ドリトル先生の林檎園
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第八幕その八
「ですから」
「高校は農業科で」
「それで卒業してすぐに」
「ここに就職したんだね」
「家族全員働いてます」
「家族経営だね」
「はい、ただ家族だけじゃ人手が足りなくて」
「そうだね、広くて規模も大きいからね」
先生は特にシードル工場を見ています、そこは結構な大きさです。
「だからだね」
「そうなんです、ですから」
「沢山の人も雇ってるね」
「そうしています、忙しいですが」
それだけにというのです。
「収益は結構あって」
「生活には困ってないかな」
「お陰様で、まあそっちは困ってないですが」
それでもとです、優花里さんはここで難しいお顔になりました。
そしてです、先生にこんなことを言いました。
「悩みはない訳じゃないですね」
「そういえばお祖父さんが言ってたけれど」
「アップルパイやアップルティーのことですね」
「貴女は色々な種類の林檎を使って造ってるんだね」
「時間のある時はそうして造って」
そしてというのです。
「食べています、試しに」
「紅玉以外の種類の林檎でもだね」
「そうしています」
「それはどうしてかな」
「今友達が入院してまして」
優花里さんは少し暗いお顔になって先生にお話しました。
「ちょっとしたことで」
「それでなんだ」
「盲腸の手術で」
お友達が入院している理由も言うのでした。
「退院した時にお祝いで」
「食べてもらおうとだね」
「それで飲んでもらおうと」
考えてというのです。
「一番美味しい林檎を使ったものをと考えて」
「造ってるんだ」
「紅玉を使うことは確かにオーソドックスですが」
それでもというのです。
「何かですね」
「オーソドックスだとだね」
「どうもってなりまして」
「それでだね」
「はい、色々やってみています」
「そういうことだね」
「はい、ただ」
どうしてもというのでした。
「何かこう」
「これはっていうアップルパイやアップルティーがだね」
「出来ないですね、紅玉以外ですと」
「日本の林檎は多くの種類がそのまま食べる為のものでね」
「調理して食べるとなると」
「少し違うからね」
「そちらは紅玉なんですよね」
このことは優花里さんもわかっているのでした。
「けれどそれが」
「どうかとだね」
「あたし思いまして」
「今色々とやってるんだ」
「はい、うちは幸い結構な種類の林檎を作ってますから」
勿論売る為です。
「それならってなって」
「その色々な種類の林檎達を使って」
「造ってます」
「そうした事情があったんだね」
「いや、けれどまだ」
「これはっていうものがだね」
「造れてないです、難しいですね」
こう言うのでした。
「アップルパイやアップルティーも」
「美味しいものを造ろうと思えば」
「本当に」
こうしたお話をしてでした、先生は再び農園の中を案内してもらいました。その後でお昼となりましたが。
お昼のメニューも農園で食べさせてもらいました、この農園の鶏を使ったお料理に畑のお野菜を使った炒めものにです。
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