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ドリトル先生の林檎園

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第十幕その八

「ですから」
「僕達もなんだ」
「召し上がって下さい」
 その林檎のお茶やお菓子をというのです。
「そうして下さい」
「いいのかな」
「遠慮は無用ですよ」
 これが優花里さんの返事でした。
「先生には色々とアドバイス貰いましたし」
「だからなんだ」
「お礼も兼ねて。お客さんへのおもてなしでもありますから」
 だからだというのです。
「召し上がって下さい」
「そこまで言ってくれるなら」
 先生もでした、遠慮することも悪いと思って。
 それでご馳走になることにしました、暫くして一台の軽四が林檎園に来て中から活発な感じの中年の女の人と黒髪をロングヘアにした小柄な優花里さんと同じ位の年齢の女の人が来ました。少し垂れ目で微笑んだ口元に楚々とした外見が印象的です。
 その娘を先生の前に連れてきてです、優花里さんは言いました。
「この娘があたしのこの前退院した友達です」
「はじめまして、鈴木由佳といいます」
 その人が自分から頭を下げてから名乗りました。
「パン工場で働いています」
「あたしの中学からの同級生で」
「高校も同じだったんです」
「今はお互い就職しまして」
「楽しく働いています、ですが私は」
 由佳さんは笑って言いました。
「盲腸になりまして」
「入院していたんだね」
「いや、参っちゃいました」
 由佳さんは先生に笑ったままこうも言いました。
「暫くお仕事も休んで」
「それは仕方ないよ」
「職場に穴を空けたなって」
「この娘仕事出来まして」
 優花里さんは由佳さんのこのこともお話します。
「職場じゃ頼りにされてるんですよ」
「いや、全然よ」
「いやいや、評判は聞いてるよ」
 優花里さんは由佳さんに明るい笑顔で言うのでした。
「あんた随分とね」
「お仕事出来るっていうの」
「それで評判になってるよ」
 実際にというのです。
「本当にね」
「そうなのね」
「だから実際にね」
「私が休んでて」
「結構工場も困ってたらしいわ」
「それは悪いことしたわね」
「悪いことって言っても仕方ないだろ」
 入院したそのことはというのです。
「盲腸なんだからさ」
「そうなのね」
「それにもう退院して工場にも復帰してるだろ」
「無事にね」
「だったらいいだろ、また頑張りな」
「それじゃあね」
 由佳さんは優花里さんのその言葉に頷きました。
「そうさせてもらうわね」
「ああ、それで今日はな」
「優花里ちゃんが造ったお菓子ご馳走してくれるのよね」
「アップルティーにアップルパイにな」
 それにというのです。
「あと干し林檎も出すからな」
「それは楽しみね」
「あとうちにある林檎のお菓子はな」 
 製造しているそれはというのです。
「何でもな」
「食べていいのね」
「好きなだけな、退院祝いだからな」
 それだけにというのです。
「楽しんでくれよ」
「じゃあお言葉に甘えてね」
「おばさんもですよ」
 優花里さんは由佳さんと一緒に来た女の人にも声をかけました。 
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