戦国異伝供書
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第七十話 独立その十一
「今は大名の雰囲気で」
「そこに風格もですか」
「出て。五十万石の大名に相応しい」
「そうなっていますか」
「そしてさらに」
「さらにといいますと」
「大きくなられますな」
家康にこうも言うのだった、
「やがては」
「五十万石以上に」
「百万石にも」
「まさか」
「いえ、徳川殿はさらに」
五十万石で止まらずというのだ。
「大きくなられ」
「そしてですか」
「やがては百万石にまで」
「そこまでの者にですか」
「なられます」
「百万石、それは」
家康はそこまでの石高を聞いて思わずこんなことを言った。
「五十万石の今もまだ信じられぬというのに」
「ははは、もうそれこそですか」
「途方もないまでで」
「考えも及びませんか」
「はい、それがしの様な者が百万石ですか」
「そうなるなぞ」
到底というのだ。
「有り得ないまでにです」
「思えますか」
「はい」
「ですがそれがです」
雪斎は信じられぬという顔である家康にさらに話した、ここで彼に茶を出して自分も飲みつつ話を続けた。
「徳川殿なら」
「百万石の器にですか」
「なられるかと。そして成り行きでは」
「成り行きといいますと」
「それ次第で天下人も」
「いや、それは何でも」
天下と聞いてだ、家康は笑って返した。
「有り得ませぬ」
「ですから成り行きで」
「それがしが天下人に」
「そして天下人にもです」
「なれる器ですか」
「まさに」
こう言うのだった。
「拙僧が見るに」
「そうは思えませぬが」
「まあ徳川殿は大器であられる」
「そのことはですか」
「覚えておいて下され、とかくです」
「それがしは五十万石の器ですか」
「そうです」
まさにというのだ。
「充分に、ですから今は」
「三河と遠江の西を」
「治められるべきです、そして織田殿を」
「お助けする」
「そうされるといいかと、徳川殿は織田殿の一方の翼になられて」
「もう一方は浅井殿ですな」
「お二方で。そうされると織田家も安泰で」
そうしてというのだ。
「さらにです」
「徳川家もですな」
「そうなります、浅井殿もよき方です」
長政、彼もというのだ。
「信義に篤く人を裏切るなぞ」
「間違っても有り得ませぬな」
「いえ、孝行が過ぎますと」
「孝行ですか」
「浅井殿は親孝行な方でもあられるので」
父である久政を大事にしているというのだ。
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