仮面ライダーディロード~MASKED RIDER DELOAD~
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第二部~雅、結婚騒動~
EPISODE22『防人の歌』
「偽善者…デスか?」
「うん。本当は、間違っていたんじゃないかなって。だけど、まだどこかで自分のやり方は間違っていなかった。響のやり方は間違っている。そう思う自分もいる。」
「本当は分かっているのだろう?二人で歌った、忘れられないメロディが、この先の未来に響く可能性があることを!」
「まだだゾ!せめて、お前達だけでも、巻き込むゾ!」
「オートスコアラー、ミカの撃破に成功したデスよ…」
チフォージュ・シャトーに戻った雅はファラとレイアに最後の作戦を伝える。すると、広間から蒸気が発生し、キャロルが現れる。
「キャロル、大丈夫か?」
「…ん?お前は…っ!」
キャロルは雅を見て不思議そうに首を傾げるが、次の瞬間には頭を抱える。
「大丈夫か!」
雅は近づく。
「雅か。オレは平気だ。思い出のバックアップをインストールした負荷が来ただけだ。」
キャロルは言う。
「そうか。こちらもガリィとミカが順調に、というのは少々辛いが、ダインスレイフの呪われた旋律の回収に成功して敗れた。後は、天羽々斬とイチイバルだけだ。」
「そうか。雅、ファラと動向してレイポイントの要石の破壊を頼む。オレはレイアと共にヤントラ・サルヴァスパを狙う。」
ヤントラ・サルヴァスパとは、S.O.N.G.が管理する書物型の聖遺物で、シャトーが万象黙示録を完遂する際に解析機器として利用することが、キャロルの狙いである。
「解りました。向こうが動いたら教えてほしい。僕とファラはすぐに動く。」
「ああ。」
キャロルは、不敵な笑みを浮かべた。
その頃、S.O.N.G.の司令室では、
「キャロルはきっと、世界の解剖の妨げになるレイラインの要、風鳴邸の要石を破壊しにくるはずです。」
エルフナインは話す。
「風鳴邸か…」
弦十郎は呟く。
「その使命、私が引き受けます!」
翼は力強く言う。
「大丈夫か、翼?」
「この身は剣、剣に守れないものはありません。」
翼は立ち上がる。
「なんだか不安ね。司令、私も動向していいかしら?剣のことも知りたいしね。」
それを見てマリアが手を挙げる。
「いいだろう。要石は翼とマリアに任せよう。」
「翼、行きましょう?」
マリアは翼と、そのお付きである忍者、緒川に合図を出して移動する。
「それから、一つ気になることがあります…」
「気になること?」
「はい。おそらくファラ達は、万象黙示録の完遂の為に、ヤントラ・サルヴァスパという聖遺物を狙うはずです。」
エルフナインは弦十郎に話す。
「何だ?そのなんちゃらサラダスパって?」
クリスは言う。
「ヤントラ・サルヴァスパ。書物型の聖遺物で、事柄の記載も、言語の解読も可能な物体。奇跡の否定を書き記すキャロルの目的に、一番最適なもので、キャロルはこの本をずっと調べていました。」
エルフナインはクリス達に詳しく説明する。
「なるほど。ヤントラ・サルヴァスパは、確かに我々の施設、深淵の竜宮に保管してある。そちらは俺とクリス君で対応しよう。」
「私達も行くデス!」
「うん。」
弦十郎の言葉を聞き、切歌と調も同行の意思をみせる。
「済みません。私…」
響が悩むように言うと、
「未来君から話は聞いている。お父さんとの話、上手く行くといいな。」
弦十郎はサポートするように言う。
「ありがとうございます。」
「そうと決まれば、すぐに行くぞ!」
弦十郎の指示によって、クリス達は移動を開始する。
「ここが翼の家ね。」
マリアは言う。
「私にとっては、あまり良い所ではないがな。」
翼は俯くように言う。
「何があったのか分からないけれど、行くわよ。」
マリアの発言もあり、翼は門をくぐり風鳴邸に入る。
「風鳴翼、只今到着いたしました。」
翼は父親である八紘に余所余所しい態度をみせる。
「ふん、随分と早く到着だな。部屋はそのままにしてある。好きにしろ。」
八紘は冷たく言うと、そのまま去ってしまう。
「何なの!?あれが父親の態度!?」
マリアは怒る。しかし、
「マリア、その話は私の部屋でしよう。」
翼はマリアを宥めて部屋に案内する。
「ここだ。」
翼は扉を開ける。すると、そこは家探しされた跡のようになっていた。
「翼、何か盗まれたものはない!?」
マリアは慌てる。すると、
「あの男、本当に私が出て行った時のままにしていたのか。」
翼は私物の埃を払いながら言う。
「じゃあ…」
「ああ。私が片付けていないだけだ。」
翼はアルバムを片付けながら言う。
「それより、さっき翼は父親のことをあの男って言っていたけど、どういうこと?」
マリアは率直な疑問をぶつける。
「その事は、いずれ話そうと思っていた。私とあの男は、直接的な親子関係は無い。私の本当の父親は、あの男の父親だ。血縁上は、あの男は私の父では無く、私の兄に当たる。」
「えっ…」
翼から話される真実にマリアは唖然とする。
「私の血縁上の父、風鳴訃堂は護国を考え、自身の血を濃く遺すことを考え、あの男の妻に自分の種を仕込み、そうして生まれたのが私だ。」
「なんて外道だ!」
マリアは怒る。しかし、そんなマリアの怒りも突如として起きた轟音で冷める。
「行くぞ、マリア。」
「…ええ。」
マリアは、平然としている翼に驚きつつも二人で外へ出る。
「あら?あの時以来ね?」
「違う所は、僕が同伴していることか。」
外にはファラと、雅の変身したアナザーアギトがいた。
「行くぞ、マリア!」
翼とマリアはギアを纏う。
「ファラ、マリアはこちらで引き受ける。ファラは翼を頼む。」
「ええ。任せてちょうだい?」
アナザーアギトはマリアと翼を引き剥がす。
「くっ、見事に分断されたか!」
翼は天羽々斬を構える。
「あなたの歌、しっかり聴かせてね?」
ファラは刃を振るう。
「イグナイトモジュールは、使いこなせるようになったか?」
アナザーアギトは挑発する。
「いいだろう。イグナイトモジュール、抜剣!」
マリアはダインスレイフの力を纏う。
「こちらも、本気で行こう。」
アナザーアギトは拳を放つが、マリアは左腕の篭手で防ぐ。しかし、
「右ががら空きだ!」
アナザーアギトは回し蹴りを放ち、マリアは怯む。
「ふふっ、そんな細い剣で私が斬れるのかしら?」
ファラはフラメンコの要領で翼の攻撃を躱す。そして、
「これでどうかしら!?」
ファラが翼の刃を剣で防ぐ。すると、翼の刃は一方的に砕けちる。
「何っ!?」
「あら、案外しょぼい歌なのね。」
ファラは笑う。
「貴様、何をした!?」
「私の哲学兵装、剣殺しは、原理を無視して相手の剣を壊す能力があるの。」
ファラは高らかに説明する。
「翼!?」
マリアは、アナザーアギトの猛攻を躱して翼の所に向かい、アガートラームでファラを斬り付けようとするが、ファラはそれを剣殺しで防ぐ。すると、本来は義手型の聖遺物であるアガートラームは破壊される。
「あら?アガートラームって剣だったかしら?」
ファラは砕けたアガートラームを見て不思議そうに言う。
「くっ、翼を守る刃が!?」
マリアは驚く。剣殺しは、その物体の形状では無く、その物体の在り方を参照する武装。マリアは、翼を守る剣としてアガートラームを使ったことで、剣殺しの力が発揮したのだった。
「ファラ、今の歌で踊れるか?」
「いいえ、こんな安っぽい歌では満足出来ないわ。だから、今は退きましょう?」
ファラは移動手段の風を展開して雅と共に去る。
「ふん、せっかく風鳴から離れたくせにその体たらくか。」
その様子を見ていた八紘は言う。
「あんた、それが父親として娘に言う態度!?」
マリアは言う。
「そいつは醜く穢れた風鳴の血。歌で世界を救いたいから、そんな戯れ言を言うから家から追い出したというのに、その程度とは…」
八紘は呆れるように言う。
「いくら何でも言い過ぎよ!」
マリアは言う。
「やめてくれ、マリア。私が、腑甲斐ないのがいけないんだ…」
翼は泣きながら言い、マリアはその場を去る。
夜になり、突風が巻き起こる。
「はぁい、また来たわよ?」
「要石、今度こそ砕く。」
[hijack form]
ファラと、幽汽に変身した雅が再び襲撃する。
「マリアがいない。だが、私一人でも、守ってみせる!♪Imyuteus amenohabakiri tron」
翼はギアを纏う。
「ファラ、ここは見物していてほしい。少々、面白い演劇を思いついた。」
【ATTACK RIDE-BEAT GAME-】
幽汽は、ロードスラスターからビートゲーマを召喚する。
「さあ、奏でろ!」
幽汽はビートゲーマのディスクをこすり、音楽を再生する。
「意趣返しってやつね。楽しみだわ。」
ファラは遠くから高みの見物を始める。
「♪静かに 耳を澄ませば 聞こえる 流星の残響!届け!カンパネラ 生命のRond」
幽汽は刃を放ち、翼は防戦一方になる。
「♪決意に 追いかけたHeart tail 禁じた 剣を掴んで!弱くていい 君の定義!想い込めて往こう…」
幽汽の攻撃によって、翼は剣を落としてしまう。
「♪感じてぇ 僕の声を!聖なる インフィニティ 誓えるぅ 愛の為に 今は 小さな 火花でいい!いつか!大きな!炎へと変われぇぇぇ!」
幽汽は大量の独楽を上空に放ち、それらが爆発して翼は吹き飛ぶ。
「♪イカズチでも 壊せない その絆の限りRise!新時代の 福音よ 夢追い人を照らせ!」
[full change]
幽汽は必殺技を発動する。
「♪もう 迷わないさ!風のままにぃ!未来はまばゆく輝いて君~を待~つよ~!」
幽汽のターミネートフラッシュが翼に直撃し、翼は地面に転がる。そこに八紘が現れる。
「翼、立ち上がりなさい!そして、夢に向かって羽ばたきなさい!」
八紘は翼を叱咤する。
「えっ…」
翼は困惑する。しかし、
「今さら、父親面するつもりですか!何故もっと早くしなかった!?折れる剣は、そんなに不要ですか!」
翼はすぐにそう返す。すると、
「何時までそんなことを言っているつもりなの!いい加減目を覚ましなさい!このわがままっ子!」
そこにマリアが現れる。
「娘の心配をしない父親が、この世のどこにいるの!いるわけないでしょう!」
マリアは翼を叱る。
「翼、お前が私をどう思っているかは分からない。だが、これだけは聞いてほしい。翼という名前は、私とお前の母さんの二人で、考えた名前だ。風鳴の血に囚われないように、風鳴の家から旅立ち、夢へ向かって羽ばたけるように、その名前をつけた。」
八紘は深々と言う。
「父さん…ありがとうございます。イグナイトモジュール、抜剣…」
翼はダインスレイフの力を纏う。
「遂に来たか。ファラ、僕はキャロルと合流する。ここは任せた。」
【ATTACK RIDE-WARP-】
雅は変身を解除し、ワープで移動する。
「♪邪鬼の 遠吠えの 残音が 月下に呻き狂う 今宵 の我が牙の 切れ味に同情する」
「これは楽しめそうね!」
ファラは剣殺しを振るう。しかし、それでは翼の刃は砕けなかった。
「何っ!?」
「♪其方 の戒名に 記す字を どう彫るか明示せよ 断末魔の 辞世の句は 嗚呼、是非も無し 所詮はケモノと 変わらぬのか?錆に折れゆくのか?迷い惑い尽きぬ日々よ されど!今は!外道に哀の一閃をぉぉ!悪行即瞬殺…」
翼の猛攻に、剣殺しは遂に砕ける。
「どういうこと!?あなたの武器はこの剣殺しで確実に封じることが出来るはず!?」
「この身が剣?違う。この身は未来へ向かって羽ばたくもの。翼だ!剣殺しでは、この翼を折ることは出来ない!」
剣殺しはありとあらゆる剣を破壊出来る。しかし、それは剣の持ち手が剣と認識したものだけである。剣では無く、翼と例えることで、剣殺しは機能しなくなる。
「♪今の 我に 何も斬れぬものは無いぃ!悪行即瞬殺…餓狼の光る牙は自らをも 壊し 滅す 諸刃のよう ただ生きとし生けるものならば 過去だって 飛び立てる!」
翼はファラを上空に打ち上げる。
「♪剣は剣としか呼べぬのか?違う!友は 翼と呼ぶ!我~が~ 名~は~ 夢を羽撃く者也!」
翼は炎を纏いながら回転し、上昇。そのエネルギーで切り裂く必殺技、羅刹・零ノ型を放ち、ファラの躯体に大きな損傷を与える。
「ふふふ、しっかり聴かせてもらったわ。ダインスレイフの呪われた旋律。これであと一つね。」
ファラは笑う。そして、剣殺しを掴んで、それを要石に投げて要石は砕けちる。
「しまった!?」
ファラは全ての目的を達成し、笑顔を見せていた。
防人の歌
次回予告
呪われた旋律の意味。最後の一つが遂に整う。そして、禁断が解放される。次回『英雄の凱旋』
後書き
新カード紹介
ビートゲーマ:ビートゲーマを召喚するカード。
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