ヘタリア大帝国
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TURN30 左遷その二
彼は何でもないといった顔で普通の親衛隊の同志達の前に出てだ。こんな話をした。
「君達にも名誉が与えられることになったよ」
「名誉!?それは一体」
「隊長、何でしょうか」
「うん、それはね」
ヒムラーはレーティアの忠実な信者の顔で彼等に語る。
「我々は正規軍に組み込まれることになったよ」
「何と、我々がですか」
「正規軍に組み込まれるのですか」
「ではそのうえで我々は」
「戦争に参加できるのですね」
「武勲を期待しているよ」
ヒムラーは仮面のままで語る。
「君達の活躍がドクツを勝たせるからね」
「はい、それでは」
「戦います」
こう話してだった。彼等はヒムラーに誓って右手を掲げて叫んだ。
「ジークハイル!」
「ハイルアドルフ!」
「レーティア総統万歳!」
ヒムラーも応える。ヒムラーの表の顔はレーティアの忠実な家臣だった。
だがその彼を見てだ。グレシアは己の腹心達に宣伝相の執務室でこう言っていた。
「ヒムラーのことをどう思うかしら」
「親衛隊長ですか」
「そして内相にもなられましたね」
「ええ、あの男のことよ」
やや忌々しげにだ。グレシアはこう述べた。
「どう思うかしら」
「そうですね。どうもあの方は」
「怪しいところが多いです」
「経歴を調べましたが士官学校中退以降の経歴が不明です」
腹心の一人がこのことを話す。
「親衛隊長として出て来るまでのそれがわかりません」
「それね。何をしていたのかしらね」
グレシアは眉を顰めさせていた。
「何処で何をね」
「一応養鶏場をやっていましたが」
「殆どそこにもいなかったわね」
「はい」
その通りだとだ。その腹心はグレシアに答えた。
「収入はそこからありましたが」
「具体的に何をしていたかが不明ね」
「そうです。各地を飛び回っていたようですが」
「レーティアが出て来るよりも前からね」
グレシアはこのことにも要点を見出していた。
「そうしていたわね」
「そうです。親衛隊は急に結成されています」
「そこも謎なのよ。士官学校での人脈も使わずに」
これに加えてだった。
「養鶏場の経営者だけれど畜産の人脈もね」
「それも使わずにです」
「あそこまでなるとなると」
グレシアはまた眉を顰めさせていた。そのうえでの言葉だった。
「親衛隊みたいな巨大な組織を創り上げたのよ」
「ただならぬ運営能力があるのでしょうか」
「どうかしらね」
真剣に悩む顔でだ。グレシアは述べた。
「確かに士官学校に通ってたから統率も学んでいるでしょうけれど」
「閣下、ですが」
別の腹心が言ってきた。
「内相の場合は親衛隊の面々は至って純粋に総統を崇拝されています」
「ええ、彼等に悪意はないわ」
「はい、問題は親衛隊ではないですね」
「やはり問題はあの男よ」
ヒムラー、彼に他ならないというのだ。
「その親衛隊の面々を手足の様に動かしているけれどそれが」
「まさにですね」
「何か得体の知れない、女王蟻と言うべきかしら」
「女王蟻?」
「といいますと」
「あの男が女王蟻でね。親衛隊の面々はその彼に盲目的に従っているっていうか」
ヒムラーと親衛隊の関係をグレシアはこう例えた。
「そんな感じよね」
「言われてみれば確かに」
「親衛隊はそうなっていますね」
「女王蟻と兵隊蟻」
「それに近いですね」
「ソビエトもそんな感じだけれど」
グレシアはカテーリンとソビエト人民のこともこう評した。
「親衛隊もね」
「それにです。親衛隊の地位はあがってきています」
「それが問題です」
「やがて宣伝相の地位を脅かすのでは」
「そうなりませんか」
「私のことはどうでもいいわ」
そんなことはだとだ。グレシアは自分のことはこれで終わらせた。
だが自分のことはいいとしてだ。こういうのだった。
「問題はレーティアにね。取り入ろうとしているわね」
「はい、確かに」
「そしてご自身の地位を上げようとされていますね」
「少しでも総統に近付こうとしています」
「どうやら」
「怪しい男よ。あの男は」
グレシアはヒムラーをまたこう評した。
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