ヘタリア大帝国
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TURN29 開戦前夜その六
「シャルロット=バルトネーさんだよ」
「そうかい。シャルロットさんだね」
「たまたまセーシェルのところにバカンスに来ててな」
それでドクツに捕まらずに済んだのだ。
「まあ俺達がここまで逃げた時にな」
「上司になってもらったんだね」
「そういうことだよ。悪い人じゃないからな」
「確かにね」
パルコ族の女、ビルメから見てもだった。
シャルロットは悪人には見えなかった。だがそれと共にだ。
彼女の世間知らずなところも見抜いた。それでそっと同胞達に囁くのだった。
「前の王様よりずっとましだけれどね」
「ええ、そうですね」
「頼りないですね」
「筋はいいみたいですけれどね」
「世間知らずですよね」
パルコ族の面々もこう言うのだった。そのシャルロットを見て。
「大丈夫ですかね」
「結構やばいんじゃ」
「美人だけじゃ今は戦えませんから」
「まあ祖国さんはちゃんと家庭教師をしてるみたいですから」
「さまにはなりますかね」
「ああ、そこひそひそ話はなしでな」
フランスが彼等に注意した。
「とりあえずこの戦争が終わったらあんた達も独立だよ」
「セーシェルさんもですよね」
「あの人も」
「ああ。仲良くやってくれよ」
フランスはこう彼等に話す。その横でだった。
シャルロットはビルメの前に来てだ。こう笑顔で言うのだった。
「ふかふかですね」
「ふかふか?」
「はい、毛が」
ビルメの見事な毛並みを見ての言葉だ。
「それに手も。お言葉ですが可愛いですね」
「あたしはもう可愛いって言われる歳じゃないよ」
「あっ、すいません」
ビルメに言われてだ。シャルロットは恐縮で応えた。
「私ったらつい」
「いいけれどね。とにかくあんたがだね」
「はい、今現在のオフランス王国の国家元首を務めさせて頂いています」
言いながらだ。シャルロットはスカートの両端を摘まみあげた。
そのうえで貴族の淑女の一礼をした。そしてこう言うのだった。
「シャルロット=バルトネーです。宜しくお願いします」
「こちらこそね。ビルメだよ」
「ビルメさんですか」
「一応フランスさんのところの国民になるよ」
「セーシェルさんのところから来られたのですね」
「まあね。あたし達の種族のルーツはそこにあるよ」
ビルメからもこのことを話す。
「まあそういうことでね」
「はい、こちらこそ」
「しかし。この祖国さんからねえ」
ビルメはフランスを横目で見てこんなことを言った。
「こんな娘が上司として出て来るとはね」
「そうですよね。凄い違和感ですよね」
「俺達の祖国さんって変態だから」
「この島でもしょっちゅう裸になるし」
「男の裸なんて見たくもないのに」
「迷惑なんだよね」
「だから俺はこの戦争では言われる役かよ」
フランスはうんざりとした顔になりパルコ族の面々に言い返した。
「ったくよ。損な役回りだよな」
「そうならない為には勝つことだね」
ビルメは今の自分の祖国にも何の容赦もなかった。
「いいね。勝つんだよ」
「ああ。じゃあ協力してくれな」
「できるだけのことはするよ。それじゃあね」
こうした話をする一行だった。そして。
話が一段落したところでだ。シャルロットがまた言ってきたのだった。
「ところで今夜ですけれど」
「今夜?」
「今夜っていうと?」
「はい。皆さんで舞踏会なぞはどうでしょうか」
無邪気な感じでだ。フランスとパルコ族の面々にこう提案したのである。
「お互いの親睦を深める為にも」
「舞踏会だって?」
シャルロットの今の言葉にはだった。ビルメも少しきょとんとなった。
それでいささか戸惑いながらだ。こう彼女に問うたのだった。
「あんた。あたし達と舞踏会かい?」
「オフランスの文化もここで根付くと思いますし」
「オフランスねえ」
「はい。どうでしょうか、悪い提案ではないと思いますが」
「そうだね」
ビルメは即答を避けた。その代わりにだった。
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