戦国異伝供書
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第七十話 独立その五
「そのことは」
「うむ、とかくな」
「これからのことは」
「お主が最もよいという風にせよ」
「どうしても」
「そうせよ、お主が決めたことなら間違いはないしのう」
雪斎は元康に笑って話した、そしてだった。
雪斎は朝比奈そして今川家の中で織田家に降りそのうえで義元をはじめとした今川家の者達を護る為にも義元の生母寿桂尼と今川家の幼い子女達を連れて尾張に向かい信長に降った、この際信長は氏真をやがて赦し万石取りにすることも約束した。今川家の残った者達は武田家や北条家の家臣となっていき今川家は正式に駿河そして遠江の守護から降りた。
それまで元康は家臣達と今後のことを話していたが今川家が駿河と遠江の守護でなくなった時に家臣達に話した。
「独立する」
「そうされますか」
「その様に」
「うむ、駿河と遠江はな」
まずはこの二国から話した。
「今川様が守護でなくなり」
「この三河もですな」
「吉良家が守護から降りました」
「この三国は空き地となりました」
「完全に」
「そうなったからな」
だからだというのだ。
「もうすぐにじゃ」
「武田家が動きますな」
「駿河を手に入れに」
「そして遠江も」
「この三河まではわからぬが」
それでもというのだ。
「遠江まで完全に手に入れられるとな」
「我等は三河だけとなり」
「かなり追い詰められますな」
「そうなってしまっては」
「どうにもならなくなりますな」
「そして吉法師殿じゃが」
信長はというと。
「伊勢や美濃を見られておる」
「だからですか」
「この三河には来られない」
「だからですか」
「我等としては」
「織田家と手を結び」
そしてというのだ。
「独り立ちしてな」
「大名となり」
「この三河の主となる」
「そうなりますか」
「わしはそれが一番よいとな」
その様にというのだ。
「お主達とこれまで話して決めた」
「織田家に入るか武田家に入るか」
「それとも独り立ちか」
「これまであれこれお話しましたが」
「殿はそう決断されましたか」
「独り立ちし三河一国の主となり」
そのうえでというのだ。
「織田家の盟友となりだ」
「生きておく」
「そうしていきますか」
「当家は」
「うむ、そしてじゃ」
元康はさらに話した。
「わしは今川家から離れることになる」
「独り立ちしては」
「それではですな」
「うむ、だからな」
それでというのだ。
「名も変えようと思うが」
「そしてですか」
「あらためてですか」
「ことを進めていきますか」
「そう考えておる、しかし」
元康は難しい顔でこうも言った。
「松平の姓は代々のもの、それでな」
「姓も変えられても」
「それでもですか」
「大事にしていきたい」
これはというのだ。
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