」
「そうなるのだな」
「ムッツリーニさんみたいなタイプもいるけれどね」
 胸の大きいだ。グレシアと同じく。
「それでもだからね」
「ならいいのだがな。しかしだ」
「しかしっていうと?」
「私はあの人は嫌いではない」
 レーティアは今度はムッチリーニについて話した。
「むしろ好きだ」
「それもかなりよね」
「正直北アフリカの件が呆れたがな」
「予想を遥かに超える弱さだったわね」
「全く。あの時は焦った」
 さしものレーティアもだ。そうなったのだ。
「だがそれでもだ」
「悪い人じゃないのよね」
「ユリウス提督もな。あれでな」
「イタちゃん達もね」
 グレシアはイタリア達にはとりわけ親しみを見せてにこにことして言った。
「悪人じゃないのよね」
「むしろ明るくて楽しい善人だな」
「どう?イタリンとの同盟のことは」
「これからも継続したい」
 あまりメリットがないように思えてもだった。レーティアはこの選択肢しか選ぶつもりはなかった。
「ドクツとしてな」
「提督達も祖国君達も同じ考えだからね」
 ドイツもだ。何だかんだ言ってだ。
「安心していいわ。祖国君ちょっと来て」
「何だ?」
 呼ばれてすぐにだった。そのドイツが来た。国家である為自分の国の中では自由に行き来できるのだ。それ故にすぐに来たのである。
「呼んだか」
「ええ。祖国君はイタちゃん達をどう思うかしら」
「困った奴等だ」
 実際にそうした顔になり目を閉じてだ。ドイツはこうグレシアに答えた。
「弱いにも程がある。いい加減だしな」
「それでも嫌いかしら」
「いや、嫌いではない」
 ドイツも正直に答える。
「むしろ好きな方だ」
「ほらね。祖国君もこうでしょ」
「わかりやすいな、実に」
 レーティアも言う。そのドイツを見て。
「祖国君はイタリア君達と昔から親交があるからな」
「そうそう。お友達だからね」
「そのことは否定しない」
 ドイツもだった。イタリアについてはこう言うのだった。
「目を離せない奴だ」
「不思議だな、イタリンは」
 レーティアは自分の執務机で首を振りさえした。
「あれだけ弱く困るがそれでも嫌いになれない」
「愛嬌があるのよ。無邪気で」
「そうだな。ではこれからもな」
「ええ。あの総帥さんともイタちゃん達ともね」
「仲良くやっていこう。祖国君もそれでいいな」
「無論。異論はない」 
 ドイツはドクツの敬礼で応える。三人は誰もイタリアを嫌ってはいなかった。むしろ親しみを感じながらだ。彼等との同盟を大切にしていくのだった。


TURN30   完


                        2012・6・8
 
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