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ヘタリア大帝国

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TURN30 左遷その九

「貴女がわかっているのならね」
「ああ・・・・・・」
 レーティアは何とか涙を堪えながら小さく頷いた。
「そうしてもらえば嬉しい」
「御免なさい、変なこと言ったわね」
 レーティアのその心を気遣っての謝罪だった。
「もう絶対に言わないわ。二度とね」
「そうしてくれるか」
「そうするわ。じゃあ」
「じゃあ、か」
「これから苺ジュースでもどうかしら」
 レーティアを気遣ってだ。彼女の好物を勧めたのだ。
「それを飲むかしら」
「苺ジュースか」
「そうよ。今からミキサーにかけて作るけれど」
「そうだな。それよりもな」
 レーティアは幾分か気持ちを取り戻してそのうえでグレシアに答えた。
「チョコレートがいいな」
「あれね」
「食べる方だ」
 そちらのチョコレートをだというのだ。
「飲むのはココアだな」
「それでいいのね」
「一緒に食べないか?」
 レーティアはグレシアにもチョコレートとココアを誘った。
「そうしないか」
「そうね。ただね」
「ダイエットか」
「チョコレートが好きなのはわかるけれど」
 苺ジュース以上のだ。レーティアにとっては大好物なのだ。だがチョコレートは菓子である。グレシアがここで注意するのはこのことだった。
「カロリーには注意してね」
「ダイエットか」
「そう。太めのアイドルもいるけれどね」
「ムッチリーニ総帥はそうした節制はされていないそうだな」
「元々太らない体質でしかも胸にいくみたいね」
「また随分有り難い体質だな」
「まあそういう人もいるけれどね」
 だが、だ。レーティアはどうかというのだ。
「レーティアは気をつけないと駄目よ」
「チョコレートにもか」
「あと肉食も駄目よ」
 これも禁じるのだった。
「レーティアは元々お肉は好きでないけれどね」
「肉食は太るからな」
 これはレーティアもわかっていた。
「だからな。それはな」
「守ってね」
「あと魚も食べていない」 
 肉だけではないのだ。レーティアの菜食主義は徹底していた。
「料理にラードも使っていない」
「本当に徹底してるわね」
「しかしそれでいいのだな」
「ええ、そうあるべきよ」
 それで正しいとだ。グレシアもレーティアに話す。
「お酒も飲まないしね、レーティアは」
「ビールも駄目だったな」
「あれも太るのよ」
 ドクツ人の大好物のだ。それもだというのだ。
「だから厳禁よ」
「わかっている」
「とにかく。気をつけることは何でもね」
「気をつけるに越したことはないか」
「貴女はアイドルでもあるから」
 ファンシズム、まさにそれの具現者なのだ。
「頼んだわよ」
「チョコレートもか」
 大好物に制限がかけられるとなってだ。レーティアは苦い顔になっていた。
「やれやれだな」
「どうせなら砂糖を入れないチョコレートはどうかしら」
「そんなものはただ苦いだけだ」
 カカオの苦さ、それだけがあるというのだ。
「美味いのか」
「いえ、美味しくないでしょうね」
「それでは意味がない」
 難しい顔で言うレーティアだった。
 
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