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ヘタリア大帝国

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TURN27 人類統合組織ソビエトその八

「では明日の主席の発表で言いましょう」
「そうするわ。何で皆決まり守らないのよ」
「誰もが決まりを守るとですね」
「いい国になるの。共有主義は素晴しいんだから」
 カテーリンはここでふとだ。自分の右手の甲を左手で擦った。その甲には赤い石がある。そして言う言葉は。
「皆が幸せになる考えなんだから」
「だからカテーリンちゃんは皆の前に出たんだよね」
「そうよ。皇帝なんかいなくて皆平等な国がいいからよ」 
 三年前だ。カテーリンはただミーシャとゲーペを連れて皆の前に立ち訴えたのだ。するとだ。
 誰もが彼女の言葉に賛同し忽ちのうちに立ち上がり。一年で全ロシアを自分の考えで統一して皇帝を追い出したのだ。こうしてソビエトを築いたのだ。
 そうして今ソビエトの国家主席兼共有党書記長になっている。その彼女が言うのだった。
「だから私皆に言ったの」
「で、今よね」
「皆まだ何もわかってないから」
 腕を組み頬を膨らまさせてだ。カテーリンはまた言った。
「皆決まりを守ってちゃんとしないと駄目なの」
「その通りだよね」
 ロシアも紅茶を飲みながらカテーリンの言葉に頷く。
「そうしたら皆幸せになれるよ」
「私の言葉に最初に頷いてくれたの祖国さんだったね」
「そうだったかな。あの時カテーリンさん僕達の前に三人だけで出て来たじゃない」
 ミーシャとゲーペ、二人を連れてだ。
「その時は何かなって思ったけれどね」
「共有主義聞いてくれて有り難うね、最初に」
「いい考えだと思うよ。けれど」
 ここでだ。ロシアはそのカテーリンを見てこんなことを言ったのだった。
「カテーリンさんのご両親は」
「死んだこと?」
「残念だったね」
「悲しいけれどいいの。もう」
 何とか強がってだ。カテーリンはロシアに答えた。
「病気だから仕方ないから」
「そうよね。私もね」
 ミーシャもだ。暗い顔になって述べた。
「あの時の病で」
「酷い伝染病だった」
 ゲーペもだ。苦々しい顔になっていた。冷徹なその顔にそうしたものが出ていた。
「今の医学でもどうにもならなかった」
「あれ、うぽぽ菌じゃなかったね」
 ロシアはこの災害のことも言った。
「あれも酷いけれどね」
「あれはうぽぽ菌ではない」
 また別のものだとだ。ゲーペはロシアに述べた。
「より悪質な伝染病だった」
「本当に酷い病気でした」
 ロシア妹も言う。
「あれは何だったのでしょうか」
「今も真相を究明中だ」
 調べているとだ。ゲーペはロシア兄妹に話した。
「あれは何だったのかな」
「チェリノブイリから来たね」
 ロシアはまた言った。
「それで僕の国全土に広まったんだったね」
「チェリノブイリにはブラックホールがありますけれど」
 リトアニアも首を捻っていた。彼のところにも被害が及んだのだ。
「あれとどう関係が」
「全ては調査中だ。だが」
 それでもだと。ゲーペはまた彼女らしくないことを言った。
「真相がわかるかどうかというと」
「無理かな」
「難しいだろう」
 ゲーペはその顔でロシアに述べた。
「残念だがな」
「そうなんだ」
「それでだが」
 ゲーペは話題を変えてきた。安い大量生産用のカップの中にある紅茶を飲みながら。
「日本についてだが」
「うん、日本君との条約はやっぱり」
「そのうち破棄するべきだと思う」
「そうだよ。そのつもりなんだから」
 カテーリンも言ってきた。その幼い顔を顰めさせて。
「日本は資産主義で皇室なんてあるのよ。おまけに幼女好きの人が一杯いるじゃない」
「幼女好きっていうと」
 ラトビアがまた言う。
「ロリコフさんですよね」
「ラトビア君今日一日御飯抜き」
「えっ、何でですか!?」
 まだ立たされているがそこに加えてそれだった。
「何で僕御飯まで抜きなんですか!?」
「あいつの名前は出さないでって言ってるでしょ」
 だからだとだ。カテーリンは顔を顰めさせて言うのだった。
「だからよ。君御飯抜きよ」
「うう、僕何か不幸ばかり続くんだけれど」
「そんなこと言うからよ」
 カテーリンはむっとした顔でそのラトビアに言い返す。
「全く。何であんな変態が天才科学者なのよ」
「けれど凄い人だよ」
 ミーシャはそのロリコフをフォローした。
「ソビエトの為っていうかカテーリンちゃんの為に働いてくれてるじゃない」
「それでもよ。私変態嫌いなの」
 自分がどう見られているかわかっているからこその言葉だった。
「というか不潔な男女交際も駄目よ」
「不純な?」
「男女交際も清潔によ。ソビエトは皆が家族なのよ」
 だから家族制度を廃止したのだ。カテーリンは人民全員を家族としているのだ。
「そんなことも絶対に許さないんだから」
「そうです。そうあるべきです」
 ゲーペはカテーリンのその主張に全面的に賛成の意思を見せた。
「全ては共有主義の下に」
「世界は幸せになるんだから」
 カテーリンはあくまで純粋に考えていた。そしてその純粋なままでだ。
 紅茶を飲みながらまたロシアに言ったのである。
「祖国君、そろそろ時間だから」
「うん、赤本の朗読だね」
「皆で読もう。共有主義の素晴しさを勉強しよう」 
 こう言ってだ。ソビエトの中の国家達と共に赤本を出してそれを読むのだった。ソビエトはまさに共有主義とカテーリンが全てを動かしていた。そうした国だった。


TURN27   完


                        2012・5・19
 
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